第32話 8時間8分のカウントダウン!?
ユニの尾びれがまた……
翌朝。
宿屋の食堂。
ユニは朝食を食べながら、ぼんやりしていた。
「……8時間8分」
昨日から、その数字が頭から離れない。
「ユニ?」
ロッタが心配そうに覗き込む。
「大丈夫?」
「うん。でも……」
ユニは自分の足を見る。
「また尾びれになったらどうしよう」
「お風呂だけじゃなかったの?」
「分からない……」
その瞬間――。
キラッ。
ユニの足首が青く光った。
「え?」
ロッタが立ち上がる。
「ユニ!」
「きゃっ!」
ユニの足元から青い魔力が広がる。
そして――
ポンッ!
尾びれが現れた。
「また!?」
ユニは慌てる。
「ここ、お風呂じゃないのに!」
「ユニ様!」
マリが飛びつくように近づく。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫だけど……」
賢者が杖を構える。
「動くな!」
「え?」
賢者は尾びれをじっと観察する。
「これは……」
レオンも魔力を読む。
「……時間が動いてる」
「時間?」
レオンがユニを見る。
「ユニの魔力じゃない」
「じゃあ何?」
「周囲の魔力が、ユニに合わせて変化してる」
賢者の顔が険しくなる。
「まさか……」
テーブルの上の古い紙。
そこに書かれた文字――
『八時間八分後、境界は開く』
その文字が突然、青く光った。
「……!」
マリが息を呑む。
「数字が……」
紙の「8」が、一つ消えた。
8:07
「え?」
ユニが驚く。
「時間が減った!?」
賢者が叫ぶ。
「全員、宿から出るぞ!」
「ええ!?」
「ここにおったら危険じゃ!」
大急ぎの町脱出
「ロッタ、荷物!」
「分かった!」
「レオン、ポシェット!」
「僕が持つ!」
「マリ、ユニを頼む!」
「任せてください!」
「師匠は?」
「ワシは――」
賢者が杖を構える。
「全員を守る!」
ところが――。
マリがユニの腕を抱く。
「私が守ります!」
賢者も反対側へ。
「ワシじゃ!」
「先生!」
「ユニちゃんはワシが――」
「私です!」
「二人とも離れて!」
ユニが困り果てる。
「今それやってる場合じゃないよ!」
レオンが呆れる。
「本当に緊張感ないな……」
町の外へ出る。
その瞬間――。
ズズズズズ……
地面が揺れた。
「なに!?」
遠くの空に、青い亀裂が走る。
まるで空そのものが――
割れ始めている。
ロッタがペンダントを握る。
「これ……」
ペンダントが強く輝く。
ユニのブレスレットも反応する。
そしてレオンの身体からも、金色の魔力が漏れ出した。
「レオン!」
「僕じゃない!」
三人の魔力が、
青・銀・金
と三色に分かれて空へ伸びていく。
賢者は呆然と見上げる。
「……三つの鍵」
マリが聞く。
「鍵?」
「青の人魚」
「銀の守り手」
「そして――」
賢者がレオンを見る。
「金の器」
レオンの顔から笑みが消える。
「僕が……器?」
「分からん」
賢者は首を振る。
「じゃが、昔の記録にはそう書かれておった」
その瞬間。
空の亀裂から――
巨大な目が開いた。
「……!」
ユニが息を呑む。
「目……?」
ロッタがユニの前に立つ。
「下がって!」
巨大な目が、三人を見つめる。
そして――
声が響いた。
『青を確認』
ユニの身体が震える。
『銀を確認』
ロッタの髪が銀色に変わる。
そして――
『金を確認』
レオンの瞳が――
一瞬だけ金色に輝いた。
「……僕?」
レオンが自分の目を押さえる。
巨大な目が笑ったように細くなる。
『ようやく、三人が揃った』
ユニは叫ぶ。
「あなたは誰!?」
返事は――
「――――」
なかった。
空の亀裂が閉じる。
そして紙の数字が――
8:06
に変わった。
賢者が震える声で呟く。
「……8時間8分は、カウントダウンだったのか」
ユニは空を見上げる。
「じゃあ……」
ロッタがペンダントを握る。
「8時間8分後に何かが起こる」
レオンが静かに言った。
「そして僕たちは、それを止めるために集められたのかもしれない」
ユニは拳を握った。
「だったら――」
「行こう!」
三人が顔を見合わせる。
まだ何も分からない。
けれど一つだけ分かった。
8時間8分は、ユニがこの世界に来た理由とつながっている。
そして――
そのカウントダウンは、すでに始まっていた。




