拠点暮らし26
パン焼き釜なんか壊れてしまえ!そう念じた甲斐もなく、パンは焼き上がってしまった。邪教徒達め、踊り狂っていやがる…奴らを吊らねば…
「コレだよ!この焼き上がりのこうばしい香り!やっとパンを自前で用意出来るようになったぞ。街までわざわざ買いに行かずに済むな!やっぱり麦は挽いて焼いてなんぼだろ!」
手回しの石臼で挽いとけよ、そんな物…
…!
‼︎‼︎
手回し⁉︎
待て待て、そうだよ!手回しでも良いじゃん‼︎そうすれば、稼動性に優れた、いや、今はまだそこまで手を広げると収拾がつかなくなる。先ずは、一旦大型の粗っぽくでも作れそうな物から作って、小型化していくべきか。歯車の強度とかが安定すれば、小型化も夢じゃ無いはず。
そうすればわざわざ集荷せずに、方々で作業出来ないか?
なんでこんな基本的な事を見逃してたんだ…
いや、そもそもが自分達の労働力を他に肩代わりさせて楽をするって発想が元だから、自分達で動力を回すって発想が無かったんだ。動かす物もデカかったり重かったりだったし。
それが小型化できれば、自分達で文字通り、回す事が出来る物も増えそうだ。
「カイル!お手柄だ!そうだよ!手回しだよな‼︎そうなれば世界が変わるぞ!凄い気付きだな!なんでこんな初歩的な事を見逃してたんだっ!」
突然前が開けた気がして、思わず叫んでいた。そこからは色々アイデアが思い浮かんでは消えを繰り返しながら、妄想の世界に没入していく。手回し?もっと出力と作業性を求めるなら、足踏みの方が…そうだ!何も全てを水力や畜力に頼らなくても…
しかしそれには小型化が必須…要は回転が…あぁ、そうだ!全ては回転なんだ‼︎
なんで俺は…ペダルとかそんな身近な代名詞を知っておきながら…
「あぁ、道が拓けていきます神様ぁぁ」
「おい、また村長がおかしくなったぞ。おーい、ガイ!村長を部屋に連れてけ。放っておくといつもの奇声上げたり、犬達が悲鳴上げるから、隔離してくれ。ノアとチョコを一緒に放り込んでおけば、その内正気に戻るから」
「いつもの発作か?コレさえなきゃ良い人なんだけどなぁ」
外野がなんか言ってるけど、今日おれは一段と歯車を深めたと確信した。
今は一旦小型化は封印だ。逸る思いもあるけど、手を出せば沼ること確定なので、出来ることからコツコツと進めないと。
ん?甘めの香り…コレはチョコちゃん?
構ってもらえて嬉しい組の2匹がいつの間にか俺にのし掛かってた。君達もそろそろお姉ちゃんになるのに、まだまだ子供やなぁ。
よし、ここは俺の気持ちが落ち着くまで、娘達に相手してもらおう。
河辺で一緒に泳いだり、枝を投げてみたりと、夏のバカンスみたいに娘達と戯れて気持ちをリフレッシュする。
どうしても頭から回転が離れなかったので、ブーメランとかフリスビーを木ちゃんと一緒に作ったら、2匹に思いの外好評だった。
猛ダッシュで取りに行って、持ってこないフリスビーは、帰ってきた時は見るも無惨だったけど、楽しんでいただけたようで何よりでした。
ブーメランで翻弄された結果、フリスビーはその狩猟本能を一身に浴びてしまったみたい。でも君らが楽しかったなら俺もそれで良いわ。
たまには頭を空っぽにして、こんな日を過ごすのも良いもんだな。また一緒に遊ぼうね。




