拠点暮らし
「先生、急患だ‼︎ 腹をやられてる!秘薬で誤魔化しながら何とかここまで来たけど、腑が今にも溢れそうだ‼︎」
「おう、こりゃ随分とやられたな!生きてここまで来たのが奇跡みたいなもんだな!お前ら、神様に感謝しろよ!俺をここに導いた天秤神様には、特に感謝しろよ!」
冒険者アガリの治療をしたところ、たまにこういう本気の急患が来る様になった。指3本落としてたのを『修復』で生やしてやったのが効いたみたいだ。ここまでの回復使いはなかなか居ないらしい。自慢じゃ無いけど俺もそう思ってる。
犬達が血の匂いに興奮して吠えているけど、クロちゃんが抑えてるくれる。ワンワン吠えてたのが、クロちゃんが一吠えするとスンって静かになる。クロちゃんまじ賢い良い子。
「おい、アレって全然討伐できなかった小賢しい賢狼じゃ…」
若い冒険者がギョッとした顔でクロちゃんを見てる。
「ウチのクロちゃんになんか用かい、開拓者君?この子は賢く可愛いウチの家族なんだけど?」
あー、変な事吹聴されちゃうと、俺も心が乱れて治療に失敗しちゃうなー。
ボソボソ独り言を呟いたら、開拓者諸君もお口にチャックしてくれた。物分かりのいい子は好きやで?
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「ほれ、コレで化膿の心配もいらん程回復しただろ。治してやったんだから、払う物払って貰うぞ」
ウチは天秤神様の教会なんで、対価はキッチリ貰うぞ?慈善事業はしておりません。
「すまねぇ、先生、秘薬を買うのにほとんど金は使っちまってるんだ!裏メニューってヤツで頼むよ!」
そんでもう一つ、なんで若い開拓者達がここを訪ねるかは、この裏メニューにある。
「今回はだいぶやられてたしな。全員で10日ってところだ。キッチリ働けよ!飯は出してやるから!しっかし、どいつもこいつも金持ってこないから、その内やらせる事も無くなっちまうぞ!」
開拓者の若手連中に今手掛けてる水路の整備を手伝わせる事にしてる。金が貯まったら水車でも買えるようにと。金を払えない貧乏開拓者を助けて、こきつかったのが広まってしまい、最後の駆け込み寺みたいになってしまっていた。身なりの良い奴は装備を寄越せと突っぱねてから、貧乏人ばかり来るようになってしまった。
俺の要求にイチャモンを付けて反撃してきたヤツも居たよ。
そういう奴は今頃は魚の腹の中にでも住んでるんじゃないかな?
ほぼ石作りの内装な教会には余り休める場所も無い。なので、最初の方に助けた開拓者には、そっちも自分で作らせた。今では代々手を加えられてきて、それなりに休める場所が出来上がってきていた。
「飯に文句を言う奴は飯抜きだ。対価に文句を言う奴は魚の餌だ。ウチの家族を攻撃した奴は火炙りだ。この3つが此処の絶対のルールだと肝に銘じろよ!それ以外はあんまりとやかく言わんから、治療代分は働いていけ」
「わかってるよ、先生。俺たち6人、キッチリ10日は働いてくよ」
餓狼のパーティみたいに消されたく無いからなって呟いてる、そこの君‼︎お口を縫い付けられたいのかな?
ギロリと睨むとお口が閉じる。そう、余計な事は言わなくて良いのよ。
寝泊まりする場所には、幾つかの評判の悪かったパーティの遺留品が転がっている。
彼らもそれを目にして、帰った先で何かを囀るのだろうけど、気にしない。
此処は命の安い場所なんだ。鼻つまみ者のパーティが居なくなったところで、気にもされない。抑止力にこそなれ、評判がどうこうなることは無いさ。
また少し大きくなった仔犬に戯れ付かれる彼らを見つめながら、今日も拠点の整備に勤しむのだった




