拠点暮らし12
「その分銅は38層で偶然私が手に入れた物です」
あぁ、クロ。悪いんだけど少し出かける。危ないから皆を近付かせないでおくれ。離れていないと、影響が大き過ぎてね。任せたよ。
「何かに呼ばれている様に感じて、行き止まりの通路の奥にある暗がりに行ってました。そこに転がっていた皮袋の中に入っていたのが、それです」
コレは運び辛いな…縄に括って引きずっていくか。汚れと臭いが広がるから良い気はしないな。
「2人は何故か40層の宝箱で手に入れたと勘違いしてましたけど、アレは間違いなく私を呼んでいました。つまり、資格は私にこそ有ると思っています」
河辺の方でやれば良いかな。あそこなら何も無いからナニが起きても被害は最小で済むでしょう。
「だから、もし2人を助けてくれるなら、私がこの神器の付属品を集めて見せます」
そうか、サーシャ。君が、君こそがつ刃で盾がオレなんだね。ならば使命を君に託そう。オレは君のやり易い環境を整えようじゃないか。
「2人を助けてください!償いが必要なら必ず2人には償わせますし、お金でも何でも払いますから」
ただ一つ疑問があるんだ。君に素養があったならば、その聖遺物に思うところがあったんじゃ無いのか?君らは其れを鋳潰し、再利用しようとしていたんだぞ?それも含めた今回の導きなのかな?
「そこはどうなんだい?」
「凄い力を秘めた金属片だとは感じてましたよ。ただ、ケインがいつもの鑑定ではしゃいでたんです。神聖な金属が出たとか、重要品かもとか。最後は香付け文書だけかよって嘆いてましたけど」
あぁ、ゲーム脳過ぎて神聖って部分を素材のレア度でしか考えられなかったんだね。それが本当に神聖で冒し難い物だという認識がそもそも無かったのか。
悪いけど、現実なんだここは。冒してはならないものを冒したなら、罰せられるんだ。
神に。神の代行者に。
ここは神の座す地。実際に自分達もその恩恵に浴してるってのに、なんて愚かなんだか…
「ここら辺でいいか。気楽にしたまえよ、サーシャ。なに、ただ少し魂を灼かれるだけさ。君なら耐えられると思うぞ?たとえ耐えられなくとも慈悲を下さるさ」
どうした、サーシャ。顔が盛大に引き攣っているようだが?
君が望んだ物語がコレから始まるというのに。
2人に劣等感を抱いていたのだろう?同じ同郷の出身者なのに、2人にどんどん差をつけられて、何で私は?と。
それなのに強かった2人は呆気なく死に、とうとう自分にスポットライトが当たったと。そうだ、ココからが君の物語の始まりだ。
オレはその醜い心根すら祝福しよう。天秤に善悪は無いんだ。均衡をこそ尊べ。
「勇者に聖女か。使命にその運命力、載せたところで復活能わず。ならば錘を足そう。……ふむ、コレで吊り合いはとれたか。ならば祈ろう。乞い願おう。神の奇跡を『輪廻』」
回れ よ廻れ、そ の刻を 逆さに 廻せ。
おわしませ、天秤神様‼︎
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2人を助け、ある程度回復させた。
復活と魂の消耗と剥落で、2人はまだ少し呆けている。でも、彼女はもうここを出るそうだ。
「アルスさんは最低ですね。分かってても、わざわざ口に出さなくてもよかったんじゃ無いですか?」
「ふん、自分を客観的に見直す手助けをしてやったのに、酷い言われ様だな。良いかい弓ちゃん、コレからは今までみたいに2人に引っ張られる事はするな。君が2人を引っ張っていくんだ。もうあの2人の物語はここで終わったんだ。コレからの特別は君に置き換わったんだから、使命を忘れない様にな」
「はい、神の御心のままに、って言えば良いんですかね?」
「無理に使命を意識しなくて良いよ。ソレはね時がくれば否が応でも君に追いついてくる。それまでは誰のためでも無い、君の物語を紡げば良いさ」
「それと憶えておきな、『博愛』ってのは百家争鳴した春秋戦国時代の墨家の思想だ。キリスト教のは『友愛』が正しい」
最後まで嫌な人ですねと顔を顰められた。オジサンなんでね、若者を正し、導いてあげてるんだよ。
それでは、行きなさい。君に祝福と神の御加護を勇者サーシャ




