第27話 王城の紋章――ロッタを狙う者の正体
森の中。
ロッタは自分の手をじっと見つめていた。
「……僕が、銀の一族?」
さっきまでの自分とは別人のようだった。
銀色の髪。
鋭い目。
そして、信じられないほどの魔力。
「僕は……普通の人間だと思ってた」
ユニが隣に座る。
「ロッタはロッタだよ」
「……」
「銀色になっても、黒い髪でも」
ユニは笑った。
「私にとっては同じロッタ」
「ユニ……」
ロッタの表情が少し緩む。
「ありがとう」
その様子を少し離れた場所から見ていたレオン。
「……」
マリが横から覗き込む。
「どうしました?」
「いや……」
レオンは少し考える。
「ユニって、すごいね」
「今さらですか?」
「うん」
「レオンもだいぶ変わりましたね」
「……そう?」
レオンはユニを見る。
そしてまた少し顔を赤くする。
「……たぶん」
その時だった。
「待って!」
賢者が倒れている男の一人を調べていた。
「こやつ……」
男の腕をめくる。
そこには――
王城の紋章。
「これは……!」
マリが駆け寄る。
「王城の紋章?」
「うむ」
賢者の顔が険しくなる。
「ということは、こやつらは王城の者なのか?」
ロッタが振り返る。
「王城が僕を狙っている?」
「まだ決めつけてはいかん」
賢者は男の懐を探る。
すると一枚の紙が出てきた。
そこには――
『銀髪の少年を発見次第、確保せよ』
と書かれていた。
そして、その下には――
『人魚ユニも同時に保護すること』
「……!」
全員が固まる。
「私も?」
ユニが目を丸くする。
賢者が紙を握りしめる。
「やはりじゃ……」
「先生?」
「王城は、ユニちゃんとロッタを探しておる」
マリが不安そうに尋ねる。
「でも、どうして?」
賢者は答えられない。
その時――。
「……理由なら、少し分かるかもしれない」
レオンが紙を見つめていた。
「この魔力記録」
「何じゃ?」
「王城が追っているのは、単なる人魚と銀の一族じゃない」
レオンは静かに言った。
「二人の魔力が……何かに反応している」
ユニのブレスレット。
ロッタのペンダント。
二つが近づいた瞬間――
青と銀の光が重なった。
「わっ!」
ユニが驚く。
ロッタもペンダントを握る。
すると空中に、一瞬だけ映像が浮かんだ。
――深い海。
――巨大な魔法陣。
――そして、幼いロッタを抱いた誰か。
「……僕?」
ロッタが息を呑む。
映像の人物は、ロッタを誰かに託していた。
そして最後に――
「この子を……銀の一族として生かして……」
声が途切れる。
映像も消えた。
「今の……」
ロッタの顔から血の気が引く。
「僕の……家族?」
ユニがそっと手を握る。
「きっとそうだよ」
その頃。
王城。
一人の騎士が、国王の前に跪いていた。
「申し訳ありません。銀の少年を取り逃がしました」
国王は静かに尋ねる。
「……人魚は?」
「少年と共にいます」
「そうか」
その隣には――。
あの魔力オタクの賢者とは別の、黒いローブの魔法使い。
「陛下」
「何だ?」
「銀の一族が目覚めたのであれば……」
魔法使いが不気味に笑う。
「あの計画を再開できます」
国王はしばらく黙っていた。
そして――。
「まだ早い」
「では?」
「まずは二人を捕らえろ」
「人魚と銀の少年を?」
「違う」
国王は窓の外を見る。
「三人だ」
「三人?」
「人魚、銀の少年――そして」
国王の目が鋭くなる。
「賢者の孫、レオンだ」
その頃、森では。
レオンが突然くしゃみをした。
「……誰か僕の噂してる?」
賢者が笑う。
「お主も有名人になったのう」
「嫌な予感しかしない」
ユニは三人を見回す。
「これから、どうする?」
ロッタが立ち上がった。
「行こう」
「どこへ?」
「僕の家族を探す」
そしてユニを見る。
「それと――」
ペンダントを握る。
「君の故郷、海にもいつか帰ろう」
ユニは笑った。
「うん!」
こうして四人の旅は、新たな目的を抱えて続いていく。
ユニの故郷――海。
ロッタの故郷――銀の一族。
そして――
レオンに隠された、王城が狙う秘密。
三つの謎が、少しずつ一つにつながり始めていた。




