拠点暮らし34
「最初の実験は失敗だったな、先生!凄い魔法だったぞ!コレが世紀の発明か?」
爆笑していた店主の笑いが収まり、ようやく話せるようになって言った一言だ。
「さすがの俺でも麦を猫に変えるまではまだ使えないわ。全く…ポコちゃんは好奇心旺盛で、直ぐ探検に出掛けるけど、何も今日ここじゃなくても良かったのに。お昼寝してたのかな?」
麦藁まみれになって、慌てて俺に駆け上ってきたポコちゃんの毛繕いを手伝ってやる。あーあー、ゴミがそこらじゅうに…後で取ってやるからな。
「それじゃ、気を取り直してもう一度、始めてください!」
なんとも締まらない発表になってしまったな。
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2人の表情がクッキリと別れてる。コレはアレかな、ダメか?最悪はホセ伯父さんの所に持ち込めば、破格の値段を付けてくれるだろうからまぁええか。
「店主はその顔、全然分かってなさそうだな。残念だなぁ」
「あぁ、凄いのは凄いんだろうな。でもその凄さが…」
「ウェイン様、天才です!コレを考えた人は本当に天才です‼︎絶対に逃したらいけません‼︎言い値で買ってもお釣りがきます!」
店主と丁稚の温度差は育った環境だろうな…農村出身なら、この作業性の高さに白目剥くわな。俺が箕で作業してて白目剥いたみたいに。
商家一筋で育ったなら、この凄さは実感出来ないか。
「俺たちがニヤニヤしてた理由が分かる奴がいて良かったな、ウェインの旦那」
「そうだね。ただ肝心の店主がコレじゃなぁ…ここよりちょっと遠方になるけど、俺の伯父さんも一応それなりの商会の会頭やってるから、別にここで売れなくても全く問題無いっちゃ無いんだ。ただ、距離があるから面倒なんで、ここで済ませられるならってだけなんだ。店主が決めれないなら、そっちに流すか」
「先生、それは初耳ですね。ちなみにどちらの街で?」
「トゥールって河下の迷宮城塞都市だね。船で下ればそこまで苦じゃ無いと思ってるから、問題無いよ。伯父さんは俺と同じ農家の倅だからこれの価値が正確に分かるさ。店主、悪かっ」
「私が買います‼︎お願いします!買わせてください‼︎」
浅い河でも載せて運べる?つまり小型?ってブツブツ呟いていた丁稚が、俺が話を切り上げようとした瞬間、噛み付く様な勢いで食い付いてきた。
「あー、気持ちは分かるんだけど、丁稚の君じゃねぇ…一応、船だったら10日も下れば着くだろうし、伯父さんや従姉妹に顔見せしたり、途中で里帰りしても良いしで、こっちは困ってないんだ、悪いね。ま、コレがこっちの強気な理由なんだわ」
ウェイン様お願いしますと丁稚がマジな必死顔で頼み込んでる。俺らは皆してニヤケ顔。俺ら別にどっちでもええねん。分からんならそれまでや。
「あー、店主、ごめんな?無駄な時間取らせて、猫が麦まみれになる様な所だけしか面白い物見せられなくて。それじゃ、この話は無かったって事で。ただ、恨みっこ無しでな?」
丁稚君が泣き崩れて絶望顔してる!ウケる‼︎
「まぁ待て、先生、そんな急ぐな。ネス!お前以外でコレの価値が分かる奴を今直ぐ連れこい!走れ!ところで先生、アンタはコレの価値をどれ位だと踏んでるんだ?浅学な俺に一つ教えてくれよ」
ネスと呼ばれた丁稚が駆け出す後ろ姿を見やりながら、店主が尋ねてくる。
うむ、では教えて進ぜよう!
「そうだね、語弊を恐れずに言うなら、この機械以前と以後で農村が別れるかなって思ってるよ?」
人は回転に触れたら、離れられないんだよ?




