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第12話 「ワシと一緒に来い!」賢者と弟子マリ

王城の魔法研究室。

賢者のおじいさんは、机いっぱいに広げた資料を眺めていた。

「うむ……やはり気になる」

頭の中に浮かぶのは、先日出会った不思議な少女――ユニ。

人魚。

異世界からの転移。

そして、謎の魔力。

「もう一度、あの子を観測したい……!」

賢者は立ち上がった。

「決めたぞ!」

「何をですか?」

部屋の隅から、面倒くさそうな声が返ってきた。

そこにいたのは、一人の少女。

大きな、びんぞこ眼鏡。

ぼさっとした髪。

机の上には大量の本。

彼女の名前は――マリ。

賢者の弟子だった。

「マリ!」

「はい……」

「旅に出るぞ!」

「嫌です」

即答。

「まだ何も言っておらんぞ!」

「先生がその顔をすると、ろくなことにならないので」

「なんじゃ、その判断は!」

マリは本から顔を上げない。

「私は研究室で本を読んでいたいです」

「ダメじゃ!」

「なぜです?」

賢者はユニの魔力測定記録を机に叩きつけた。

「この魔力を調べに行く!」

「先生一人でどうぞ」

「お主も来るんじゃ!」

「嫌です」

「弟子じゃろ!」

「弟子だからこそ、先生が帰ってくるまで研究室を守ります」

「屁理屈じゃ!」

賢者はマリの荷物を勝手にまとめ始めた。

「ちょっと!」

「魔法書!」

「いりません!」

「杖!」

「持ってます!」

「着替え!」

「自分でやります!」

「よし、全部入った!」

「人の話を聞いてください!」

賢者はマリのバッグを背負わせる。

「さあ行くぞ!」

「行きません!」

「行く!」

「嫌です!」

「行くったら行く!」

「先生、子どもじゃないんですから……」

マリは深いため息をついた。

「そもそも、そのユニさんという人に会ったこともないんですよ?」

「だから会いに行くんじゃ!」

「興味ありません」

「嘘じゃ!」

「本当です」

「絶対に面白いぞ!」

「……」

マリが少しだけ顔を上げる。

「どれくらい?」

「とんでもなく!」

「……」

「人魚じゃぞ?」

「…………」

「異世界から来たんじゃぞ?」

「………………」

マリの目が、ほんの少し輝いた。

「……魔力は?」

「ものすごい!」

「……」

マリは静かに立ち上がった。

「行きます」

「最初からそう言えばよい!」

「先生」

「なんじゃ?」

「でも、歩くの面倒です」

「……」

賢者は頭を抱えた。

「お主、本当に面倒くさがりじゃな……」

「褒め言葉ですか?」

「違う!」

こうして、半ば強引に旅支度をさせられたマリ。

二人は王城を出発することになった。

しかし――。

マリはまだユニに会ったことがない。

そのため、ユニがどんな少女なのかも知らない。

ただ一つ。

「先生」

「なんじゃ?」

「そのユニさんって……本当にそんなに珍しいんですか?」

賢者は満面の笑みを浮かべた。

「珍しいなんてもんじゃない!」

「……ちょっとだけ興味が出てきました」

「よし!」

二人の旅が始まる。

そして、まだ見ぬユニを追いかける中で――

マリの人生も、大きく変わっていくことになる。

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