第21話「炎を見つめる犬は、哲学者かもしれない]
正月が明けると「大とんど」だ。今宵がそう!!
正月飾りを焼く。無病息災だ、五穀豊穣だ。――まあ、要するに「燃やしてスッキリ」なのである。
人は昔から火を見つめて、いろんなことを考えてきたらしい。
「炎には癒し効果がある」だの、「思考力が高まる」だの、「炎は守護神の権化」だの。
先人は好き勝手なことを言う。(ホンマかいな!)
ぼくがちっちゃい頃、「ドル」という犬を飼っていた。1ドル360円の時代だ。――なんのこっちゃ!!
ぼくのオジィとドルは、たき火が好きだった。ドルが「ワン」とひと声吠える。
それが合図だ。次の瞬間、火はガスバーナーのように燃え盛り、パチパチ言いながら、立派な炎になる。
オジィは、その炎をじっと見つめている。まるでヨガをする哲学者。ドルもちょこんと座り、同じように炎を見ている。目ヤニをためるほど、じっと、じっと。
ある日、オジィがぽつりと言った。
「ドルはな、先祖の記憶さえ引き継いどるんや」
どういう意味?
ぼくは考えた。
オジィは黙る。
ドルも黙る。
ぼくも黙る。
饒舌なのは炎だけだ。
炎はよくしゃべるくせに、見る者をみんな寡黙にする。
ドルは炎を見ながら、先祖から受け継いだ記憶を一本一本、たぐり寄せていたのだろうか。
――いや、たぶん違う。
「とりあえず、今は吠えなくていい」→ 焚き火の前では、世界はだいたい大丈夫だった、という記憶。
そしてドルは思う。
「よく分からんけど…あったかいし、ここ、好ッきゃねん」
しっぽを一度だけ、ゆっくり振って。先祖の記憶は、また灰の中へ。
――たぐりよせるのは知恵というより、**“安心の履歴”**なんかも。
きっとドルは、
哲学者でも守護神でもなく、愛すべきドル、“アイドル”だった(笑)。
なんのこっちゃ(笑)1




