第37話 王城地下の少年――そしてマリ、王城を潰す!?
夜の森。
ユニは、貝殻を握りしめていた。
『……助けて』
最後に聞こえた、幼い声。
「王城の地下にいるって……」
ロッタが立ち上がる。
「助けに行こう」
レオンも頷く。
「うん。でも、罠の可能性もある」
マリが眼鏡を押し上げる。
「師匠、どうします?」
ところが――
マリの顔が、いつになく真剣だった。
「……王城」
「え?」
マリが拳を握る。
「ユニ様のお母様を閉じ込め……」
「さらにユニ様の弟君まで閉じ込めている……」
眼鏡がキラリと光る。
「許せません」
賢者も杖を握った。
「うむ」
「師匠」
マリが振り返る。
「王城ごと潰してやりましょう」
「……」
一同、沈黙。
ユニが目を丸くする。
「マリちゃん!?」
マリは本気だった。
「ユニ様を泣かせる者は、私の敵です」
「いや、王城全部を敵にしなくても……」
「いいえ!」
マリは杖を掲げる。
「王城の壁を一枚ずつ魔法で――」
「マリ!」
賢者が止める。
「まだじゃ!」
「師匠も同じ気持ちでしょう!?」
「当然じゃ!」
二人が肩を並べる。
「「ユニ様を泣かせる王城など――」」
二人の魔力が膨れ上がる。
「「潰してしまえー!!」」
「やめてええええ!」
ユニが二人の間に入る。
ロッタが頭を抱える。
「……王城に行く前に、僕たちが二人を止めないと」
レオンもため息。
「本当にこの二人、世界を救うよりユニのファン活動を優先しそうだ……」
そして、賢者の表情が変わる
だが、賢者は突然黙った。
「……待て」
「師匠?」
「青い髪の少年……」
マリも黙る。
「王城地下にいると言ったな?」
「はい」
賢者は目を閉じる。
「知っておる」
「え?」
「前世のユニが――」
「最後まで探していた子じゃ」
ユニの胸がズキンと痛んだ。
「……弟?」
賢者が頷く。
「名前は――」
「アオ」
その名前を聞いた瞬間。
ユニの目から涙がこぼれた。
「……アオ」
頭の中に、一つの映像が浮かぶ。
幼い男の子。
青い髪。
ユニの手を握って笑っている。
『お姉ちゃん!』
「……思い出した」
ユニは胸を押さえた。
「私……この子を知ってる」
一方、王城地下
黒の賢者ヴァルガスは、水晶の前に立っていた。
水晶の中には青い髪の少年。
「もうすぐだ」
ヴァルガスが呟く。
「姉が来る」
少年の指が動く。
「……ユ……」
「そうだ」
ヴァルガスは笑う。
「ユニだ」
少年がゆっくり目を開く。
「……お姉ちゃん?」
そしてマリ、再び暴走
森の中。
マリが突然立ち上がった。
「決めました」
「何を?」
「王城へ行きます」
ユニが頷く。
「うん。アオを助けに――」
「違います」
マリの目が燃えている。
「ユニ様のお母様と弟君を閉じ込めている王城を――」
杖を掲げる。
「粉々にします!」
「だからやめてってば!」
ユニが必死に杖を押さえる。
賢者まで、
「マリ、落ち着け!」
「師匠!」
「ワシも気持ちは分かる!」
「じゃあ――!」
「じゃが王城を潰したら、中にいるユニちゃんのお母さんと弟君まで危険じゃ!」
「……!」
マリが固まった。
「……それは困ります」
「そこだけは冷静なんじゃな……」
レオンが呆れる。
「マリって、本当にユニのことになると頭のネジが……」
「何か言いました?」
「何でもありません」
王城へ
そのときカイルが前へ出た。
「私も行きます」
「王城の騎士なのに?」
「だからこそです」
カイルは剣を握る。
「地下で何が行われているのか、私も知りたい」
ユニは微笑む。
「ありがとう」
カイルの顔が真っ赤になる。
マリがじっとカイルを見る。
「……」
「な、何ですか?」
「ユニ様に惚れました?」
「ええ!?」
「なら敵です」
「なんで!?」
ロッタがため息をつく。
「マリ……」
賢者も頷く。
「うむ。ワシもそう思う」
「師匠まで!?」
ユニが笑い出す。
「もう! みんな仲良くして!」
そして一行は王城へ向かう。
ユニはポシェットを抱きしめた。
「待ってて、アオ」
「お母さんも……」
「必ず迎えに行くから」
その頃、王城地下では――
水晶の中のアオが、完全に目を覚ましていた。
「……お姉ちゃん」
そして壁画に、
青・銀・金――三人の姿。
その後ろに、謎の四人目の影が浮かび上がる。
ヴァルガスがその影を見て呟く。
「……まだ目覚めるな」
影が――
ゆっくり笑った。
「今度こそ、」




