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第39話 もう一人のユニ――「私たちは、ひとつだった」

王城地下。

砕け散った水晶の中から、アオがゆっくりと姿を現した。

「お姉ちゃん……」

「アオ!」

ユニは弟を抱きしめる。

「よかった……本当に、よかった……!」

アオもユニの服をぎゅっと掴んだ。

「ずっと……待ってた」

「ごめんね……」

「ううん。来てくれたから」

その光景を、ロッタ、レオン、マリ、カイルが見守っていた。

ただ一人――

賢者だけは、地下の奥を睨んでいた。

「……まだ終わっておらん」

「え?」

その瞬間。

ドクン――

地下全体が揺れた。

「私の番ね」

黒い影がゆっくりと前へ出る。

「やっと……私の番ね」

ユニがアオを抱いたまま振り返る。

「あなた……誰?」

影が笑った。

長い黒髪。

赤い瞳。

そして――

驚くほどユニに似た顔。

「あなたには、まだ分からないのね」

「……何が?」

「私たちは――」

女性は胸に手を当てる。

「昔、一つだったのよ」

レオンの表情が変わった。

「一つ……?」

賢者が叫ぶ。

「ユニ! 近づくな!」

女性が賢者を見る。

「相変わらずね。あなたは」

「……お主」

賢者の顔から血の気が引く。

「まさか……」

女性が微笑む。

「思い出した?」

賢者が語る「失われた記憶」

賢者は震える声で話し始めた。

「前世のユニは――」

「普通の人魚ではなかった」

ユニが息を呑む。

「どういうこと?」

「ユニの魂には、二つの力が宿っていた」

「一つは――海を守る力」

「そしてもう一つは――」

賢者が女性を見る。

「境界を壊す力」

ユニの顔が青ざめる。

「じゃあ……この人は?」

「お主の魂から分かれた、もう一つの存在じゃ」

マリが驚く。

「ユニ様の……半分?」

「そうじゃ」

女性は笑う。

「ようやく理解したわね」

「私は悪者じゃない」

女性はユニに近づく。

「私はあなたを憎んでいるわけじゃない」

「むしろ――」

「あなたが羨ましかった」

「……私を?」

「あなたは海を選んだ」

「私は……境界の向こうを選んだ」

女性の瞳に悲しみが浮かぶ。

「だから、あなたは自由になった」

「私はずっと――」

「封印の中にいた」

ユニは何も言えなかった。

ロッタが前へ

「それでも、ユニを傷つけるなら――」

銀色の髪が輝く。

「僕が止める」

女性がロッタを見る。

「銀の守り手……」

「今度もあなたが守るのね」

「今度も?」

ロッタが驚く。

女性は微笑んだ。

「前世でもそうだったでしょう?」

ロッタの頭に――

一瞬、記憶が流れ込む。

幼いユニ。

その隣に立つ銀髪の少年。

そして――

黒髪の少女。

三人が笑っている。

「……僕たちは、昔から……」

レオンも記憶を取り戻す

レオンが頭を押さえる。

「僕も……思い出してきた」

「境界を閉じる魔法を作ったのは僕だけじゃない」

「ユニと……彼女も一緒だった」

女性が頷く。

「そう」

「私たち三人で作った魔法だった」

賢者が静かに言う。

「そしてワシとヴァルガスは、お主らを守った」

レオンがヴァルガスを見る。

「じゃあ、どうして今こんなことに?」

ヴァルガスは答えない。

代わりに女性が言った。

「ヴァルガスは、私を助けようとしたの」

「……!」

「でも、方法を間違えた」

黒の賢者の真実

ヴァルガスが初めて声を荒らげる。

「私は君を失いたくなかった!」

地下に声が響く。

「何百年も待った!」

「ユニたちが生まれ変わるのを!」

「境界を開けば、君を元に戻せると思った!」

女性は悲しそうにヴァルガスを見る。

「ヴァルガス……」

賢者が呟く。

「だからお主は……」

ヴァルガスは目を閉じる。

「私は間違えた」

「それでも――」

目を開く。

「もう止まれない」

その瞬間!

魔法陣が赤く染まった。

ドォォォン!!

城全体が揺れる。

カイルが叫ぶ。

「何だ!?」

レオンが魔力を感じ取る。

「まずい!」

「王城地下の境界魔法が暴走してる!」

マリが杖を構える。

「師匠!」

「分かっておる!」

賢者が叫ぶ。

「全員、ユニの周りに集まれ!」

「ユニちゃんを守るんじゃ!」

マリが即座にユニの前へ。

「当然です!」

カイルも剣を構える。

「私も守ります!」

賢者が叫ぶ。

「マリ! カイル! 結界じゃ!」

「はい!」

「了解!」

三人がユニとアオを囲む。

ユニが驚く。

「みんな……」

マリが振り返る。

「ユニ様は私が守ります!」

カイルも頷く。

「弟君も必ず」

賢者が胸を張る。

「ワシは――」

一瞬、考える。

「……ユニちゃんを守りながら、ついでに世界も守る!」

「ついでなの!?」

レオンが思わず笑った。

そして、ユニの中に

突然。

ユニの胸から青い光が溢れ出した。

「え……?」

女性も同時に光り始める。

「……始まった」

「何が?」

女性がユニを見る。

「私たちが分かれた理由」

「そして――」

女性が手を伸ばす。

「8時間8分の本当の意味」

ユニの目の前に、巨大な時計が浮かび上がった。

針が――

8時8分

を指す。

そして文字が浮かぶ。

「二つに分かれた魂が、再び一つになる時」

ユニが息を呑む。

「……私たちが?」

女性が微笑む。

「そう」

「だから、選んで」

「私と一つになるか――」

「それとも……」

女性の瞳が赤く輝く。

「もう一度、私を封印するか」

ユニは黙って女性を見つめる。

そして――

「私は……」

手を握りしめる。

「どっちも嫌」

「え?」

ユニは涙を拭った。

「あなたを消したくない」

「でも、私も消えたくない」

「だから――」

ユニは笑った。

「二人とも生きる方法を探す!」

女性が初めて驚いた顔をした。

そして――

微笑む。

「……やっぱり、あなたは私ね」

その瞬間、

8:08

の時計が――

動き始めた。

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