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第33話 8時間8分の正体――「ユニは鍵じゃない」

町を離れた一行は、森の奥へ進んでいた。

空に現れた巨大な目。

そして、三人に向けられた言葉。

『青を確認』

『銀を確認』

『金を確認』

誰も口を開けなかった。

「……僕が、金の器?」

レオンが自分の手を見る。

「器って……何を入れるんだ?」

賢者は答えられない。

「古い記録にも、そこまでのことは書かれておらん」

マリが珍しく真剣な顔をしていた。

「では、調べればいいんですね」

「うむ」

「王城より先に」

「当然じゃ!」

ユニはポシェットを握る。

その中から――

ザザ……

波の音が聞こえた。

「海……」

ユニが目を閉じる。

すると突然、

ポシェットの中が青く光った。

「え?」

中から一枚の貝殻が浮かび上がる。

『ユニ』

「魔法使いさん!?」

懐かしい声。

しかし今回は――

泣いていない。

『やっと……話せる』

「今まで何を知ってたの?」

『全部ではない』

「じゃあ教えて!」

しばらく沈黙。

『8時間8分という時間についてじゃ』

賢者もレオンも近づく。

『あれは、ユニが陸にいられる時間ではない』

ユニは頷く。

「うん」

『あれは――』

魔法使いが息を吸う。

『海と陸の境界が開いていられる時間じゃ』

「やっぱり……」

『じゃが、もっと重要なことがある』

「何?」

『その境界を開くには――三つの力が必要なんじゃ』

ユニのブレスレットが光る。

ロッタのペンダントも。

そしてレオンの瞳が金色に変わった。

『青』

『銀』

『金』

魔法使いは続ける。

『だが……』

声が震えた。

『三人は「鍵」ではない』

「え?」

『境界を開ける鍵ではなく――境界を閉じるための三人じゃ』

全員が凍りついた。

「閉じる?」

ロッタが尋ねる。

「じゃあ、8時間8分後に何が起こるんだ?」

『境界が完全に開く』

「完全に……?」

『海と陸が混ざる』

ユニの顔が青ざめる。

『海の魔力が陸へ流れ込み、陸の魔力が海へ流れ込む』

『そうなれば――』

魔法使いが言葉を失う。

『二つの世界は、元に戻れなくなる』

「そんな……」

ユニはポシェットを握りしめる。

「じゃあ、私が陸に来たのは……」

『偶然ではない』

「……!」

『魔法の暴走は、本当の原因ではなかった』

賢者が息を呑む。

「では誰が――」

『わからん』

魔法使いの声が低くなる。

『だが、誰かが境界を開こうとしている』

その瞬間。

レオンが突然、頭を押さえた。

「……っ!」

「レオン!?」

ユニが駆け寄る。

「頭が……!」

レオンの瞳が金色に輝く。

そして――

知らない声が、レオンの口から漏れた。

「……あと」

「え?」

「……あと、8時間」

全員が固まる。

レオン自身が驚く。

「今……僕、何て言った?」

賢者の顔色が変わった。

「レオン」

「何?」

「今の声……」

賢者は震えていた。

「お主の声ではなかった」

そして、ロッタにも異変が

「……!」

ロッタのペンダントが熱くなる。

「まただ……!」

髪が一筋、銀色に変わる。

しかし今回は――

暴走しない。

ロッタの耳に、誰かの声が聞こえた。

――守れ。

――青を。

――金を。

――そして――

「ユニを帰すな」

「……え?」

ロッタが凍りつく。

「今、誰かが……」

ユニを見る。

「ユニを……帰すなって」

ユニの胸が締め付けられる。

「私を……?」

その言葉に、海の魔法使いが反応した。

『……それは違う』

「え?」

『ロッタ、その声を信じるな』

『ユニは――』

魔法使いが言いかけた瞬間、

バキンッ!

貝殻にヒビが入った。

「魔法使いさん!」

通信が切れる。

沈黙。

ユニは貝殻を見つめる。

「……私、何なの?」

誰も答えられない。

すると賢者がユニの肩に手を置いた。

「一つだけ確かなことがある」

「……何?」

賢者は静かに笑う。

「お主は、誰かの道具でも鍵でもない」

「……」

「自分で行き先を決めればいい」

ユニは少しだけ笑った。

「……うん」

そして立ち上がる。

「私、海も見たい」

「陸の世界も、もっと見たい」

「だから――」

ユニはロッタとレオンを見る。

「私たちで決めよう」

ロッタが頷く。

「うん」

レオンも笑った。

「僕もそう思う」

その瞬間――

遠くの空に、青い光が走った。

そして空中に数字が浮かぶ。

7:59

カウントダウンは止まらない。

残された時間は――

7時間59分。

そして三人はまだ知らない。

8時間8分後に待っているのは――

世界の崩壊ではなく、

「ユニが生まれた本当の場所」

だということを。

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