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第7話 初めて見る世界

街を出て、しばらく歩いた二人。

ユニは何を見ても驚いていた。

「ロッタ! あれ何?」

「鳥」

「飛んでる!」

「鳥だからね」

「すごい!」

「……海にも飛ぶ魚はいたんじゃない?」

「いた!」

「じゃあ同じじゃない?」

「全然違う!」

ユニは楽しそうに笑った。

海しか知らなかったユニにとって、陸の世界は見るものすべてが冒険だった。

森。

花。

風。

鳥。

そして――道。

「ねえ、ロッタ」

「なに?」

「この道って、どこまで続いてるの?」

「さあ」

「じゃあ、行ってみよう!」

「目的地は?」

「知らない!」

ロッタは苦笑した。

「それ、旅っていうより迷子じゃない?」

「旅!」

ユニは胸を張った。

二人はそのまま歩き続けた。

昼過ぎ。

二人は小さな村に立ち寄った。

ユニは店先に並んだ食べ物に釘付けになる。

「ロッタ……」

「なに?」

「あれは?」

「焼き菓子」

「食べたい」

「あれは?」

「果物」

「食べたい」

「あれは?」

「……全部?」

「うん!」

ロッタは頭を抱えた。

「お金には限りがあるんだからね」

「お金って難しい……」

ユニは真剣な顔で財布を見る。

「海にはなかったから」

「そうだよね」

「海では、欲しいものがあったら採ればいいの」

「すごい生活だな……」

二人は小さなパンを一つ買った。

ユニは大事そうに両手で持つ。

「半分こしよう」

「いいの?」

「ロッタのお金だから」

「……」

ロッタは少し笑った。

「じゃあ、半分ね」

二人でパンを食べる。

「おいしい!」

ユニの笑顔につられて、ロッタも笑った。

しかし――。

そのとき。

ロッタの胸元のペンダントが、ほんの一瞬だけ光った。

「……?」

ロッタが胸元を見る。

「どうしたの?」

「いや……何でもない」

ペンダントは、もう普通の青い石に戻っていた。

その夜。

二人は村の外で野宿することになった。

ユニは空を見上げる。

「星……」

「綺麗でしょ」

「海の中から見るのとは全然違う」

「海から星が見えるの?」

「海面の向こうに、少しだけ」

ユニは嬉しそうに笑った。

「世界って広いね」

「うん」

「私、もっと見たい」

「じゃあ、いっぱい見よう」

ロッタは焚き火を見つめる。

その横顔は、少しだけ寂しそうだった。

ユニが気づく。

「ロッタ?」

「ん?」

「家族のこと考えてる?」

「……うん」

ロッタはペンダントを握った。

「いつか、このペンダントの持ち主を見つけたい」

「見つかるよ」

ユニは即答した。

「どうして?」

「だって、私たちは旅をしてるんだよ」

「……そうだね」

二人は笑った。

けれど――。

遠くの森。

二人が知らない場所で、魔法の光が灯った。

「……反応を確認」

王城から派遣された魔法使いが、水晶を覗いている。

「例の少女です」

水晶には、ユニの姿が映っていた。

しかし――。

「待て」

一人の老人が水晶を覗き込む。

「少女のそばにいる少年は?」

「孤児院育ちの少年です」

「名前は?」

「ロッタ」

老人は、ロッタの胸元を見つめた。

「……ペンダント?」

水晶の映像が一瞬乱れる。

老人は眉をひそめた。

「妙だな……」

そして、誰にも聞こえない声で呟いた。

「この反応……どこかで……」

まだ老人自身も、その正体には気づいていない。

ただ一つ。

ユニを追う旅が、思わぬ少年の秘密まで掘り起こそうとしていた。

そして二人の旅は、まだ始まったばかりだった。

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