拠点暮らし25
「村長、粉挽はまだなんか?もう皆が暴動を起こす寸前だぞ?一刻も早く作らないと危険だぞ!」
村に煽動者がいます!
パン過激派は水路をいち早く整備してのけ、毎夜俺の犬吸いタイムを邪魔しに来るようになった。
煽動者はパン過激派の中心人物として、俺がいつ邪魔されると堪えるかを実に良く把握している。至福の時を過ごしていると、今日の成果報告とか言って、俺とワンコの触れ合いに割って入ってくる。その癖、メアちゃんに非常に懐かれていて、たまに御見送りに行った後、帰ってこない日がある…キサマァ‼︎ウチの娘に‼︎‼︎
キャンキャン鳴いて嫌がってるから、助けてやってるだと⁉︎
まさか、そんな…娘に反抗期が訪れたって…いうのか?
「村長、そんな事よりどれくらい出来たんだよ?それによっては、匿ってるメアをお宅に返しても良いんだぞ?身柄はコッチで預かってることを忘れるなよ」
「犯罪者の要求には屈しないぞ!」
2人で馬鹿なやり取りをしながら、光ちゃんに辺りを照らしてもらって、進捗を見せに行く。
河に転がってる硬くて大きめの岩を石爺に選別してもらって運び込み、街で石爺に石臼の造りを覚えてもらい、適当に作った。熱意が湧かないから、完全にアウトソーシングした、石爺本当にありがとう。なんで表面がこんな変な形で彫り込まれてるかとか興味が無いから全然理解できない。理解しようって気持ちも湧いてこないから、心を無にして、出来た物を組み立てるだけ組立てた。
ドヤ顔をする気にもならない、この邪教徒の祭器を作らなければならなかった事に、俺は忸怩たる思いを抱いている。なぜ麦粥至高教徒の俺がこんな邪神具を…
すみません我が神よ、此処の住民に脅され、仕方なくこの様なモノに手を染めてしまいました…
お前らなんか麦粉に混ざった小石を齧って歯を砕いてしまえばいいんだ‼︎ばーかばーか。
「コレでやっと美味いパンが食えるな。嫁に皆んなの分のパンも焼かせるか。そうすりゃ、薪の節約にもなるだろうしな!」
なんとこの煽動者は妻帯者なんだ。開拓者時代から妻帯してたらしいけど、此処で暮らす様になって、直ぐにこっちに呼んだそうだ。俺に恩を返しきるまで此処で暮らすって。こいつはまぁ、この拠点の纏め役みたいなもんだ。良いやつで求心力もある、顔役みたいなもんだな。
ただ、その求心力が今回は悪い方に働いた。まさかコイツがパン過激派だったなんて…
お前ら、何でそんなにパンに心惹かれるんや…あれ、保存食やで…
俺自身は全くやる気無く造らされた代物だけど、物自体は良い物なので問題無く粉は挽けた。挽けてしまった…あとは水車の使用権で粘って足止めするしか、奴らを止める手段が俺にはもう無い…悔しぃ…
「パン焼き釜はどうするんだ?数を焼くとなるとそれなりの大きさが必要だろう?」
先ずはそっちから整備したら?それまではテイスティーな麦粥を食べてなよ…その間に邪教から改宗しなよ…
「それはどうにかする宛てがあるから、今度街に行って都合をつけてくる。それよりも無駄な抵抗してないで、さっさと粉挽を使わせてくれ。契約は為されたんだぞ?コレは村長の信条に反する行いだな」
ほんと、知恵も回るし、もうコイツが村長で良くないか?
いや、それすると、いつの間にか水車を工場に作り替えられる未来が…
ぐぁぁぁ、ジレンマや!俺の実験施設だった筈なのに…
煩悶としながら、粉挽機を見つめる羽目になる俺だった。なんで…こんなモノを…




