第13話 マリ、ついに人魚様と出会う!
森を抜けた先。
ユニとロッタは、小さな湖のほとりで休憩していた。
「綺麗……」
ユニは湖を覗き込む。
水面に青い髪が映る。
海しか知らなかったユニにとって、陸の湖も不思議な場所だった。
「海とは違うけど、ここも好き」
「じゃあ、少し休もうか」
ロッタが荷物を下ろした。
その頃――。
「先生、まだ歩くんですか……」
マリは疲れ切っていた。
「もう少しじゃ!」
「もう三時間歩いてます……」
「あと少し!」
「その『あと少し』が長いんですよ……」
マリはぶつぶつ言いながら歩いていた。
そして――。
湖が見えた。
「……あれ?」
マリが足を止める。
湖のほとりに、青い髪の少女がいる。
風が吹く。
青い髪がふわりと揺れる。
湖面がキラキラと輝く。
「…………」
マリの動きが完全に止まった。
「どうした?」
賢者が振り返る。
「先生……」
「なんじゃ?」
マリは眼鏡を押し上げる。
「……あの方ですか?」
「ああ!」
賢者が嬉しそうに頷く。
「あれがユニちゃんじゃ!」
次の瞬間――。
マリの世界が止まった。
「…………」
「マリ?」
「…………美しい」
「ん?」
「なんて……」
マリは震えながら一歩ずつ近づく。
「なんて美しい人魚様……!」
「人魚様?」
賢者が首を傾げる。
マリの目がキラキラ輝く。
「私の……」
「?」
「私の人魚様です!」
「おい」
マリはユニの前まで走っていった。
「人魚様!」
「え?」
突然、目の前に知らない女の子。
ユニがびっくりする。
「あなた、誰?」
マリは両手を胸の前で組む。
「私はマリ!」
そして深々と頭を下げる。
「今日からあなた様をお慕い申し上げます!」
「……?」
ユニは完全に困惑。
「お慕い……?」
「はい!」
「どうして?」
「一目見て分かりました!」
マリは真剣な顔。
「あなた様は、私が探し求めていた存在です!」
「……?」
ロッタが警戒する。
「ユニ、この人ちょっと変かも」
「失礼ですよ!」
マリが振り返る。
「あなたはユニ様の何ですか!」
「……友達」
「ならば私も友達になります!」
「決めるの早すぎない?」
賢者は腹を抱えて笑っていた。
「はっはっは!」
「先生、笑ってないでください!」
「いやあ、予想以上じゃ!」
ところが――。
「賢者様ーー!!」
遠くから声が響いた。
王城の騎士たちだった。
「見つけましたよ!」
「げっ」
賢者の顔が曇る。
「マリも一緒ですね!」
「……」
マリがユニの隣に立つ。
「私は帰りません」
「帰ります」
「嫌です!」
「王城へ戻ります!」
「嫌です!」
マリはユニの腕をそっと掴む。
「私は人魚様と旅をするのです!」
「マリ!」
騎士が抱き上げる。
「離してください!」
「嫌です!」
「人魚様ーー!」
ズルズルズル……。
マリは騎士に連れていかれていく。
「人魚様! 必ず迎えに行きます!」
「えっ、うん……?」
ユニは呆然。
賢者も騎士に捕まる。
「ワシも旅をするんじゃ!」
「帰ります!」
「嫌じゃーー!」
二人はそのまま王城へ連行されていった。
湖畔に残されたユニとロッタ。
「……変な人だったね」
「うん」
ユニは少し考える。
「でも……悪い人じゃなさそう」
「そうだね」
二人は笑った。
そして遠くから――。
「人魚様ーーーー!!」
マリの声が響いた。
ユニは思わず笑ってしまった。
「また会えるかな?」
ロッタは苦笑する。
「たぶん……あの人、絶対また来るよ」
こうしてユニには、強烈すぎる「人魚様信者」が一人増えた。




