第14話 覗き見鏡、まさかの大惨事!
王城へ連れ戻された賢者とマリ。
しかし――。
二人とも、全く反省していなかった。
「ユニちゃん……今頃どこを旅しておるのじゃろう」
「人魚様……」
二人は窓の外を眺めてため息。
「会いたい……」
「会いたいです……」
「ワシはもう一度、あの魔力を観測したい!」
「私はもう一度、人魚様のお姿を……」
二人の目が合う。
「……作るか」
「……作りましょう」
こうして王城の研究室で、本来なら国家レベルの研究に使うはずの頭脳と魔力が、とんでもない方向へ使われることになった。
数時間後。
「完成じゃ!」
「できました!」
机の上に置かれていたのは、不思議な銀色の鏡。
「名付けて――」
賢者が胸を張る。
「遠見のぞき鏡!」
「名前がそのまますぎます」
鏡には魔力を流すと、遠くにいる人物の姿を映し出す力があった。
「さあ、ユニちゃんを……」
賢者が魔力を込める。
鏡が光る。
そして――。
「あっ!」
映ったのは、旅をするユニ。
花を見つけて嬉しそうにしている。
「ユニ様……!」
マリの目が輝く。
「なんと美しい……!」
「うむ……!」
二人とも鏡に顔を近づける。
「今日も元気そうじゃ」
「人魚様……」
気づけば二人とも、
よだれを垂らしながら夢中で覗いていた。
「ユニちゃんが笑った!」
「笑いました!」
「今の表情をもう一度!」
「先生、鏡を少しこちらへ!」
「嫌じゃ!」
「私のです!」
「ワシが作ったんじゃ!」
「私も手伝いました!」
「ほんの少しじゃろ!」
「重要な部分を担当しました!」
「何を担当した?」
「……魔力を込めました」
「それだけじゃ!」
「十分です!」
鏡を取り合う二人。
「貸してください!」
「嫌じゃ!」
「人魚様が見えません!」
「ワシだって見たい!」
「先生!」
「マリ!」
ぐいっ。
「離してください!」
「お主が離せ!」
ぐいぐい――。
そして。
パリンッ!!
静寂。
床に落ちた鏡の破片。
「…………」
「…………」
二人は固まった。
賢者が震える声で呟く。
「……ワシの最高傑作が……」
マリも真っ青。
「人魚様が……」
二人は鏡の残骸を見つめる。
まるで――
世界が終わったかのような顔。
「もう……ユニちゃんが見られん……」
「私の……人魚様……」
二人は床に崩れ落ちる。
「終わった……」
「終わりました……」
しばらく沈黙。
すると――。
マリが顔を上げた。
「先生」
「……なんじゃ」
「会いに行けばいいのでは?」
「…………」
賢者の目が輝いた。
「それじゃ!」
「行きましょう!」
「今度はばれんように!」
「もっと早く走るんじゃ!」
「脚力も三倍がけの魔法を!」
「私にもかけるように!」
「ワシはやっぱり10倍じゃ!」
「それはやりすぎです!」
二人は立ち上がった。
「そして――」
賢者が拳を握る。
「脱走じゃ!」
「はい!」
「今度こそユニちゃんに会う!」
「人魚様に会います!」
二人は顔を見合わせる。
そして――。
「脱走計画その二、開始じゃ!」
王城の研究室で、またしても二人の悪巧みが始まった。
しかし、二人はまだ知らない。
今度の脱走計画が――
王城史上最大の騒動になることを。




