第15話 初めての宿屋アルバイト! ユニ、宿屋のアイドルになる
「……お金がない」
宿屋の入口で、ユニは小さな財布を覗き込んでいた。
中身は、ほとんど空っぽ。
ロッタも困った顔をする。
「このままだと、今日泊まるところもないね」
「どうしよう……」
ユニはしょんぼり。
すると、宿屋のおばさんが二人を見て声をかけた。
「どうしたんだい?」
ロッタが事情を話す。
「僕たち、旅をしていて……でも、宿代が足りなくて」
「そうかい」
おばさんは二人をじっと見る。
そして――
「だったら、働けばいいじゃない」
「働く?」
ユニが首を傾げる。
「そう。うちで働いてくれたら、その分を宿代から引いてあげるよ」
「本当に?」
「もちろん」
ユニの顔がぱっと明るくなる。
「やります!」
ロッタも頷く。
「僕も手伝います」
「よし、決まりだね!」
こうして二人の初めての宿屋アルバイトが始まった。
初めての洗濯
「まずはベッドカバーを洗っておくれ」
「ベッド……カバー?」
ユニは大きな布を抱える。
「これ、どうするの?」
「水につけて洗うんだよ」
「水!」
ユニの目が輝いた。
「水なら得意!」
おばさんは笑う。
「そりゃそうだね。でも、普通に洗うんだよ」
ユニは桶の水に布を入れる。
ジャブジャブ。
「こう?」
「そうそう」
ユニは楽しそうに洗う。
ところが――。
「ユニ、力入れすぎ!」
バシャーン!
水が盛大に飛び散った。
「きゃっ!」
「ははは!」
ロッタも笑う。
「海の中で泳ぐみたいに洗わないで!」
「難しい……」
ユニは真剣に布を見つめる。
ベッドメイキング
次はベッド。
ユニはシーツを持って、
「えいっ!」
バサッ!
シーツがユニの頭にかぶさった。
「ユニ?」
「……見えない」
ロッタが吹き出す。
「ふふっ……!」
「笑わないで!」
おばさんまで笑っている。
「こんな面白い子、久しぶりだよ」
お手伝い
昼になると、二人は食堂のお手伝い。
ユニは料理を運ぶ。
「お待たせしました!」
「ありがとう、お嬢ちゃん」
「はい!」
お客さんたちはユニを見るたびに笑顔になる。
「可愛い子だねぇ」
「どこから来たんだい?」
「海です!」
「……海?」
「はい!」
ロッタが慌てて割って入る。
「遠いところです!」
「そうかい」
ユニは不思議そうな顔。
「どうして隠すの?」
「あとで説明するよ」
夕方。
宿屋のおばさんが、客室から戻ってきた。
「ユニちゃん!」
「はい!」
「ちょっとこっちへおいで」
「?」
おばさんは嬉しそうに笑う。
「お客さんたちがね、みんな言ってるよ」
「何を?」
「あの可愛い女の子にまた会いたいって」
「え?」
ユニは目を丸くする。
「この宿の看板娘になってくれないかい?」
「看板……娘?」
ロッタが笑う。
「宿屋のアイドルだよ」
「アイドル!」
ユニの目が輝く。
「私、アイドルになったの?」
「そういうこと」
「すごい!」
ユニは嬉しそうに笑った。
その笑顔を見たお客さんたちも笑う。
「ほら、また笑った!」
「可愛いねぇ」
「明日も泊まろうかな」
おばさんは満足そうに頷く。
「この宿、しばらく繁盛しそうだね」
その夜。
初めて自分で働いて得たお金を見つめるユニ。
「働いたら、お金がもらえるんだ……」
「そうだよ」
「じゃあ、これでパンも買える?」
「買えるよ」
ユニは嬉しそうに笑った。
「私、もっと働きたい!」
ロッタも笑う。
「明日はもっと忙しくなるかもね」
二人は知らなかった。
翌朝――。
宿の前に、
「ユニちゃんに会いたい!」
というお客さんが並ぶことになるとは。
そしてその中には――
「……ユニ様……!」
遠くから眼鏡をキラリと光らせる、あの少女の姿も……?




