「死刑の判決を絶対に許さないぞー!!!」
少年鑑別所の近くに住んでいると奇声が聞こえてくることがある。
いつもは「フウッー↑↑」といった軽い奇声だが、今回は、「死刑の判決を絶対に許さないぞー!!!」という意志のある奇声だ。
朝の10時頃から11時42分まで。
何度も繰り返し、聞こえた。
鑑別所を囲む高い壁があるとは言え、やや不気味と言える。
「死刑の判決を許さない」と言っているわけだから、実際に死刑の判決を受けたのか。それとも、死刑になるような事をしたのか。
鑑別所に入るのは未成年であるから、死刑の判決を受けることは無いと考えられる。
したがって、「死刑になるような事をした少年」、あるいは「『死刑になるかもしれない』という自責の念がある少年」と考えるのが妥当かもしれない。
少年鑑別所のような正義の場所がたまらなく好きで、ここに引っ越して、もう数年経つが、新聞やニュースをみる限りでは、大きな事件はなかったと記憶している。
――そうなると、「自責の念がある少年」という説が妥当性を強める。
それにしても⋯⋯夜中、バイクの音で目が覚め、壁の下に止まった原付バイクと壁の中に向かって名前を呼ぶ人間を見ると、水族館の触れ合いコーナーを思い出す。
幼い私よりさらに小さな生物、かつ低い場所に展示された命を見て、「私が命を握っている事実」で胸がいっぱいになった。
今もまったく同じ気持ちだ。
私は電話を手に取り、今日も110番を押す。




