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第5話 それぞれの旅の目的

街を出た。

振り返ると、遠くに小さく城壁が見える。

ユニは立ち止まり、しばらく街を眺めていた。

「……行っちゃったね」

「うん」

隣にはロッタ。

二人の荷物は少ない。

これからどこへ行くのかも決まっていない。

ただ一つ決まっているのは――

一年後、あの街へ戻ること。

「ロッタ」

「なに?」

「これから、どうする?」

「……」

ロッタも少し考えた。

「正直、何も決めてない」

「私も!」

ユニは笑った。

「でもね、私……」

遠くに広がる景色を見つめる。

森。

山。

街道。

そして、その先に広がる見知らぬ世界。

「世界を見てみたい」

「世界を?」

「うん」

ユニの目が輝く。

「私、海の中しか知らなかったから」

「……」

「空も、森も、街も、全部初めて」

ユニは両手を広げる。

「この世界には、私の知らないものがいっぱいあるんでしょ?」

「たぶん、いっぱいあるよ」

「じゃあ、全部見てみたい!」

「全部?」

「全部!」

ロッタは思わず笑った。

「ユニらしいね」

「ロッタは?」

「僕は……」

ロッタは胸元にあるペンダントを握った。

青い石のついた、古いペンダント。

孤児院の前に置き去りにされたとき、唯一身につけていたもの。

「僕は、家族を探してみたい」

「家族?」

「うん」

ロッタはペンダントを見つめる。

「僕には、これしかないんだ」

「……」

「誰がくれたのかも分からない。父親なのか、母親なのか、それとも別の誰かなのかも分からない」

ロッタは少し寂しそうに笑った。

「でも、これだけはずっと持ってた」

「だから探すの?」

「うん」

ロッタはペンダントを握りしめる。

「これが、僕と本当の家族を繋いでいる唯一のものだから」

ユニはペンダントをじっと見る。

「きっと見つかるよ」

「……そうかな」

「うん!」

ユニは迷いなく答えた。

「だって、私もいつか海に帰りたい」

「ユニも?」

「もちろん」

ユニは遠くを見る。

「私の海にも、私を待ってる人がいるかもしれないから」

二人はしばらく黙って歩いた。

やがてユニが笑う。

「じゃあ、決まり!」

「何が?」

「ロッタは家族探し。私は世界探し!」

「一緒に?」

「一緒に!」

ロッタは少し驚いた。

「僕の家族探しに付き合ってくれるの?」

「もちろん!」

「じゃあ、僕もユニの世界探しに付き合うよ」

「約束!」

ユニが手を差し出す。

ロッタも手を重ねた。

「約束」

二人の旅の目的が決まった。

世界を見たい人魚。

本当の家族を探したい少年。

それぞれ違う目的を持ちながら、二人は同じ道を歩いていく。

そのとき――。

ロッタの胸元のペンダントが、ほんの一瞬だけ光った。

「……?」

ロッタは気づかなかった。

ユニも気づかなかった。

けれど、その光は――

二人の旅が偶然ではないことを示す、小さな兆しだった。

「ねえ、ロッタ!」

「ん?」

「まずはどこに行く?」

「そうだな……」

二人の目の前には、三つの道が伸びている。

森へ続く道。

山へ向かう道。

そして――

遠くに見える、大きな街へ続く道。

ユニは目を輝かせた。

「全部行こう!」

「一年で?」

「……頑張れば!」

「無理だと思う」

二人の笑い声が、街道に響いた。

こうして――

人魚ユニの「世界を見る旅」と、ロッタの「家族を探す旅」が始まった。

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