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第43話 海からの呼び声――ブレスレットが光る

 新しい町に来て二日目。

 ユニたちは市場を歩いていた。

「わぁ……!」

 ユニの目は、あちこちの店に釘付けだった。

 色とりどりの果物。

 焼きたてのパン。

 見たことのない魔法道具。

「異世界の市場って、毎日お祭りみたい!」

 アオも楽しそうに走り回る。

「お姉ちゃん、これ何?」

「分からない!」

「じゃあ、これは?」

「それも分からない!」

 ロッタが笑う。

「ユニはまだまだ知らないものが多いね」

「だって海の中にはこんなのないもん」

 レオンも店の商品を眺めながら歩いていた。

「僕も初めて見るものが多いよ」

 その後ろでは――

「ユニ様、こちらの果物はいかがですか?」

「ユニ様、こちらのパンも!」

 マリと賢者が、なぜか買い物競争を始めていた。

「二人とも買いすぎ!」

 カイルが大量の袋を抱えている。

「……誰か、この二人を止めてください」

 小さな店

 その時、ユニが立ち止まった。

「あれ?」

 市場の隅に、小さな店があった。

 青い布。

 貝殻の飾り。

 海を思わせる装飾。

「……海の匂いがする」

 ロッタの表情が変わる。

「海?」

「うん」

 レオンも店を見つめる。

「魔力を感じる」

 ユニは店の中へ入った。

 店主は白髪のおばあさんだった。

「いらっしゃい」

 おばあさんはユニを見ると、驚いた顔をした。

「……まあ」

「あなた……」

「はい?」

 おばあさんはユニの腕を見る。

 そこには、賢者からもらったブレスレット。

「そのブレスレット……」

 ユニが手首を見た。

「これですか?」

「どこで手に入れたんだい?」

「賢者のおじいさんにもらいました」

 賢者が胸を張る。

「ワシが贈ったのじゃ!」

 おばあさんは賢者を見る。

「……あんたが?」

「うむ!」

「そうかい……」

 おばあさんは意味深に笑った。

「まだ持っていたんだね」

 賢者の顔から笑顔が消える。

「……どういう意味じゃ?」

 500年前の記憶

 おばあさんは店の奥から、古びた箱を持ってきた。

 箱の中には、一枚の古い絵が入っていた。

 そこには――

 人魚の少女。

 銀髪の少年。

 金髪の少年。

 そして黒髪の少女。

 ユニは息を呑んだ。

「……私?」

 ロッタも絵を見る。

「僕にも似てる」

 レオンも黙り込む。

「この四人……」

 賢者が絵を見つめる。

「これは……」

 マリが興奮する。

「師匠?」

「500年以上前の絵じゃ」

「じゃあ、ユニ様たちの前世……?」

 賢者は首を横に振る。

「まだ断定できん」

 おばあさんが言った。

「この四人は、この町に一度だけ現れたそうだよ」

「何をしに?」

「海から来て、何かを探していた」

「何を?」

 おばあさんは答えなかった。

 代わりに絵の裏を見せた。

 そこには古い文字が刻まれていた。

「八つの鐘が鳴る時」

「八つの波が重なる」

「海の子は道を見つける」

 ユニが呟く。

「8……」

 賢者が低い声で言う。

「8時間8分……」

 ブレスレットが光る

 その瞬間だった。

 ユニの腕が熱くなった。

「え?」

 ブレスレットが――

 青く光り始めた。

「ユニ!」

 ロッタが駆け寄る。

 レオンも魔力を探る。

「これは……海の魔力だ」

 ユニはブレスレットを握る。

 すると――

 どこからともなく波の音が聞こえてきた。

 ザァ……

 ザァ……

「海……?」

 この町は海から遠い。

 なのに、確かに聞こえる。

 そして――

『ユニ……』

 ユニが振り返る。

「誰?」

『ユニ……聞こえる?』

 その声に、アオが反応した。

「お姉ちゃん!」

「アオ?」

「この声……海の国の魔法使いさんだよ!」

 ユニはブレスレットを耳元へ近づける。

『ユニ……帰ってきて……』

「どうしたの?」

『大変なの……』

 声が震えている。

『海の国で……』

 そこで通信が途切れた。

「待って!」

 ユニがブレスレットを握る。

「何があったの?」

 返事はない。

 そして空に……

 突然。

 町の空が青く染まった。

「何!?」

 人々が空を見上げる。

 空中に、大きな水の輪が現れた。

 その向こう側に見えるのは――

 海。

 人魚たちの世界。

 ユニの故郷だった。

「海の国……」

 ユニは一歩前へ出る。

「帰れる……?」

 ロッタがユニの隣に立つ。

「行く?」

 ユニは迷った。

「……まだ分からない」

 レオンが言う。

「罠の可能性もある」

 カイルも頷く。

「王城の件もあります。慎重にした方がいい」

 すると賢者が水の輪を見て、顔を険しくした。

「いや……」

「これは王城の魔法とは違う」

 マリが尋ねる。

「では何です?」

 賢者はユニのブレスレットを見る。

「海の世界から、本当に道が開かれておる」

 ユニは水の輪を見つめる。

 そして――

「……私、海に帰ってみたい」

 ロッタが笑う。

「じゃあ、みんなで行こう」

 アオも嬉しそうに叫ぶ。

「海のおうち!」

 レオンも頷く。

「僕たちも一緒だ」

 マリが即座に手を上げる。

「もちろん私も!」

 賢者も続く。

「ワシもじゃ!」

 カイルはため息をついた。

「……私も行くしかありませんね」

 ユニはみんなを見て笑った。

「ありがとう」

 その瞬間。

 ブレスレットの光がさらに強くなる。

 そして水の輪の向こうから――

 誰かの声が聞こえた。

『ユニ……』

『早く来て』

『あなたの帰りを――』

『ずっと待っている』

 ユニの表情が変わった。

「……私を待ってる?」

 水の輪が大きく開いていく。

 その先に――

 人魚の国の城が見えた。

 しかし、その城の上空には、

 真っ黒な巨大な影が浮かんでいた。

 賢者が呟く。

「……海の国で、何かが起きておる」

 ユニは拳を握る。

「行こう」

 こうして一行は――

 初めて、

 ユニの故郷へ向かう旅を始めることになった。

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