第22話 人魚様を前に、三人そろって大暴走!?
町の入口。
ユニとロッタが旅立とうとしていると――。
「ユニちゃーーーん!!」
「人魚様ーーー!!」
聞き覚えのありすぎる声が響いた。
「……来た」
ロッタが遠い目をする。
駆けてきたのは、賢者とマリ。
そして、その後ろにはレオン。
「やっと会えたぞーーー!」
賢者はユニを見つけた瞬間、目を輝かせた。
「ユニちゃん! 元気じゃったか!」
「はい!」
「食事は!?」
「ちゃんと食べてます」
「睡眠は!?」
「寝てます」
「魔力は!?」
「……普通?」
「素晴らしい!」
賢者は感動している。
「今日も元気で可愛い!」
「先生、近いです!」
マリも負けていない。
「人魚様……!」
ユニの周りをぐるぐる。
「青い髪……完璧」
「瞳も……完璧」
「歩き方まで……!」
「マリさん?」
「尊い……!」
マリは眼鏡を曇らせながら両手を合わせる。
「先生、見ました!?」
「見たとも!」
「今日も素晴らしいです!」
「うむ!」
二人は完全に盛り上がっている。
ロッタがぼそっと言った。
「……この二人、ユニのことになると本当に変になる」
その頃。
レオンは――。
「…………」
完全に停止していた。
「レオン?」
賢者が振り返る。
「どうした?」
「……」
レオンはユニを見る。
目が合う。
「!」
すぐに逸らす。
ユニが笑う。
「こんにちは」
「こ、こんにちは!」
声が裏返った。
「……」
賢者とマリが同時に振り返る。
「……」
「……」
二人の顔に、ニヤニヤした笑みが浮かぶ。
「何?」
レオンが警戒する。
マリが近づく。
「レオン」
「何?」
「耳、赤いですよ」
「暑いだけ」
「今日は涼しいです」
「……」
賢者が追い打ち。
「お主、ユニちゃんを見た瞬間から五回も髪を触っておるぞ」
「!」
レオンが慌てて手を下ろす。
「そんなに?」
「七回目です」
マリが即答。
「数えてたの!?」
「当然です」
レオンはますます挙動不審になる。
「僕は別に……」
「別に?」
「……」
ユニが近づく。
「レオンさん?」
「はい!」
「どうしてそんなに離れるの?」
「……近いと、落ち着かない」
「え?」
「いや、何でもない!」
レオン、後退。
木にぶつかる。
ゴン!
「痛っ!」
「大丈夫!?」
ユニが心配して近づく。
「だ、大丈夫!」
さらに後退。
今度は石につまずく。
「うわっ!」
「レオン!」
ユニが腕を掴んで支える。
「ありがとう」
「……」
レオン、完全停止。
「……」
「レオン?」
「……手」
「え?」
「その……手、ありがとう」
顔が真っ赤。
マリが小声で賢者に言う。
「先生」
「うむ」
「重症です」
「うむ」
「かなり重症です」
「うむ!」
二人とも楽しそう。
ところが賢者が突然、真剣な顔になった。
「待て……」
「どうしました?」
「これは重大な研究結果じゃ」
賢者はレオンを観察する。
「世界中の何にも興味を示さなかった天才レオンが――」
ユニを見る。
「人魚ちゃん一人で、ここまで挙動不審になる」
マリも頷く。
「私も最初はそうでした」
「ワシもじゃ」
「……」
ロッタが引く。
「二人とも自覚あるんだ……」
賢者は拳を握る。
「これは絶対に偶然ではない!」
「先生、研究しましょう!」
「もちろんじゃ!」
「ユニ様を観察しましょう!」
「魔力も測定じゃ!」
「髪の輝きも記録します!」
「笑顔の回数もじゃ!」
「先生、それ研究ですか?」
「研究じゃ!」
「絶対違うと思う……」
その間にも、レオンはユニから目を逸らしている。
「レオン」
「……何?」
「一緒に旅する?」
「……」
レオンはしばらく黙る。
そして、小さく頷いた。
「うん」
「嬉しい!」
ユニが笑う。
「よろしくね!」
「……よろしく」
また顔が赤くなる。
賢者とマリが同時に叫んだ。
「かわいい反応じゃーーー!」
「レオンが完全に人魚様にやられていますーーー!」
「二人とも黙って!」
レオンの叫び声が町中に響いた。
こうして――。
人魚様への情熱が異常な師匠と弟子。
そして――
ユニを前にすると挙動不審になる天才レオン。
三人の珍妙な旅仲間が揃った。
だがユニはまだ知らない。
この三人がこれから、
「ユニの隣に誰が座るか」
だけで本気の争いを始めることを……。




