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身の程知らずの王座~妻の実家を私物化したクズ夫の末路~  作者: 猫塚ルイ


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10/20

第10話

「嘘だ、嘘だろ……!全部、美咲の仕業なのか!?」


会議室に、透の絶望的な叫びが虚しく響く。


人事部長は冷ややかな目で彼を見下ろし、一枚の辞令をテーブルに置いた。


「佐藤君、君のこれまでの嘘と経費の不正利用は、我が社の信用を著しく傷つけた。……懲戒解雇だ」


「退職金は一銭も出ないし、会社が肩代わりした不当な手当についても全額返還を求める」


「そ、そんな…!頼みます、部長!せめて自主退職に……!」


「無理だ。君の奥さんのご実家……つまり物件のオーナー側からも、厳重な抗議と証拠が届いている。これ以上の温情はない」


透は膝から崩れ落ちる。


彼が必死に守ろうとしていた「一流企業の課長代理」という肩書き。


月5万で妻を支配し、高級時計を光らせて悦に浸っていたあの全能感は、一瞬で消え去った。


一方、私はかつての「我が家」で、作業着姿のスタッフたちに指示を出していた。


「このソファーも、あっちの大型テレビも、全部彼の名義でローンが残っているものです。差し押さえの対象としてリストに入れてください」


「承知いたしました。奥様」


スタッフの呼び方に、ふと自嘲気味な笑みが漏れました。


透さんはずっと、私が自分の言いなりになる


「便利な家政婦」だと思っていたのだろう。


しかし、私が黙って質素な食事を出していたのは


彼を愛していたからではなく、父から言われた「人の本質を見極めるための期間」だったというのに。


そこへ、透から着信が入った。


おそらく、会社を追い出されてパニックになっているのだろう。


私は迷わず、スピーカーモードにして電話に出た。


『美咲! お前、なんてことしてくれたんだ! 会社をクビになったぞ! 責任取れ、今すぐ実家のジジイに言って撤回させろ!』


「……お疲れ様、透さん。責任とはなんのこと?私には関係ないわ。あなたが嘘をついて、会社のお金を使い込んで、他の女の人と遊んでいた結果でしょう?」


『ふざけるな!お前が黙ってれば済んだ話だろ!」


「何を言われても無理です」


『ああ、わかった。金か? 金が欲しいんだろ!あのマンションの権利を俺に寄譲するって言えば、離婚してやってもいいぞ!』


「……まだそんなことを言っているの?」


私は呆れて溜息をついた。


彼はまだ、自分が住んでいた場所が「誰のもの」で


自分が「何者」なのかを理解できていない。


「透さん、そのマンション、今ちょうど鍵を替えたところよ。あなたの荷物は、すべて『身の丈に合った場所』に送っておいたわ」


『……あ? 身の丈……?』


「ええ。あなたの実家に、着払いでね。あ、それから、リカさんからも連絡があったわよ。……『警察に被害届を出した』って」


『……は?』


透が絶句したところで、私は静かに通話ボタンを切った。


彼がリカについた「独身で資産家」という嘘。


それが結婚詐欺にあたる可能性があると、父の弁護士がリカに知恵を貸したのだ。


復讐はまだ、折り返し地点。


これから透さんは、一銭の貯金もないまま


莫大な借金と社会的制裁という「本当の5万円生活」を、一生かけて味わうことになる。


私は、清々しい気分で空っぽになったリビングの窓を開けた。

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