↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/45

第36話 王城地下・境界研究局――賢者の「もう一つの顔」

鏡湖を離れた一行は、森の中を歩いていた。

ユニは何度も後ろを振り返る。

「……お母さん」

もう一度会いたい。

その気持ちが、胸の中から消えなかった。

ロッタが隣を歩く。

「絶対に助けよう」

「うん」

レオンも頷く。

「そのためには、まず王城地下の境界研究局だね」

しかし――

賢者のおじいさんだけは、ずっと黙っていた。

いつもの、

「ユニちゃ~ん!」

もない。

マリが心配そうに見る。

「師匠……どうしたんですか?」

「……昔のことを思い出しておる」

「黒の賢者のこと?」

「ああ」

賢者は足を止めた。

「奴は、ただの敵ではない」

「では何者なんです?」

賢者はしばらく黙り――

「昔のワシの親友じゃ」

全員が固まった。

「ええええ!?」

ユニが驚く。

「賢者様の親友!?」

「そうじゃ」

「じゃあ、どうして敵に……?」

賢者は悲しそうに笑った。

「それを話すには――」

杖を握る。

「王城地下へ行かねばならん」

一方、その頃――王城

王城の地下。

地上の華やかな廊下とは違い、

そこには古い石造りの巨大な施設が広がっていた。

壁には無数の魔法陣。

巨大な水晶。

そして――

三人の人物を描いた古代の壁画。

青い人魚。

銀髪の少年。

金色の瞳を持つ少年。

その前に、一人の黒衣の男が立っていた。

「……ようやく揃った」

男の名は――

黒の賢者・ヴァルガス。

王城最高位の魔法研究者。

そして――

何百年もの間、姿を変えながら生き続けてきた男。

その背後から、王城の高官が現れる。

「ヴァルガス様、本当にあの三人を捕らえられるのですか?」

「捕らえる必要はない」

「では?」

ヴァルガスは壁画を見る。

「彼ら自身にここへ来てもらう」

「……?」

「母親の存在を知れば、必ず来る」

森では――

突然、

ガサッ!

木々が揺れた。

ロッタが振り返る。

「誰かいる!」

騎士たちが現れる。

「王城の命令だ!」

「三人を引き渡せ!」

賢者がため息をつく。

「またか……」

ユニが小声で言う。

「逃げた方がいい?」

「いや」

賢者が杖を構える。

「今回は話をする」

一人の若い騎士が前に出た。

昨日の騎士――カイルだった。

「賢者様」

「カイルと言ったな」

「はい」

「お主、本当に王城の命令を信じておるのか?」

カイルは黙った。

そして――

「……分かりません」

隊長が怒鳴る。

「カイル!」

「ですが!」

カイルはユニたちを見る。

「この人たちは、私が見た限り危険な人間ではありません!」

「命令違反だぞ!」

カイルは剣を抜いた。

だが――

ユニたちに向けるのではなく、

隊長に向けた。

「私は、この三人を捕らえません」

「カイル!」

「……申し訳ありません」

賢者がニヤリと笑う。

「ほう」

マリが眼鏡を直す。

「意外と男前ですね」

「え?」

カイルが赤くなる。

「い、いや……そういうつもりでは!」

賢者の本当の顔

その瞬間。

賢者が杖を地面に突き立てた。

ドォォォン!!

地面に巨大な魔法陣が広がる。

ユニが目を丸くする。

「賢者様……?」

いつものふざけた老人ではない。

杖を構える姿は、

まるで別人。

「昔のワシを見せてやる」

賢者の目が鋭くなる。

「マリ!」

「はい!」

「結界!」

「了解!」

「レオン!」

「分かってる!」

三人の魔力が一気に膨れ上がる。

騎士たちが後ずさる。

「こ、これが……大賢者……」

カイルも息を呑む。

賢者は空を見上げた。

「ヴァルガス……」

遠く離れた王城地下。

黒の賢者ヴァルガスが、突然振り返った。

「……来たか」

二人はまだ遠く離れている。

それでも――

互いの魔力を感じ取っていた。

ヴァルガスが笑う。

「相変わらず派手だな」

賢者も小さく笑う。

「お主もじゃ」

そして二人は、

同時に呟いた。

「今度こそ、決着をつけよう」

その夜

ユニたちは森の中で野営することになった。

ユニは焚き火を見つめる。

「お母さん……」

ロッタが隣に座る。

「大丈夫」

「うん」

レオンも反対側に座る。

「僕たち三人なら、きっと助けられる」

ユニが二人を見る。

「……ありがとう」

そのとき。

ユニのポシェットが――

ポンッ。

「?」

中から小さな貝殻が転がり出た。

ユニが拾う。

すると――

今まで聞いたことのない声がした。

『……ユニ』

「え?」

『聞こえる?』

ユニは驚く。

「お母さん!?」

違う。

この声は――

もっと幼い。

そして、震えている。

『……助けて』

『僕は……』

『王城の地下にいる』

ユニたちは顔を見合わせる。

レオンが立ち上がった。

「……誰?」

貝殻から、

小さな声が答える。

『僕は――』

そこで通信が途切れた。

ユニは貝殻を握りしめる。

「……今度は、誰なの?」

そして王城地下では――

黒の賢者ヴァルガスが、

一人の少年の入った水晶の前に立っていた。

その少年の髪は――

青かった。

ヴァルガスが静かに言う。

「目覚めるには、もう少しだ」

水晶の中の少年が、

ゆっくり目を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。