66 突然の襲来!これはヤバイ!
俺はその場でうずくまっちまった…。頭を抱え、これからの未来を考えると嫌というほど落ち込みそうだ…。
ティナは魔法がうまく扱えない…。俺はスキルだけが頼り…。…これは危機的状況に陥った…わけだよな…。
「ヤベェよ…ティナ…!どうしよう…」
そんな風におろおろするだけの俺に向かって…影の中から顔を出したティナは…
「ふぅ…お馬鹿なのね!」
シンプルに叱責…そして呆れ果てたような顔をしていた…。俺は弁解するようにティナの方に向かって口を開いていく…。
「だってよ!…これって…」
「そうじゃないのね!罠を見破れなかったことよりも…今のお前の態度…それがお馬鹿なのね!」
「…へっ?」
「緊急時にそんな風に焦るような男じゃないはずなのね!…フィールとの戦い…あのときはどうだったのね!?」
「うっ…!」
こいつは痛いとこ突かれたな…。確かにこんなとこでおたおたすんのは良くねぇ…。せっかくだ…。俺のゲームで培った知識で攻略してやる!
…こーいう寒いとこで生息するモンスターは大抵火属性の攻撃に弱いはず…。今の俺が扱えるのは…
「『フレイムボール』…『ヒートブレイク』…ショボい攻撃しかできねぇ…」
一応クリスと一緒に特訓した間、いくつか魔法やらを覚えておいたんだが…。なんつーか…覚える技も大したもんがねぇなぁ…。
んまぁ…元々スキルに全フリしちまってるから当然なんだが…。これだと今さっきの猛獣は倒すの難しいか…。
そういや…
「ティナ…お前って今どんな魔法使えんの?」
「…そんなに強い魔法は使えないのね!『アラカトル』…『バメル』…『ギアバレロ』…そんなとこなら使えるのね!」
「…いや…それでもなかなかだぞ…」
さっきティナが言ってた魔法の数々…。実を言うとかなり使い勝手のいいやつばかりだ…。
例えば『アラカトル』は無数の炎の槍を出現させて乱射する魔法だし…。
『バメル』は敵の足元に炎方陣を仕掛けて、動いた瞬間に焼き付くすし…。
『ギアバレロ』なんて炎の竜を召喚する優れもの!
おいおい…魔法が使えないなんて嘘っぱちじゃねぇか!
「お前なぁ…それだけ使えりゃ十分だろ…」
俺の当然な指摘に…ティナはそれでも反論する…。
「ふぅ…これだから…。魔法音痴なお前にはわからないだろうけど、使えるにしても相当威力が抑えられるのね…」
「抑えられるって…どのくらい?」
「…『ギアバレロ』!!」
ほぉぅ!?そんなもん…ここで打ち込むなよ!
…と思ったが…
ボッ…シュン…
クッ…クエェェッ?
ん?なんだ…この小さな炎は…。てっきりドデケェ炎の竜でも出てくんのかと思ったんだが…。
そんな俺の疑問に…ティナはため息をつく…。
「ふぅ…。見ての通り…こんな炎竜しか出せないのね…」
「…なるほど…。こりゃ無理だ…」
そーいうことか…。魔力結界の影響かなんかで大幅に抑えられてるってわけか…。確かにこんなんじゃ戦力としてはもの足りねぇ…。
そーなると…ここは隠れながら進んで、レイヴォルトとの合流を目指すか…。変なやつに見つかる前に何とかしないとな…。
「…そんじゃ…俺の影のなかに入っとけ。『潜伏スキル』で進んでみるわ」
「ふぅ…ティーとしてもそれが一番だと思うのね…」
幸いにもスキルの使用はなんとかいけるみたいだ…。いくら狂暴な猛獣でも、『潜伏スキル』の前では反応することもできないだろ…。ちょっと危険な気もするけどな…。
そう思っていると…
「ホッ…ホホゥッ!これはなんとも…美味しそうな人間がいるホゥッ!」
…!?なっ…なんだ!?突然俺たちの上から変な声が響いてきた…。聞いた感じだと…ヴォヴォルやバルコスとは違う…。だが、間違いなく俺達にとっては敵のはず…!
「どっ…どこにいやがる!姿を見せやがれ!」
そうやって俺が声を張り上げると…
ピュンッ…!
「…!ユキッ…!危ないのね!」
ドスッ…!…ドサッ…!
鋭い風切り音…。その一瞬にティナが俺の体に体当たりを…。その衝撃で二人一緒に雪の上に倒れると…
ビキッ…ボキッ…バッサァァァァン…!
「ほぁっ!?」
なんてこった…俺の側にあった木が一瞬にして倒れちまった…。よく見ると綺麗に切られちまってる…。間違いなく…何かしらの刃物で切られたあとだ…。
「ボーッとするんじゃないのね!ちょっとでも遅れたら…お前は真っ二つになってたのね!」
「なっ…!俺達…攻撃されてたのか!?」
俺の焦りようを嘲笑うかのように…再びあの声が…
「ホッホゥ…ミーの鮮やかな攻撃を避けるとは…。その幼女に助けられたようだホッホゥ!」
俺は倒れた状態から声のする方へ顔を向ける…。ちょうど斜め上の大木の枝に…そいつはいた…。
「なっ…!なんだあのムキムキ梟は!?」
そう…俺の目に見えたのは筋肉溢れるガタイのいい梟だった…。デケェ体…恐ろしいほどモコモコしていそうな体毛…。なにもかもがヤバイと直感した…。
そんな状態にも関わらず、木から落ちねぇって…相当バランス感覚もいいな…じゃなくて!
それよりも…あいつ…
「あっ…あのモンスター…喋ってる!?」
「ホッホゥ!ミーはこの氷雪の間の番人…『ゲアォウル』のホホゥだホッホホゥ!」
『ゲアォウル』…。俺も聞いたことがある…。特に寒い地方に生息する危険な鳥類モンスター…。肉食獣であり、食べたやつの能力を身に付けるとかなんとか…。つーことは…喋るのもその影響か…!?
「ホッ…ホホウ…。本当なら無駄に食べるのは良くないけど…遠慮なく殺してやるんだホッホゥ!!」
くっ…!ここにきて…まさかの中ボス戦!これは…ますますピンチだ!




