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身の程知らずの王座~妻の実家を私物化したクズ夫の末路~  作者: 猫塚ルイ


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9/20

第9話

実家に身を寄せた私は、数ヶ月ぶりに足を伸ばして、広いお風呂に浸かっていた。


湯気の中で、透さんと過ごした地獄のような日々を思い出す。


月5万円の生活費、執拗なモラハラ


そしてあの豪華なマンションでの嘘まみれの生活。


すべてが、遠い過去の出来事のように感じられた。


翌朝


リビングへ降りると、父が新聞を読みながらタブレットを確認していた。


「美咲、おはよう。……奴、どうやらまだ『自分の状況』を理解していないようだぞ」


父が差し出したタブレットには、管理会社を通じて送られた報告書が表示されていた。


マンションを追い出されたはずの透は、現在会社の近くのカプセルホテルを転々としているらしい。


しかも、懲りずにリカへ


「一時的なトラブルでホテル暮らしをしているだけだ。すぐに新しいタワマンを契約する」


と、見栄を張るメッセージを送り続けているという。


「……お父さん、彼、まだ自分が『詰んでいる』ことに気づいていないのね」


「ああ。だから、トドメを刺すことにした」


父が冷徹な声で言った。


今回の復讐は、単に住居を奪うことだけではない。


父は、透が勤務先で


「資産家の娘と結婚して自分も不動産をいくつも持っている」


と吹聴し、同僚や上司にまで嘘をついて回っていた事実を掴んでいた。


その日


透のスマートフォンに、一通のメールが届く。


差出人は、マンションの管理会社───ではなく


彼の勤める会社の「コンプライアンス室」からだった。


『佐藤課長代理。至急、社内規定に抵触する疑いがあるため、本日午後に面談を行います』


実は、透が「自分の持ち家」だと偽って


リカを連れ込んでいたあの夜、彼は会社の経費精算でも不正を行っていた。


「自宅での得意先接待」と偽り


あの10万円のワインとケータリングの領収書を会社に回していたのだ。


私は、管理室の隠しカメラに映った「接待」の実態——


つまり、単なる不倫相手との密会映像を、父の弁護士を通じて会社側に提出していた。



◆◇◆◇


午後


面談室に呼び出された透を待っていたのは、人事部長と、我が家の顧問弁護士だった。


「佐藤君、君が『社宅扱い』として特別手当を申請していたあの物件、実態は君の奥さんの実家の持ち物だそうじゃないか」


「しかも、更新拒否されて立ち退き勧告を受けている…君が会社に提出していた居住証明書、偽造だね?」


「い、いや! それは……!」


「さらに、この領収書。自宅接待とあるが、映像を確認させてもらった。仕事とは一切関係のない女性との私的なパーティーだ。これは立派な公金横領にあたる」


透の顔が、土気色を通り越して真っ白に染まる。


彼が必死に守ろうとしていた「エリートサラリーマン」というメッキが、音を立てて剥がれ落ちていく。


絶望の中で、彼はようやく気づいたようだった。


私がただ耐えていただけの「無能な妻」ではなかったことに。


その頃、私は父と一緒に、かつて住んでいたマンションの片付けに向かっていた。


透が残していった、分割払いが終わっていない高級時計やブランド物の山。


「これ、全部売却して、家賃滞納分の補填に充てさせてもらうわね」


私は、彼の「見栄の塊」を一つずつ、無機質な段ボールへと放り投げた。


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