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第16話「蜘蛛の糸的人生観察記」
大木から、にゅるりと一本、蜘蛛の糸。神の気まぐれか、自然の寝ぼけ眼か。
その糸口から今日も元気に――人間輩が、ずるずると産声もなく吐き出される。
ある者は「うわっ」と言う間もなく急転直下、人生三秒、滞空時間一秒、奈落行き。
ある者は首の皮一枚、いや、人生観一枚で必死にしがみつき、「まだいける」「次こそは」と歯を食いしばる。
またある者は「これは俺の糸だ」と言わんばかりに、登るどころか、かじる。独占、横取り、自己正当化。
それでも大蜘蛛は、説教もせず、評価もせず、ただ悠然と構えている。
善悪? 努力? 徳?
「知らんがな」と言わんばかりの八本脚。
蜘蛛の糸は語らない。
それが救いか、罠か、
絶対的不幸の告白か、
相対的幸福へのチラ見せか。
ただ一本、ぶら下がっているだけだ。
登るか、落ちるか、噛みちぎるか、譲るか。
選んでいるつもりで、
実は選ばされているのかもしれない。
ああ人生よ、細くて、絡まりやすくて、やたらと他人が気になる蜘蛛の糸。
今日もどこかで、「俺だけは大丈夫」と言いながら、人間輩が、にょろりと吐き出されていく。




