二ノ怪:子泣き爺 後編
2025年7月17日
「紅茶です、先生」
偶然、本屋で購入した民俗学の本を読んでいる俺こと武坂京へアイスティーを淹れてくれる綺麗な黒髪の女性は、ここ早稲田大学の二年生、妖怪研究室のゼミ生の一人で俺の助手のようなことをしてくれている鬼一瞳だ
「ありがとう、鬼一。クーラーが効いている研究室で飲む君が淹れてくれたアイスティーは格別だよ」
毎年毎年思うことだが、昔の7月はこんなに暑くはなかった。
やはり、地球温暖化が原因なのだろうかと頭の片隅で考えながら、鬼一が淹れてくれたアイスティーを口に含む
「そうですか」
無愛想に答える鬼一。
彼女は綺麗な長い黒髪を靡かせている美女なのだが、本当に無愛想なのだ。
仮面を付けているのではないかと思うぐらいの表情の無さ、実に残念ではあるが、こんなことを言うと、今のご時世セクハラとして訴えられるため、言わない
「鬼一、君は本当に無愛想だね?」
「今に始まったことですか?」
「それもそうだ」
こんな会話を日常的に繰り返す、そんな鬼一と出会ったのは、遥か昔ではなく、彼女が高校1年生の時、俺が小説家として各地へネタを探しに出向いている時に出会ってからの仲である
プルル、プルル
アイスティーを飲んでいる俺のiPhoneの着信音が鳴り響く
「電話です」
「知ってる」
俺は常々、電話と言う物が嫌いである。
KDDIやソフトバンク、docomoの社長や電話という物を発明した偉人には申し訳ないが、着信音を聞いただけで吐き気がする。
別にこの社長や偉人たちが俺に何かをしたという訳ではないが、強いて言うならあのホラー映画のせいだろう。
元から着信音が苦手だった俺にはあの映画は効果抜群だった
「出ないのですか?」
「気分じゃない」
「お仕事関係かもしれませんよ?」
鬼一が言う仕事関係というのは大学関係のことを示してはいない。
俺はこの大学で妖怪専門の民俗学を教えているのだが、小説家としての姿もある。
つまり、鬼一が言いたいのは、出版社関係からの連絡ではないのかと気にしているようだが、そんなことは知ったことではない
「切れましたね。誰からだったのですか?」
ようやく耳障りな着信音が消え、履歴を確かめると大学関係でも出版社関係のどちらでもなく、『牛沢』と書かれていた
「牛沢?」
「知り合いですか?」
「俺が大学生の時の友人の一人だ」
「驚きです。先生に友人がいたとは」
「言ってくれるね。まあ、友人は友人でも大学卒業後は自然消滅した系の友人だが」
「それは友人と言えるのですか?」
「さあ?だが、赤の他人ではないだろ」
プルル、プルル
「先生」
「わかってる、次は取るよ。もしもし、京坂です」
『京坂?申し訳ない、どうやら間違ってしまったようだ』
名乗った苗字に心当たりが無かった牛沢は間違って赤の他人に電話をかけてしまったと勘違いしているようだ
「いや、間違ってないよ。久しぶりだな、牛沢」
『何だよ、やっぱり京かよ!苗字が大学の時と違うが、結婚でもしたのか?』
「いいや?仕事柄、本名は伏せているんだ。京坂武、俺の偽名さ」
『確か小説家になったらしいな?それのペンネームか?』
「ああ、念の為に本名は控えてさせてもらってる」
嘘は言っていないが、本当のことも言ってない。
俺が京坂武と言う偽名を名乗っている理由は、妖に狙われないようにするためだ。
人ならざるモノに本名を知られてしまうと、呪われてしまう可能性があるため、基本的に偽名を名乗っている
『なるほどな。ってそんなことより、お前が電話を二回目で出るとは思わなかったぞ?』
牛沢は俺が大の電話嫌いだと知っている数少ない人間である
「牛沢じゃなかったら、あと三回はコールを無視していたな。それで?牛沢が俺に電話してくるってことは何かあったのか?」
『ああ、実は。いや、ちょっと待ってくれ。おい!ギャアギャア喚くな!静かにしてろ!!!』
電話の向こうで牛沢が怒鳴る声が聞こえるが、牛沢以外の声は聞こえない。
牛沢が何に対して怒鳴っているのか疑問に思ったその瞬間、嫌な臭いを感じ取る。
生臭い、まるで死んだカエルのような生臭さ
『もしもし、京?すまないな、押し付けられたガキがずっと泣き喚いてたから、黙らせてきた』
俺の耳には赤ちゃんか子供の泣き声は聞こえていない
「そ、そうか。それで結局何のようだったんだ?」
『今さ、渋谷に住んでいるんだが、今度飲みに行かないか?相談したいことがあるんだ』
「それは良いが、電話で話せない内容か?」
『直接話したい』
「了解、明日の19時からなら空いているが明日で良いか?」
『助かる』
「んじゃ、また明日。楽しみにしているぞ?」
『ああ、俺も楽しみにしてる・・・』
「牛沢?」
『なあ、京』
「なんだ?」
『いや、何でもない。店は俺がよく行くキャバクラで良いよな?』
「ああ。店の名前と住所はLINEで送っといてくれ」
『了解だ。じゃあ、また明日な、京』
牛沢が電話を切ると、すぐにLINEの通知が送られてきた。
『渋谷ファイブ・シーズン』、それが牛沢の行きつけのキャバクラの名前のようだ
「・・・・はあ」
俺には特殊な能力がある。
近くに人ならざるモノが存在している時に、警告のように香る生臭さ。
俺があの川へ行った、あの夏以降、人ならざるモノが近くにいると感じ取るようになったあの不愉快な臭い。
そして、川であの存在を見た時に香ったあの臭い
「先生」
「鬼一もか?」
「はい」
この能力は俺だけの能力という訳ではない。
俺の隣にいる鬼一瞳も同じ能力を持っている。
しかし、完全に同じとは言えない。
鬼一には、生臭い悪臭ではなく、線香の臭いを感じ取るらしい。
数多の心霊動画でよくあることだが、近くに霊がいると線香の臭いやカビの臭い、焼けた臭いがするらしいが、俺の場合、死んだカエルのようや不愉快な臭いがするのだ
「先生、足は?」
「ああ、痛む」
もう一つ、臭いの他に人ならざるモノを感知する能力が俺にはある。
それはあの川であの存在に掴まれたことで着いた人の手の様な痣、それが人ならざるモノが近くに存在していると必ず痛むのだ
「・・・牛沢、お前、何をした?」
「先生、その牛沢って人は何て言ってたのですか?」
「気になることを言ってたな。子供がずっと泣き喚いているって」
「先生には聞こえた?」
「いや」
「そう。なら、先生は大丈夫だと思う。けど・・・」
「牛沢は助からないだろうな」
「・・・はい」
俺はあの川のあの夏以降、色んな霊現象に出会ってきた。
そして、この臭いと痛みを感じ取る時は必ず誰かが死ぬということが判明している
「子供の泣き声か」
「先生?」
「いや、牛沢が言っていた子供の泣き声の正体が気になってな」
「妖には子供の泣き声や姿を真似するモノが多くいると聞きます」
「そうだ。子供の真似をしたり、子供に関係のある妖で有名処を挙げていくとしたら、姑獲鳥が有名処だな」
「姑獲鳥、確か子供を亡くした母親がその現実を認めないまま自殺した妖でしたよね?」
「少し違うな。鬼一が言っているのは日本の産女の方だ。俺が言っているのは中国に伝わる姑獲鳥の方だな」
「中国にも同じ妖がいるのですか?」
「ああ。中国の姑獲鳥は『うぶめ』とは言わず、『こかくちょう』と呼ばれている。伝承としては、姑獲鳥は鬼神の一種で、よく人間の生命を奪うとある。夜間に飛行して幼児を害する怪鳥で、鳴く声は幼児に似ている。中国の荊州に多く棲息し、毛を着ると鳥に変身し、毛を脱ぐと女性の姿になると言われているんだ」
ただ、もし牛沢の部屋にいるのが姑獲鳥の場合、おかしいこともある。
電話で、牛沢は『黙らせてきた』と言っていた。
つまり、牛沢の部屋には子供か赤ちゃんの姿をしたモノが存在しているのは確かである。
姑獲鳥は幼児の声を似せるのであって、姿形を幼児に似せると言った記述はない。
そうなると、牛沢の部屋にいるのは姑獲鳥ではない可能性がある
「先生、姑獲鳥以外の可能性は?」
鬼一は理解が早い。
先程の姑獲鳥の説明を聞いた上で、姑獲鳥の可能性が低いことを理解している
「赤ちゃんの泣き声を真似する妖だと、徳島の子泣き爺やゴギヤナキ、岡山のゴンゴ、秋田の川赤子がいるな。ただ、泣き声ではなく、姿形を赤ちゃんに真似る妖となると、さっきも言った子泣き爺に油赤子がいる」
「結構いますね」
「ああ。だが、鬼一。勉強不足だな、姑獲鳥の伝承は有名だぞ?」
「・・・・」
勉強不足と言われた鬼一の頬が少しだが膨らんでいるのがわかる。
俺に勉強不足と言われたのが悔しいようだ
「私の勉強不足はどうでも良いです。そんなことより、この後はどうするんですか、先生?」
「どうでも良くはないのだが、まあ今は置いとこう。とりあえず、明日の準備をするつもりだ。明日の夜にキャバクラで牛沢と会う予定だし」
「キャバクラ?不潔です」
「いやいや、俺が指定した訳ではないよ?」
「それでも不潔です」
鬼一の家系ではキャバクラや風俗といった店は忌み嫌われているのは前々から知っている
「不潔な先生、明日の準備をするのでしたら、必ず鏡と煙草はお忘れにならないでください」
「不潔な先生!?ったく、鏡は以前、鬼一から貰った二枚の八角鏡を持っていく。そして、煙草に関してはパイプを持っていくつもりだ」
鏡は古来から魔除けに使われており、特に八角形の鏡を重要視されていた。
その中でも、凹面鏡は悪い気を鏡のなかに吸い込み、無効化させる力があると言われており、凸面鏡は玄関や窓の外に向け、家の前に立つ電柱や鋭利な建物の角などからの「殺気(邪気)」をはね返す力があると言われている。
そんな二枚の鏡を鬼一と出会った際に貰い受けていた
「パイプ煙草は以前、骨董屋で購入した物でしょうか?」
「ああ。中身に関しては俺がブランドした物を入れていく。それなら安心だろ」
日本では、妖や霊といった人ならざるモノは煙草の煙が苦手という記述が有名だ。
煙による魔除けの効果が古来より言い伝えられており、『煙』や『火』には空間を清め、魔を払う力があるとされてきた。
人の生活から出る煙は、異界の存在を遠ざける結界のような役割を果たしており、そのため、昔話や日本の農山漁村の伝承では、『狐や狸に化かされそうになったら、その場に座ってタバコを吸うとよい』という言い伝えも残されている。
そして、魔が煙を嫌うのは日本のみという訳でもない。
ネイティブ・アメリカンでは、ホワイトセージを使用した儀式や浄化があり、煙を空間やパワーストーンに浴びせることで、邪気を払い、良いエネルギーを呼び込むとされている。
中東や北アフリカでは、乳香、没薬などの樹液を使用した古代からの宗教儀式で神聖な香りとして焚かれていた。
キリスト教やイスラム教でも用いられ、強力な浄化や魔除けの目的で樹脂を燻していた。
南米や中南米では、パロサントという香木から出る煙は邪気を払い、幸福を呼び込むとされ、ヨガや瞑想の前に空間を清めるといった目的で使われている。
このように日本だけでなく世界各国で魔除けや邪気払いのために煙を用いられてきた。
それに伴い、人ならざるモノと相対する場合を考え、パイプ煙草の葉は自分用にブレンドしている。
基本のタバコ葉に日本の邪気を払う植物で有名な蓬をブレンドした物をベースとして、そこへ乳香、没薬、邪気を払う吉兆の印である桃の葉を煮出したエキスを葉全体に馴染ませ、軽く乾燥させてた葉を常備している
「他に必要な物はあるかな?」
「塩水もお持ちください」
「塩水?」
「今回は必要になるかもしれません」
「わかった。鬼一が言うなら、必要なのだろう。塩はスーパーで売っている物でも大丈夫か?」
「駄目です。以前、お渡しした伊勢神宮の御塩殿より作られた御塩でお願いします」
伊勢神宮では、古来より『御塩殿』という場所で、伝統的な製法で御塩が作られてきた。
だが、この御塩は神事専用のお供えであり、一般向けには販売されていない
「あぁ・・・」
「まさか、もう無いとは言いませんよね?」
「・・・ごめん。お粥にかけて食べてしまった」
「・・・・伊勢神宮の由緒正しき御塩をお粥に?」
「・・・はい」
鬼一の表情が笑顔に変わる。
だが、表情の乏しい鬼一が笑顔になるということは何を示すか。
つまり、かなり怒っている
「す、すまない。風邪で動けなくて、塩を買いに行く元気が無かったんだ。ただ、御塩をかけたお粥を食べたからなのか、一日で元気になったよ・・・」
「先生、それで反省しているのですか?」
つい、一言二言余計なことを言って、更に怒らせてしまう
「・・・ごめんなさい」
「まったく。御塩は家の者に頼んで、もう一度手配します。ただし、そうなると明日に間に合いません。先生、先生のお宅にある塩は海水から作られた天然塩でしょうか?」
「そんな物があると思うか?」
俺は基本的に家事は面倒なため、適当にしか行っていない。
料理もあまり作らないこの俺の家に海水から作られた本格的な天然の塩があると本当に思っているのだろうか
「期待した私が愚かでした。先生、今日中に海水から作られた天然塩を必ず購入しておいてください」
「お、愚か・・・」
「わかりましたか?」
「は、はい・・・」
「では、私はこれにて失礼しますが、先生、必ず天然塩を購入し、その塩と水道水ではないミネラルウォーターを混ぜた塩水をお待ちください」
「了解した」
「電話はいつでも取れるようにしておきますので、何かございましたら、いつでもご連絡ください」
鬼一のこの言いよう、明日、何かが起こる可能性があるということだろう
「ありがとう、助かるよ。鬼一」
「それでも、また月曜日に」
「ああ」
鬼一は机に置かれていたバッグを手に取り、研究室から出ていく。
鬼一が帰り、一人となった俺も自宅へ帰宅しようと思ったが、帰る前に鬼一に言われた通り、天然の塩を買いに、自転車を走らせる。
そして翌日、問題の日の夜となった俺は、二枚の八角鏡とパイプ煙草、昨夜購入した天然塩で作った塩水を入れた水筒をバッグに入れ、約束のキャバクラへと向かった。
キャバクラへと到着した俺は店に入り、スタッフに牛沢との約束があることを伝えると、スタッフも知らされていたのか、すぐに個室、いわゆるVIPルームへと案内された。
スタッフから注文を聞かれるが、念の為に水のみを注文し、牛沢が来てから酒を注文すると伝える。
スタッフがいなくなり、VIPルームで一人となった俺はバッグからパイプ煙草を取り出し、火をつけ、肺に煙が行かないように煙を吐き出す。
吸って吐いてを繰り返し行い、VIPルーム内を煙草の煙で充満させる
「これで準備は完了だ。あとは牛沢が来るのを待つのみ」
準備が整った俺はパイプ煙草をテーブルに置き、水を飲みながら牛沢を待つ
「おかしいな?牛沢が来ない」
俺がこの店へ到着したのが18時、牛沢を待つこと3時間が経つも牛沢は店へ現れることはなかった。
幾度となく連絡を取ろうと試みるが、電源が入っていないらしく、連絡が取れない。
そこで、スタッフを呼び、牛沢の家を知っている者がいないかを確かめると、案の定、牛沢の家の住所を知っているキャストがいたため、彼女から住所を聞くことに成功した。
住所を聞いた俺は店を後にし、タクシーで牛沢の家へと向かった。
牛沢が住むマンションへ到着した俺はこのマンションの住人と入れ替わる形でマンション内へ入り、牛沢の部屋へと進むが、牛沢の部屋の前へ到着した瞬間、左足のあの痣が急に痛み、あの生臭い嫌な臭いが漂っている。
俺は意を決して、ドアノブに触れるが鍵は閉まっていない
「鬼一の予想通りか」
俺はバッグから二枚の八角鏡を懐に移し替え、天然塩で作った塩水を口に含む。
塩水を口に含むことで、人ならざるモノに認知されないようになる。
そんな俺はドアノブを捻り部屋へ入室すると、倒れている牛沢と牛沢を囲むように何人もの老若男女の人間が立っているが、全員、薄らと透けている。
塩水を口に含んでいることで、この部屋にいる霊に気づかれることなく、倒れている牛沢の元へ近寄ることはできたが、牛沢の惨状に血の気が引く。
倒れている牛沢の腹の上に赤子らしき腐っている肉塊が乗っており、その肉塊が牛沢の腹を圧迫している。
そして、その圧迫の影響により、内臓やら血反吐が牛沢の口と肛門から押し出されていた
「(牛沢・・・)」
眉間に皺を寄せる俺は牛沢を睨みつけながら見下ろしている複数の霊に気が付かれないよう、ゆっくりと部屋から脱出した。
部屋から脱出した俺は口に含んでいる塩水を吐き出し、残った塩水で手を洗う。
マンションへは侵入している身のため、ひとまずマンションから離れた俺は知人であり、警察の範馬王毅へと連絡する
『もしもし、武坂か?』
「夜分遅くに悪いな、王毅」
『お前が連絡をしてくるということは、そういうことだな?』
「ああ」
『場所は?』
「渋谷だ。被害者は俺の友人、牛沢虎太郎だ」
『そうか。詳しい住所はわかるか?』
「ああ」
警察である王毅へ住所を伝える
『わかった。今、部下を向かわせる。お前はもう帰れ』
「ああ」
俺は電話を切り、この場を後にした。
あとは警察である王毅と王毅の部下の仕事だ。
日曜日が過ぎ、月曜日の午後、大学の研究室にて鬼一がやってくるのを待っていると、バッグを手に持った鬼一が無愛想に入室してくるが、俺の顔を見るなり、薄らと安堵の表情へ変わる
「よっ、鬼一」
「こんにちは、先生」
「どうなったか聞く?」
「いいえ、見えておりましたので、ご説明は不要です」
「そうか」
「・・・やはり子泣き爺でしたね」
「ああ。昨日、王毅から連絡があってな。どうやら、牛沢は自身の子供を殺した挙句、飲酒運転の末、浮浪者のお爺さんを轢き殺したらしい」
「最悪ですね」
「一説では、子泣き爺は泣いている赤子を見つけた通行人が憐れんで抱き上げると、体重が次第に重くなり、手放そうとしてもしがみついて離れず、遂には命を奪ってしまう妖怪とされてはいるが、実際は少し違う。赤ちゃんの死体に恨みを持ったお爺さんの霊が取り憑いた状態で泣くことで、泣き声を聞いた浮遊霊や地縛霊などの霊を呼び寄せ、赤ちゃんへ取り憑き、体重を増やす。これが子泣き爺の正体だ。聞いたことあるだろ?霊に取り憑かれた人は肩が重くなるって。一人だけなら肩が重くなる程度だが、何十、何百と取り憑かれた場合はどうなるか、その結果が牛沢の死因だ」
「範馬さん、怒っていましたか?」
「いいや、いつも通りの愚痴だけさ」
「範馬さんも大変ですね・・・」




