拠点暮らし4
「なんだ、アルス!村を作り飽きて飛び出ていった先で、また村作りしてるのか⁉︎それだったらコッチに帰ってくれば良いだろうに」
支援物資をお願いしたらネロ兄が、どこの商会だってくらいの荷馬車を率いてやってきた。荷馬車で15台ばかりの荷を満載した巨馬の行進は、遠目からでも圧巻だった。
荷物多すぎね?保管場所とか無いんですけど?
「そんな気は無いんだけど、成り行きでさぁ。馬達が孕んでるみたいで、無理させられないなぁと」
たった10日と少し、されど、ほとんど何も無い、分からない10日を進むのは怖い物だ。賭けてるのが自分の命だからね。
ただ、意外と近くに滞在していたらしい俺の情報を届けてくれた開拓者達に、ネロ兄はじめ、村の連中は歓迎してくれたようだ。その後、様々な物を持って俺の様子を見にきてくれた。
開拓者達もあまりの歓迎ぶりに少し戸惑ったと、後で笑いながら話してくれた。随分と慕われていたんだなと。
まぁ、そうかもしれないけど、あの場所で研究が行き詰まってしまっていたのも事実なんだよな。
俺も俺でやりたい事が有ったので、許してくださいよ。
「ところでネロ兄、この先の街には一度行ってみるべきだよ。トゥールが霞んで見えるぞ!アレが、アレこそが文明だよ‼︎」
昔の俺を知る相手だから、少し地が出てきてしまうがしょうがない。あの感動はど田舎から出てこないと絶対に味わえない。
そうだ、俺が歯車の回転に魅せられたのも、文明をそこに見たからなんだ。
ネロ兄と話していると、原点を思い出して来ると共に、水車を見て敗北を感じていた心に再び火が灯る。
粉挽き程度で満足してる水車如きに負けてなるものか!
「ウチの村一番の工人がそう言うんなら、たぶん凄いんだろうけど、俺に理解出来るかは分からん。お前がやってた事の半分も分からんけど、出来た物は便利に使えただけだしな」
ネロ兄としばらく話し込んでたけど村の連中が、サッサと寝床を用意しろ、保管場所を用意しろとせっつくので土アパートと納屋を作る。
見慣れない開拓者達は少し驚いていたけど、村の連中は手慣れた様子でサッサと自分の部屋を確保していく。まだ出来立てだから、少し湿ってるぞ?
「先生は随分と魔法が得意じゃないか!治療師だけじゃなかったのか?」
「アルスが治療師?お前、随分と信心深かったけど、いよいよ神様の力も使えるようになったのか?」
「村長さん、そんな可愛げのあるもんじゃ無いぞ、先生の手並みは。俺が知ってる中じゃ、頭3つは抜けてるわ。俺が前に腹を裂かれた時、街一番の治療師が匙投げたってのに、先生は顔色一つ変えずに事もなげに治して見せたからな」
ネロ兄がじっとり見て来る。
「なんだ、アルス隠し事してたぁ水臭いじゃ無いか…うん?ウチの村から治療師も居なくなってたって事か?」
ちゃうねん、ちゃんと後釜は用意しましたんや!てかそこまでバレると俺の研究時間が全て奪われる恐れがあったんや!聞いてくれ、ちゃんと皆んなは治してた。疫病も出産のバックアップもしてたんや!皆、健康だったやん?陰ながら助けてて…
「色々と隠し事の多そうな先生だな。でも助けてもらった事は事実だしな」
開拓者達の目に若干呆れの色が浮いている。
違うんだって!俺の信仰は歯車で、見出した神の真理とは回転だったんだ!つまりは研究して探求していく事こそ、信仰を深める事やったんや!
どんなに言い募っても、全然信用してくれない。俺は悲しいよ、ネロ兄。20年近く一緒にやってきた仲やん…
「お前に振り回されて、いつの間にか村長になってた20年だったな」
おい、それは言わないお約束だろうが!
そんな酷い事を言う奴は襲ってしまえ!行け!我が軍団よ!
捜索パトロールから帰還した仔犬隊をネロ兄に嗾けてやる。俺と同族の匂いを嗅ぎ取ったのか、仔犬達に激しい襲撃を受けるネロ兄を見て、久しぶりに心に火が灯るのを感じるのだった




