第29話 張り紙に載っていない二人!?
そして、お風呂で尾びれが……
新しい町に入ったユニたち。
「わあ……大きい町!」
ユニは目を輝かせながら、あちこちを見回していた。
ロッタも町の様子を眺める。
「まず宿を探そう」
「うん!」
そのとき――。
「……ん?」
レオンが町の掲示板の前で足を止めた。
「どうした?」
ロッタが近づく。
そこには大きな張り紙があった。
『捜索依頼』
そして――
『青い髪の少女』
『銀髪になる可能性のある少年』
さらに、
『賢者の孫・レオン』
「……」
レオンが固まる。
「僕、載ってる」
ロッタが苦笑する。
「王城、本気だな」
その横からマリが覗き込む。
「私たちは……」
張り紙を見る。
「……」
賢者も見る。
「……」
マリの眉がピクッ。
「先生」
「うむ」
「私たちの名前がありません」
「……」
賢者の顔が徐々に険しくなる。
「ワシらは……」
「載ってませんね」
「なぜじゃあああああ!!」
町中に賢者の叫び声が響いた。
「ユニちゃんとレオンだけじゃと!?」
マリも怒る。
「私も人魚様を追いかけてここまで来たんですよ!」
「そこは威張るところじゃないよ」
レオンが呟く。
「しかも私、王城から何度も連れ戻されているんですよ!?」
「それも威張ることではない」
ロッタが冷静に突っ込む。
賢者は張り紙を指差す。
「ワシほどの大賢者を無視するとは!」
マリも拳を握る。
「師匠、私たちも指名手配にしてもらいましょう!」
「どうやってじゃ!」
「自分で張り紙を作るんです」
「天才じゃ!」
「天才じゃないよ……」
ユニだけが楽しそうに笑っていた。
そして、その夜
宿屋を見つけた一行。
「今日はゆっくりお風呂に入れるよ」
宿のおばさんが教えてくれた。
「お風呂……!」
ユニの目が輝く。
海育ちのユニにとって、お風呂は初めて。
「温かい水に入るんだって!」
「そうだよ」
「楽しみ!」
ユニは嬉しそうに浴場へ向かった。
そして――。
「わあ……!」
湯船に足を入れる。
「温かい……」
肩まで浸かる。
「気持ちいい……」
ところが。
しばらくすると――。
「……あれ?」
ユニが自分の足を見る。
「……?」
足先が――
青く光っていた。
「え?」
次の瞬間。
ポンッ!
「きゃっ!」
ユニの両足が消え――
代わりに、
美しい尾びれが現れた。
「……尾びれ!?」
ユニは自分の尾を見つめる。
「どうして!?」
湯船の中で、尾びれがゆらゆら揺れる。
その瞬間――。
ユニの頭に、あの海の魔法使いの言葉が蘇った。
『まだ終わっておらんかもしれん』
「……まさか」
ユニは尾びれを見つめる。
「これが……」
そして、以前聞いた謎。
陸でいられる時間――8時間8分。
ただ足が生える時間だと思っていた。
でも――。
「もしかして……」
尾びれが淡く光る。
8:08
まるで何かを知らせるように、尾びれの鱗が青く輝いた。
ユニは息を呑んだ。
「8時間8分って……」
その瞬間――。
浴場の外から声がした。
「ユニ?」
「ユニ様?」
「何かあったの?」
ロッタ、マリ、レオンの声。
そして――。
「ユニちゃん!?」
賢者の声まで聞こえてくる。
「来ないでーーー!」
ユニは慌てて叫んだ。
「どうした!?」
「なんでもない!」
しかし尾びれは消えない。
むしろ――
青い光がどんどん強くなっていく。
そして湯面に、一瞬だけ文字が浮かんだ。
『8時間8分――それは、帰るための時間』
ユニは目を見開く。
「……帰るため?」
文字はすぐに消えた。
けれどユニの胸には、はっきり残っていた。
8時間8分。
それは単なる魔法の制限時間ではない。
ユニがこの世界に来た理由そのものに関係している――。
そして、その秘密を知る者が海にいる。
――あの魔法使いだ。




