二ノ怪:子泣き爺 前編
・子泣き爺とは
子泣き爺または児啼爺は、徳島県の山間部などで伝承される妖怪。
民俗学者の柳田國男の著書『妖怪談義』に記述のある妖怪の一つで、本来は老人の姿だが、夜道で赤ん坊のような産声をあげるとされている。
一般には、泣いている子泣き爺を見つけた通行人が憐れんで抱き上げると、体重が次第に重くなり、手放そうとしてもしがみついて離れず、遂には命を奪ってしまうとされている。
だが、阿南市の郷土史家の多喜田昌裕によれば、伝承地とされる徳島県地方では、実際には子泣き爺の伝説は存在しないことが判明している。
一方で徳島の伝説を採取した書籍『木屋平の昔話』には、山中で不気味な赤ん坊の声で泣く妖怪や人間が抱き上げると重たくなって離れない妖怪などのことが記されているため。
これらの妖怪譚が一体となって子泣き爺の話が生まれた可能性も指摘されている
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2025年7月15日
「おぎゃあ!おぎゃあ!!」
部屋の一角に置いてあるベビーベッドから泣き声が聞こえる
「うるせぇ!!二日酔いで頭が痛えんだ!黙ってろ!!!」
ベビーベッドへ向け、俺、牛沢虎太郎は怒声を上げる。
近くのキャバクラから朝帰ってきて、そのまま寝ちまったらしく、起きたのは18時だ。
カーテンを開くと、渋谷の街は既に暗くなっており、二日酔いなのか頭が痛い。
女には逃げられ、挙げ句の果てには産ませたガキも置いていきやがった。
俺はこうなることを先読みして、あの女には堕せと言ったにも関わらず産みやがった。
産むんならガキも連れ行け。
連れて行かないなら産むな。
ガキの耳障りな声を聞いていると無性に苛ついてくる
「ちっ、あいつのせいで頭が痛え。こういう時は酒を飲むに限る」
俺は足元に転がるビール缶や酒瓶を踏まないよう冷蔵庫を開けるが、中には酒の一本も見当たらない
「おぎゃあ!おぎゃあ!!」
まるでこの俺を馬鹿にするような声が部屋中に響く。
馬鹿にされた俺は床に転がるビール缶を拾い、ベビーベッドへ思いきり投げ付ける。
この部屋にいると怒りで頭がどうにかなりそうだ。
それに酒が一つもない部屋に用はない。
タバコの吸い殻と空のビール缶が乱雑に置いてあるテーブルの上から財布と車の鍵を手に取り、酒を買いに真上からの太陽が照らす外へと出る
「くそ暑い。なんで、五月なのにこんなに暑いんだよ」
俺はいつものように部屋に鍵をかけずにエレベーターに乗り、一階へと降りる。
俺が住むのは少し高級なマンションの六階で、家賃は逃げたあの馬鹿女とは違う金持ちのセフレが代わりに払ってくれている。
このマンションの部屋は防音対策もしっかりしているため、どんなにあのガキが泣こうが警察を呼ばれる心配もない。
駐車場へ行き、セフレに買ってもらったポルシェに乗り込み、スーパーへと車を走らせる。
今日の予定はセフレからもらった金で酒を大量に買い込み、昼からやっているキャバクラで酒を浴びるように飲む予定だ。
行きつけのスーパーに到着し、酒を大量に買い込み、ポルシェの助手席に押し込む。
そして、買ったばかりのビール缶を開け、一気に飲み干す。
喉が渇き、二日酔いで頭が痛い時は酒を飲むに限る。
喉の潤いを取り戻し、メインのキャバクラ近くのコインパーキングへポルシェを走らせている時、つい助手席のビール缶へ目を向けてしまった
ゴンッ
俺のポルシェに衝撃が走るのを感じ、すぐさまポルシェから降りると、路上に汚らしいホームレスの爺さんが頭から血を流して倒れていた
「や、やっちまった」
俺は急ぎ周りを見渡し、誰も見ていないのを確認すると、倒れて動かないホームレスの爺さんをポルシェのトランクに詰め込み、慌てながら急発進する
「ど、どうする。俺はまだ捕まりたくねえ!!そうだ、ここからならT渓谷が近い。あそこなら・・・」
俺はT渓谷へポルシェを走らせる。
時刻は19時過ぎと、この時間のT渓谷にはあまり人はいない。
このクソじじいの遺体を遺棄するのにはうってつけの時間ということだ
「よ、よし。誰もいないな?」
T渓谷のG橋へ到着した俺は周りに人がいないのを確認すると、トランクからホームレスの爺さんの遺体を取り出し、川へと投げ捨てる
「はあ、はあ、俺は悪くねえ。あんな場所にいたクソじじいが悪いんだ。それにホームレスは社会のゴミ、俺はゴミ処理をしたんだ」
川へ遺体を投げ捨てた俺は震える足を無理矢理動かし、ポルシェに乗り込み、缶ビールを飲み干す
「最悪だ。せっかくのポルシェがあのジジイのせいで臭ってやがる」
落ち着きを取り戻した俺がまず最初に感じたのは車内の臭いだった。
トランクからゴミ捨て場のような臭いが流れてきているのに気がついた俺は悪態をつくが、車内には消臭剤のような物は準備していないため、諦めるしかなかった。
このままでは臭いが俺の服に移ってしまいそうで、ポルシェに乗るのを躊躇ってしまうが、このままポルシェを放置する訳にもいかず、色々萎えてしまった俺は本来の目的地のキャバクラへ行くのを諦め、ポルシェを自宅へ走らせた




