拠点暮らし28
「おいふざけるな!お前らのテリトリーは向こうだ!俺の研究室の側にその呪物を置こうとするな!」
アイツらやりやがった!俺から力を盗もうとしてやがる!
恐れていた事がついに起きた!
俺の力の源泉を掠め取ろうと奴ら邪教徒どもは!
「粉挽きは夜に回すから問題ないだろ?」
俺は知ってる!前もあったんだ。軒先を少しだけ貸してあげたのに、いつの間にか母屋に乗り込まれてたんだ。カミラちゃんヒドイよ、お兄ちゃんは悲しい。こうやって研究室はいつも取り上げられるんだ。
しかし今回は抵抗させてもらうぞ!
「断固拒否する!麦粥至高神様は仰った。パンは不味いと!依って却下する。粥を讃えよ!」
「俺らも水路の整備してる!不当だ!横暴だ!粥は腹に溜まらん!」
我々の意見は平行線を辿る、そんなの分かりきっていた事だ。ならば勝負だな!
「いや、先生とはもう賭け事をしないと村の決め事で決まった」
「逃げるか?卑怯者ども!」
「村長こそ逃げている。アンタは焼きたての美味いパンを食わずに、旧泰然とした粥に固執している!神は求めて居られる!焼きたてのパンを捧げよと!」
「あと、先生は『水車を自分達で』用意して『粉挽き小屋を整備しろ』と言ってたので、場所の指定はしていません。水車も用意しますし、粉挽き小屋も整備していますが何か?」
「詰めを誤ったな、村長。俺達は村長との契約通りどちらも準備している。それが別々であってはいけないとは言われていないなぁ。これこそパンを拡めよとの神の啓示だ!」
「詭弁だ!詐欺だ!暴挙だ!あとパンは口が渇くから食味が悪い!」
「ふん、詰めが甘かったんだよ、村長。諦めてもらおうか。アンタの負けだよ。契約はしっかり詰めないと、こうなるんだ。勉強代だとでも思いな!粥は味が単調だ」
罵り合ったが、水車が本当に手に入ったら立ち退くことを条件に、仕方なく夜間の使用を許可した。
奴等、絶対に遅滞戦術で水車を手に入れない気だな…
粉挽き小屋が完成する直前に水車でも持ってくるか?大店の店主に泣きつけば借金で買えないか?なんとか一泡吹かせたいけど…ただ買っただけじゃ全く意味ない場所に置いて、雨水が貯まるのを待ってるとか言いそうな太々しさがあるからな…
こっちの気が変わらないうちにと、開拓者アガリの身体能力を活かしてどんどんと小屋の骨組みが出来上がっていく。技術もへったくれもない、パワーでパワーする製材には常識が破壊される物があった。なんなんそれ、斧ってそんなに鋭いもんちゃうやん…唐竹割りならぬ、丸太裂きとか…何その頑丈そうなスプーン…えぇ…ホゾ切りって…スプーンで超強引にねぎってるだけじゃんかよ…滅茶苦茶過ぎだろ…
かなり怪し目だけど、信じられない速さで小屋っぽいのが出来た。あとは屋根を葺いて、壁を埋めれば完成だ…力技が極まってる…多少の不具合は蔦でギチギチに締めてるのか…はぇー。
そりゃコレができるなら、故郷の村みたいに家で騒がない訳だ。幸いここらは長年放置されてたからか、木材も手に入りやすいし。なんなら川向こうはさらに手付かずだしな。
俺の土小屋もいつか木造小屋に変えてもらおう。
カイルの他にも何人かのスプーン職人が微調整しながら三角屋根の骨組みを作っていく姿に戦慄しながら、予想外の手際に呆けた視線を送り続けるのであった。




