78 戦況一変!
「…もーのすんごいな…。自分でやっておいてあれなんだが…」
「…でも…上手くいったのね!」
「まぁな…!」
俺たち二人は爆発の方を見ながら…作戦の成功を喜んだ…。正直…半信半疑なとこもあったが、やったぜ!
んで…いったい何をしたか…なわけだが…。
「ティナの魔法…『エリクシルン』…。そんで…レイヴォルトからあらかじめ貰ってた罠アイテムの『追跡爆弾』のコンボ…。ゲームではよく使ってたなぁ…」
そう…。俺がワンスラでよく使ってた戦術をここでも使ってみたわけだ!それぞれの説明をするとだな…
『エリクシルン』
自動回復作用…及び位置情報付与の低級魔法。
使用者の周囲100メートル範囲内のプレイヤーに影響を与える。
この魔法にかかった者は、全HPの1/100を5秒ごとに回復する。
さらに、魔法にかかったプレイヤー間でそれぞれの位置を把握することができる。
なお、この効果は1分間とする。
『追跡爆弾』
罠アイテム。
このアイテムを他プレイヤーに使った場合追跡し、爆発した瞬間大ダメージを与える。
ダメージの総量は対象プレイヤーのレベルに応じて変化。
なお、対象プレイヤーの位置を把握することができない場合、もしくは着弾する前に位置を見失った場合は自爆する。
なんつーか…どっちも使い勝手がいまいちなやつばかりなんだなー…。
『エリクシルン』は回復量があり得ないほど少ない。
『追跡爆弾』は条件を満たさなければ攻撃として使えない…。
俺も最初はそんな風に考えていた…。んでも…ゲームを進めていくうちにどう扱えばいいのかわかってきたわけだ!
まず…『エリクシルン』の効果のひとつ…位置情報付与。
本来は味方同士で回復…そして連携できるように、お互いの位置を把握するのが目的の魔法だが…。実はこの魔法の効果は味方だけでなく、敵プレイヤーにも発動する。
敵プレイヤーの位置がわかれば、どれほど上手く隠れようが無意味。もちろん相手もだが、魔法をかけるタイミングがわかってる分こっちに有利だ。
そんで…このタイミングで『追跡爆弾』を使用!相手の位置がわかるから、いかなる戦闘状況でも確実に爆弾をぶつけることができる!
しかも…『エリクシルン』の回復量は極小…。そして制限時間は1分…。爆発する頃には魔法の効力も消えて、大ダメージが狙えるのだ!
…つー作戦を実行して…バルコスに一矢報いたわけだ!
バルコスの動きは相当な速さだったが、俺たちから付かず離れず…の移動をしていたのが幸いだったな…。
警戒して…大分離れていたら作戦は上手くいかなかったかもしれねぇ…。
「…よし!ティナ!グータッチだ!」
「…なんなのね…それ…」
「上手くいったときに拳と拳を軽くタッチする…ちょっとした喜びの儀式みてぇなもんだ!」
「…ふぅ…ワケわかんないのね…。でも…まぁ…ティーとしても別に構わないのね…」
ティナは小さな拳をギュッ…と握り締めて俺の前に…。俺はしゃがみこんで同じように拳を作り…
コツン…
無事…グータッチしたわけだ。こーいうチームプレイを現実世界でしたことなかったし…なんか気分がいいぜ…!相手は幼女だけど…。
そうしていると…
「ひひっ…とんだ爆弾寄越しましたねぇ…。やっぱり…キツイ…ですかねぇ…」
ザッ…!
土煙舞う中…その中心からヒョロッとした体が起き上がる…。その姿は細かい砂が邪魔で見えにくいが…やがて風ですべて取り払われると…
ポタッ…タラァァ…
「ひっ…!さすがに…無傷とはいかないもんですねぇ…」
おぉ…相当なダメージをバルコスも負ったみたいだ…。額から赤い血が少し流れてるし…体の所々も傷が目立っている…。
『追跡爆弾』の威力は敵プレイヤーの実力によって上下するから、一撃必殺…とはいかないのは当然…。
…というか…俺としてはそんなヤバイのはできるだけ使いたくないんだよなぁ…。自分が危険な目に遭うかもしれねぇし…殺すのも躊躇っちまうし…。
俺も…まだまだ甘い…な…。
「…さて…こっちもこれ以上舐められるといけねぇですねぇ…。ダメージも…それなりに効いてますしねぇ…ひひっ!」
来る!
バルコスのやつ…でけぇ大鎌構えて何か仕掛けてきそうだ!
「ティナ!気を付けろ!あいつ…なんかしてくるぞ!」
「ふん!そんなのわかってるのね!」
俺たちはすぐに臨戦態勢を整えると、バルコスがどんな動きをしてもいいように注視した…。
多分…大鎌を使っての斬撃があいつの攻撃スタイル…。武器の動かし方に気を付ければ…こっちにも勝機は…
…ブシュッ…!!
「…っっ!!?」
「…!ティナ!」
その時…横にいたティナの横腹から赤い滴が吹き出した…。着ている衣服に紅の染みが広がり…
「うっ…くっ…!」
フラッ…
「おい!しっかりしろ!」
ガシッ…ギュッ…!
そのまま倒れそうになったティナを俺はすぐに抱き締める…。見た感じ…傷は致命傷…という感じじゃねぇ…。だが…このまま戦うのは…!
「ひっ…!やっと届きましたかねぇ…」
「バルコス!てめぇ…!」
「いやぁ…ね…。位置情報付与の魔法を使われたのに気付くのが遅れまして…。ですが…爆発する瞬間にあんたたちの位置がわかりました…。土煙が舞っている間に…こっちも斬撃を飛ばしたんですよ…」
「なっ!…でも…!」
「まぁ…あんたたちに気づかれないように低威力の斬撃を…ゆっくり飛ばしたんですよ…。慎重にしてましてね…」
くそっ!作戦が上手くいったと思った油断が…ティナにダメージを与えちまった…!まさか…こっちの策を逆利用されるなんて…!
「ティナ!俺の影に入ってろ!とにかく…体力を回復してくれ!」
「…わかって…るのね…!」
ススッ…
ティナは息も絶え絶えに…俺の影の中に入っていった…。すぐに戦線復帰は無理だろう…。ここからは俺と…バルコスのタイマン勝負…!
やってやる…!
ティナのためにも…レイヴォルトのためにも…。そんで…ボロボロになったクリスと会うためにも…!
俺には…逃げる選択なんてできねぇんだから!




