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身の程知らずの王座~妻の実家を私物化したクズ夫の末路~  作者: 猫塚ルイ


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11/20

第11話

「ここ……どこだよ」


透が呆然と立ち尽くしていたのは


都心から電車で2時間、さらにバスを乗り継いだ先にある古びた団地の前だった。


解雇通告を受け、家も失い


手元に残ったのはわずかな小銭と、私が着払いで送りつけた段ボール数箱のみ。


行くあてのない彼は、結局


あれほど馬鹿にしていた地方の「実家」へ逃げ帰るしかなかった。


「……母さん、開けてくれよ」


透が錆びついたドアを叩くと、中から出てきたのは、疲れ果てた表情の母親だった。


「透……!?あんた、その格好どうしたの。それにこの大量の荷物、着払いで3万円もしたのよ!誰が払うと思ってるの!」


「うるさいな、後で返すって…それより中に入れてくれ!疲れてるんだ」


透が無理やり家の中に上がり込むと、そこには彼が忌み嫌っていた「生活感」が充満していた。


狭いキッチン、山積みのチラシ、そして───


「なっ、なんだよ、これ……」


テーブルの上には、督促状の山。


彼が「自分はエリートだ」と見栄を張るために


母親にまで嘘をついて保証人にさせ、実家の土地を担保に借金を重ねていた証拠だった。


「あんたが『投資に必要だ』って言うから判を押したのに……!今日、銀行から連絡があったわよ。もう返済が滞ってるって。この家、差し押さえられるんですって?」


「……っ!」


透は言葉を失った。


彼は、私が実家の力を隠していたように


自分もまた「実家の貧困」を隠し、それを私や会社に知られないよう必死に虚勢を張っていたのだ。


しかし、その見栄の代償は、自分の親すら路頭に迷わせる結果となっていた。



◆◇◆◇


そこへ、再び私のスマホに透から電話が入る。


今度は怒鳴り声ではなく、震えるような声だった。


『……美咲、頼む。助けてくれ。母さんの家までなくなっちゃうんだ。お前の実家なら、これくらいの借金、端た金だろ……?』


「……透さん。まだ私の家族を財布だと思っているの?」


私は、実家の書斎で


父が用意した「最終的な詰め」の書類に目を通していた。


「あなたが私の父に言った暴言、そして私へのモラハラ。それらすべてを慰謝料として請求させてもらうわ」


『待てよ! お前だって、この家に住んでた時期があっただろ! 情っていうものがないのか!』


「情? ……月5万円で私を縛り付けて、自分は外で豪遊していた人に、そんな言葉を使われたくないわ」


「ああ、そういえば透さん。その段ボール、開けてみた?」


透が電話越しに、ガムテープを引き剥がす音が聞こえる。


中に入っているのは、彼が自慢していた高級時計やブランド品…の「空箱」と


本物そっくりの「偽物」だけだ。


「本物はすべて、私との共有財産の清算として、すでに質屋と中古買取店に回したわ。査定額は、あなたが会社に返すべき横領金の補填に充てさせてもらったから。感謝してね」


『な……っ! 偽物!? 俺の、俺のコレクションが……!』


「今のあなたには、その偽物がお似合いよ。中身が空っぽで、外見だけ飾り立てた、あなた自身みたいで」


私は冷たく言い放ち、通話を切った。


窓の外には、夕暮れの街並みが広がっている。


透は今、ボロボロの団地の一室で、価値のない偽物の山に囲まれて絶望していることだろう。


しかし、彼への「本当の社会的制裁」は、ここからが本番だ。

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