第24話 海からの電話!? 貝殻から聞こえた泣き声
その日の夜。
旅の一行は、森の中で野営をしていた。
ユニは焚き火のそばで、秘密のポシェットを眺めていた。
このポシェットは――ただのポシェットではない。
中が海につながっている。
「そういえば……」
ユニがポシェットを開ける。
中には貝殻や小さな石、海で拾った宝物が入っていた。
そのとき――。
「……ユニ……」
「え?」
どこからか声がした。
「ユニぃぃぃ……!」
「!?」
ユニが慌ててポシェットを覗き込む。
「今、何か聞こえた?」
ロッタも耳を澄ます。
「……確かに声がした」
「海から?」
ユニがポシェットの中を探る。
すると、一枚の大きな貝殻が――
ブルブルブル……
震えていた。
「この貝殻?」
ユニが持ち上げる。
「もしもし?」
『ユニぃぃぃぃぃ!!』
「きゃっ!」
貝殻から突然、大号泣が響き渡った。
『ユニぃぃぃ! どこにいるのぉぉぉ!』
「誰!?」
『わしじゃぁぁぁ!』
「……誰?」
『海の魔法使いじゃぁぁぁぁ!』
ユニは目を丸くした。
「海の魔法使いさん!?」
『そうじゃぁぁぁ!』
「どうして泣いてるの?」
『……寂しいんじゃぁぁぁ!』
「えぇ……」
『ユニを陸へ飛ばしてしまってから……海が静かすぎるんじゃぁぁぁ!』
「……」
『しかもじゃ!』
魔法使いの声がさらに大きくなる。
『ユニを探そうとしたら、わしの魔法まで暴走したんじゃぁぁぁ!』
「また!?」
『貝殻が全部しゃべり始めたんじゃぁぁぁ!』
後ろから別の声。
『魔法使い、泣きすぎ!』
『うるさい!』
『ユニちゃーん! 元気ー?』
『お腹すいてないー?』
『陸って怖くないー?』
貝殻の向こうから、次々と声が聞こえてくる。
ユニの顔がぱっと明るくなった。
「みんな……!」
懐かしい声。
海の仲間たち。
ユニの目に涙が浮かぶ。
「私、元気だよ」
『本当か!?』
「うん!」
『ご飯は!?』
「いっぱい食べてる!」
『足は!?』
「ちゃんとあるよ!」
『足があるのに元気なのか!?』
「うん!」
その様子を見ていたマリは感動していた。
「……なんて素敵な通信魔法」
賢者も目を輝かせる。
「これはすごい……」
レオンまで貝殻を覗き込む。
「ポシェットの中が海につながっている……」
「面白い」
すると貝殻から――。
『そっちに誰かいるのか?』
「え?」
ユニが振り返る。
「みんな、一緒に旅してる人たちだよ」
『男か!?』
ロッタが固まる。
『男が何人いる!?』
「えっと……ロッタと、レオンと……」
『レオン!?』
レオンがびくっとする。
「僕の名前を知ってる?」
『海の魔法使いをなめるなぁぁぁ!』
魔法使いが泣きながら叫ぶ。
『ユニの周りの者は全部把握するぞぉぉぉ!』
賢者が笑う。
「面白い魔法使いじゃのう」
『誰じゃ!』
「ワシは賢者じゃ!」
『賢者!?』
「そうじゃ!」
『ユニを変なことに巻き込んでないじゃろうなぁぁぁ!』
「お主にだけは言われたくない!」
すると、ユニが貝殻を両手で包んだ。
「魔法使いさん」
『……なんじゃ?』
「私、いつか海に帰れるのかな?」
一瞬、貝殻の向こうが静かになった。
『……帰れるとも』
優しい声だった。
『じゃが、今は……』
『陸の世界を見ておいで』
ユニの目が潤む。
「うん!」
『そして――』
魔法使いは鼻をすすった。
『帰ってきたら、全部聞かせてくれ』
「うん!」
『絶対じゃぞ!』
「約束!」
ユニは貝殻を胸に抱いた。
その瞬間――。
ポシェットの奥から青い光が広がった。
賢者が目を見開く。
「……今の魔力」
レオンも静かに呟く。
「海と陸が……つながった?」
そしてポシェットの奥から、最後に小さな声が聞こえた。
『ユニ――』
「なに?」
『……気をつけるんじゃ』
「え?」
『お前をこちらへ飛ばした、あの魔法暴走……』
魔法使いの声が震える。
『まだ終わっておらんかもしれん』
――その瞬間。
貝殻の声が途切れた。
「魔法使いさん?」
返事はない。
「もしもし?」
静寂。
ユニは貝殻を握りしめる。
「……何だったんだろう」
賢者は険しい顔をしていた。
「これは……少し急いだほうがよさそうじゃな」
旅は、ただの異世界放浪ではなくなり始めていた。




