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68 一縷の可能性

 ズババババババ…!


 ダッダッダッダッ…!



「オラァァァァ!!一気に走り抜けるぞぉぉぉ!!」


「ちょっと!しっかり走るのね!魔法がうまく発動できないのね!」


「無茶言うな!これでも炎に当たらねぇようにギリギリだ!」


 ホホゥとの追いかけっこをして数十分…。俺たちは相変わらず走りっぱなし…。さすがに俺の体力も限界が近づいてきたか…?だが…立ち止まれば終わりだからな!やるだけやるさ!


 ティナも魔法を抑制された状態でよく頑張ってる…。どんな顔してっかはわかんねぇが、相当疲れてんだろうな…。


 対するホホゥは…


「ホホゥ…!ここまで逃げ切るとは…しかもこの炎の中…かなりめんどくさいんだホホゥ!」


 あの野郎もそこそこ疲労が溜まってるようだ…。攻撃の手は緩めてないが、もしかしたらバテてくれるかも…。


 …いや!そんな楽観的な考えは止めなきゃな!お互いに厳しい状態だが…油断は絶対にしねぇ!


 …こんな業火の中だってのに俺も冷静だな…。死ぬかもしんねぇのに…。右も左も後ろも危険だらけ…。ただ走るしかできねぇ状況…。こりゃ…一気に駆け抜けねぇとな!


「…って…うぉっ!?なんか…火の粉が飛んできたぁ!?大分広がってきたかぁ!?」


「無駄口叩かないで…走るのね!」


「ちょっ…俺も頑張ってるっての!」


 気がつけば…火の勢いが予想よりもでかく…恐ろしいことに…。こいつはスゴいな…。一応ここは極寒の世界なのにそんなことも忘れそうだ…。


 …くっそー…。レイヴォルトはまだかよ…。こんな大火事見たらすぐにすっ飛んでくるかもと思ったんだが…。


 最悪…ホホゥと戦うことも考えるべきか?今の俺たちには体力的にも余裕はない…。真っ向勝負はあまり得策じゃない気も…。



 ビシュッ…!シュバッ…!バシュッ!



「おわぁぁぁ!?顔に傷が…!あの野郎…斬擊飛ばしすぎだろ!?」


 くっ…体力もギリギリ…。このままヤられちまうのか…?


 そんな俺の焦燥の裏で…影の中にいるティナが一言呟いた…。


「あのモンスター…相当焦っているようなのね…」


「あっ…焦ってる?」


「このまま追いかけっこしていればこっちが不利なのね…。なのに…ここに来て攻撃の手数を増やして…少し変なのね…」


「そっ…そうかぁ?…まぁ…気になるけどよ…」


 ふーむ…。確かに突然攻撃の手が激しくなったというか…。あいつも体力を温存してるかと思ったんだがなぁ…。


 …待てよ…


 ゲアオゥルは確か寒い地域で生息するモンスター…。当然…気温の大幅な落差についていけない弱点がある…。特にここら一帯は炎でものすごい熱気がバンバン襲ってくる…。


 そう考えると…もしかしたら!


「…ティナ!わりぃけど…ここで迎え撃つぞ!」


「なっ…!アホなのね!あいつに太刀打ちできないのはわかってるのね!?」


「いやいや…確かに普通なら俺たちに分がわりぃけどさ…あいつの特性を考えるとそうでもねぇんだよ!」


「どっ…どういうことなのね!?」


「あいつは恐れてんだよ…!この熱風渦巻く中で…しかも俺たちを追いかけながら飛んでんだぜ?そりゃ体力もいくらか落ちてるはずだ!」


「…」


「しかも…あいつは寒いとこで生きてきたわけだしな!こんな暑い場所…体の調子もいくらか狂ってる!今なら俺たちだけでもなんとかなるはずだ!」


「…」


 俺の必死の説得にただ耳を傾けるだけのティナ…。表情は見えねぇが、否定しないとこみると少しばかり納得してる…のか?こんな走りながらの状態じゃあわかんねぇけど…。


 そんなこと思っていると…


「…ふぅ…もう…どうなっても知らないのね!お前のやりたいようにするのね!」


「…ティナ…マジでサンクス!」


 俺の無茶な作戦を聞いて、渋々折れたティナ…。これからもっとキツい展開になるが…後悔はさせねぇぜ!


 つーことで…



 ダッダッダッダッ…ザッ…!


 …フッ…



「…よっしゃあ!こっちこい!」


 必死に走っていた状態から急ブレーキ…。そのままクルン…と後ろを向いて『潜伏(スニーク)スキル』を解除…。俺はホホゥと向き合う形に…。


 そんな俺の行動にホホゥは…


「…!ホホゥ…自殺行為なんだホホゥ!」


 勝ち誇ったかのように鋭い目を光らせ、そのまま飛びながら突っ込んでいく…。このままなら確実に切り裂かれて死んじまうが…そんな簡単にヤられるかよ!


「…よし…『幻影(シャドー)スキル』…!」



 ブォンッ!…



 俺はその場でスキルを使用…。10人の分身を作ることにした。そういや…『幻影(シャドー)スキル』って…『7つの宝珠』以来だな…。あのときはクリスが使ったんだっけ…。


「ホホゥ!?…これまた変なスキルなんだホホゥ!」


 ホホゥのやつも突然の出来事に一瞬停止…。少々の混乱を起こしたようだ…。


 そう…『潜伏(スニーク)スキル』を解除したのはこれが狙い!実態が見える状態で分身すりゃ…敵も驚く!まさに完璧な作戦だ!


「おいおい!こっちこいよ!」


「ふくろう野郎!こっちだ!」


「へいへい!こっちだよ!」


 10人の俺たちはその場でホホゥを挑発…。…つーか…普通に不気味な感じだな…。俺がこんなにたくさんいるのって滅多にないだろ…。自分で言うのもあれだけど…。


「…なんて…ムカつくやつらなんだホホゥ!!」


 よし…ホホゥも苛立っているぞ…!このまま…確実に倒してやる!


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