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鳥獣戯詩  作者: 妻戸裕次


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第17話「マスクの向こうで、犬は今日も考えている」**

風、吹いていく。木々の緑がざわめくたび、「散歩?  いま?  それとも後? 」と、犬たちの心は先走る。


僕は歩いていく。柱時計は昼下がりを打ち、短針は気だるさの歯車をギコギコと回している。


――ああ、この音、昼寝にちょうどいい。


巣籠もりの春から、また春。

つられ欠伸のラッシーは「人間って、なんでこんなに欠伸うつるんだろ」と哲学者みたいな顔で空を見ている。


鬱状態のオリバー、疲れきったイビキ寝のハチ公は夢の中でまだ渋谷駅前にいるらしい。


「忠犬って、案外ブラック労働だよな……」と寝言でぼやく。


ポチは白マスク。理由はわからないが、なんだか“ちゃんとしてる犬”に見える。


本人は思っている。

「これで人間扱いが一段上がるはず」


犬たちは、並ぶ、並ぶ、並んでいく。おやつの列?


それともただ人間が並んでいるから?――理由はどうでもいい。並ぶときは、とりあえず並ぶ。


犬たちは今日も蟻のように群がり並ぶ。「よくわからないけど、たぶん大事なことなんだろう」と、尻尾を小さく振りながら。


一条の光、そこまで。ポチはマスクを外し、鼻をひくひくさせる。世界はまだ匂う。まだ歩ける。


いつの日にか、犬たちはきっとこう言うだろう。


「で?  次は散歩?  それとも、おやつ? 」


犬たちは今日も理由(わけ)もなく並んでいく(笑)

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