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鳥獣戯詩  作者: 妻戸裕次


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15/44

第15話&;唄を忘れたカナリヤは、すべてを知っていた;

唄を忘れた カナリヤは 

後ろの山に すてましょか

(怖い、怖い、怖ッ!)

いえ いえ それは なりませぬ

(良かった!ホッ)


唄を忘れた カナリヤは

柳のムチで ぶちましょか

(痛い、痛い、痛ッ!)

いえ いえ それは かわいそう

(良かった!ホッ)


……って、唄を忘れたカナリヤって、

もしかして認知症!?


「カナリヤの黄色は幸せを運ぶんやで」


そう言って父はカナリヤを飼った。


しかもツガイで。……世帯持ちかいな!


世話は誰がする? 姉三人と、ぼく。

当番制で 水とエサ。

(めんどくさッ!)


最初はそう思ってた。でも不思議なもんで、

だんだん楽しくなってくる。


カナリヤの鳴き声は感情表現や、らしい。

(ホンマかいな!)


小さな「ピヨピヨ」は 独り言みたいで、


エサをやると「クルクル」甘えて鳴く。


……かわいいやん。


ところが、ある日。

カナリヤが 唄わなくなった。


(おかしいなぁ……おかしいなぁ……)


そんな日が何日も続いて――


ある日、泥棒に入られた!!


カナリヤは 危険の予兆を感じると

鳴き止むという。


あの沈黙は、警告やったんか。


唄を忘れたんやない。

黙って、世界の異変を 見つめていただけ。


黄色い小さな命は、幸せだけやなく、

危険も運んでくる。


唄を忘れたカナリヤは、あの日、

すべてを知っていた。

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