第23話 ユニ様のパンは宝物! そして席取り大戦争!
森の中。
旅の途中で休憩することになったユニたち。
「みんな、お腹すいた?」
ユニが荷物からパンを取り出す。
「宿屋のおばさんが持たせてくれたの!」
「「ユニちゃんから!?」」
賢者とマリの目が輝いた。
ユニは一人ずつパンを配っていく。
「はい、マリさん」
「……!」
マリはパンを受け取った瞬間、固まった。
「ユニ様から……直接……」
「うん」
「ありがとうございます……!」
マリはパンを胸元に抱えた。
そして――こっそり後ろを向く。
「まずは……保存魔法」
パァァ……。
「腐敗防止」
パァァ……。
「防御魔法」
パァァ……。
「防水!」
パァァ……。
「防カビ!」
パァァ……。
「盗難防止!」
パァァ……。
さらに魔法を重ねていく。
「完璧……!」
小箱にパンをしまい、満足そうに微笑む。
「ユニ様からいただいたパン……」
箱を抱きしめる。
「宝物でーす!」
「……マリ」
「はい?」
振り返ると――。
ユニ、ロッタ、レオン、賢者。
全員が見ていた。
「いつから……?」
ロッタが答える。
「最初から」
「……」
マリは何事もなかったように箱をしまった。
「何もしてません」
「いや、しておったじゃろ!」
賢者が叫ぶ。
「パンに何重の魔法をかけておるんじゃ!」
「宝物ですから!」
すると賢者がユニの前へ。
「ユニちゃん」
「はい?」
「ワシにもパンを」
「どうぞ!」
賢者はパンを受け取る。
「……」
そしてニヤリ。
「保存魔法!」
パァァ!
「防御魔法!」
パァァ!
「永久保存!」
パァァ!
マリが叫ぶ。
「先生! 真似しないでください!」
「真似ではない! ワシも家宝にするんじゃ!」
「パンですよ!?」
「ユニちゃんからもらったパンじゃぞ!」
二人はそれぞれ箱を抱える。
「ワシの家宝!」
「私の宝物!」
「これは食べん!」
「絶対食べません!」
ユニが困った顔。
「パンなのに……」
そして始まった、もう一つの戦い
休憩を終え、ユニが大きな木の下へ座ろうとした。
「ここ、涼しいね」
「では――」
賢者がユニの隣へ素早く座る。
「ワシはここじゃ」
「先生!」
マリが反対側へ滑り込む。
「ユニ様の隣は私です!」
「何を言う! 先に座ったワシの勝ちじゃ!」
「そんなルールありません!」
「今作った!」
「ずるいです!」
二人がユニの左右を取り合う。
「えっと……」
ユニが困っていると――。
レオンが無言でユニの前に座った。
「……」
賢者とマリが止まる。
「レオン?」
「ここならいいでしょ」
「お主……」
マリがじっと見る。
「まさか……」
「何?」
「ユニ様の正面の特等席を……」
「別に」
レオンは平静を装う。
しかしユニが、
「レオン、こっちに来る?」
「……!」
レオンの耳が一瞬で赤くなる。
「い、いや……ここでいい!」
「顔、赤いよ?」
「暑いだけ!」
ロッタが空を見上げる。
「今日は涼しいけど……」
「……」
レオン、完全沈黙。
マリがニヤリ。
「レオンも、だいぶ重症ですね」
「うるさい」
ユニが笑う。
「みんな、面白いね」
「「「……」」」
三人とも固まる。
賢者が小声で言う。
「……笑った」
マリも小声。
「笑いましたね……」
レオンは顔を逸らす。
「……反則だろ」
「何が?」
「何でもない!」
またしても挙動不審。
その後も、
「ユニちゃん、こっちじゃ!」
「ユニ様、こちらです!」
「……僕の隣、空いてるけど」
「レオン!?」
「お主まで!」
ユニの隣の席をめぐって大騒ぎ。
結局――。
ユニが真ん中。
右にロッタ。
左にマリ。
向かいにレオン。
そして少し離れたところで賢者。
「……」
賢者が不満そうに呟く。
「ワシだけ遠い……」
「先生、家宝のパンでも眺めててください」
「そうする……」
箱を開ける賢者。
「……ふふ」
マリも箱を開ける。
「……ふふふ」
二人でパンを眺める。
ユニはそれを見て笑った。
「明日もパン、あげるね」
「「本当ですか!?」」
賢者とマリが同時に立ち上がる。
その勢いで――。
ドン!
二人の頭がぶつかった。
「痛い!」
「先生!」
レオンが呆れた顔で呟く。
「……この旅、大丈夫かな」
ユニは笑う。
「きっと大丈夫!」
こうして旅は続いていく。
パン争奪戦に、席取り戦争。
そしてレオンの挙動不審は――ますますひどくなっていくのだった。




