第11話 魔力オタク賢者、旅について行きたい!
森に静けさが戻った。
ロッタはいつもの黒い髪に戻り、何が起きたのか分からないままユニの隣に座っている。
そして――。
「……決めた!」
突然、賢者のおじいさんが叫んだ。
「ワシも旅についていく!」
「え?」
ユニとロッタが同時に振り向く。
賢者は杖を握りしめ、目を輝かせている。
「こんな面白い魔力を目の前にして、王城へ帰れるものか!」
「賢者様!」
王城の騎士が慌てる。
「任務はユニ様を連れて帰ることです!」
「そんなものは後じゃ!」
「後じゃありません!」
「ワシは研究する!」
賢者はユニの周りをぐるぐる回る。
「海の魔力!」
「異世界転移!」
「人魚!」
「足への変化!」
「そして謎!」
「……なんで謎?」
ユニが驚く。
「魔力を観測しておれば分かる!」
賢者の目がキラキラしている。
「素晴らしい! こんな研究対象……いや、こんな可愛い子を見つけたのは何十年ぶりじゃ!」
「研究対象って言った……」
ロッタが警戒する。
「失礼な! ワシはユニちゃんを気に入ったんじゃ!」
賢者はユニの肩に手を置く。
「今日からワシの孫にならんか?」
「おじいちゃん?」
「そうじゃ!」
「……」
ユニは少し考える。
「おじいちゃん……?」
「そう!」
「なんか嬉しい!」
「決まりじゃ!」
「決まってないです!」
騎士たちが一斉に突っ込む。
賢者はユニの手を取った。
「さあ、ワシも旅に――」
「帰りますよ!」
「嫌じゃ!」
「王城に戻ります!」
「嫌じゃーー!」
賢者は地面に座り込んだ。
「ワシも行く!」
「ダメです!」
「ユニちゃんと旅する!」
「ダメです!」
「ロッタ君の銀の力も研究する!」
「なおさらダメです!」
「嫌じゃーー!」
とうとう騎士二人が賢者の両腕を抱えた。
「離せーー!」
ズルズルズル……。
「ユニちゃーーん!」
「おじいちゃん!」
「ワシの孫になってくれーー!」
「賢者様! いい加減にしてください!」
「また会おうぞーー!」
賢者は引きずられながら、森の向こうへ消えていった。
ユニとロッタは呆然。
「……変なおじいちゃんだったね」
「うん」
「でも、面白かった」
「ユニ、気に入られてたね」
そのとき――。
遠くから、
「そうじゃった!」
賢者が叫んだ。
「これを渡すのを忘れておった!」
騎士に引きずられながら、賢者は懐から小さな箱を取り出した。
「ユニちゃん!」
「はい!」
「これを!」
箱が投げられる。
ユニが受け取る。
中には――
美しい青いブレスレット。
小さな宝石が一つ埋め込まれている。
「きれい……」
「昔から家に伝わるブレスレットじゃ!」
遠くから賢者が叫ぶ。
「そして――」
ニヤッと笑う。
「ワシから孫へのプレゼントじゃ!」
「ありがとう!」
ユニが嬉しそうに手を振る。
「大切にするね!」
賢者は満足そうに笑った。
「それでいい!」
そして騎士たちに連れられながら、
「絶対また会おうぞーー!」
森に声が響き渡った。
ユニはブレスレットを眺める。
すると――。
青い宝石が、ほんの一瞬だけ光った。
ロッタのペンダントも――
同時に淡く光る。
「……?」
二人はまだ気づいていない。
この二つの光が、後に大きな秘密へと繋がっていくことを。




