一ノ怪:河童
初めまして。
京ノ条武丸と申します。
今までは異世界転生ファンタジー小説を書いていまして、ホラーは初の試みとなります。
この物語は百鬼夜行と百物語を合わせた妖怪ホラーとなります。
更新は不定期となりますが、百話を目指して頑張りますので、応援お願い致します。
・河童とは
河童は、『鬼』と『天狗』と並ぶ日本三大妖怪の一角で日本でもっとも馴染深い水棲の妖怪である。
現在一般的な河童のイメージは、体格は子供のようで、全身は緑色系統、生臭くぬめっており、頭頂部に皿があり、それ以外は長い頭髪を垂らしている。
口は嘴のようにすぼまり、背中には亀のような甲羅を背負っており、手足には水掻きがあると言われ、カメ・スッポン型の要素を踏襲するが、19世紀以降、カエル似で滑稽な要素が強くなっている。
そして、そんな姿の河童の正体は川や沼、湖に祀られている水神が零落したもの、という仮説が顕著である
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2005年8月
あれと出会ったのは俺こと武坂京が小学5年生の頃の話だ。
俺は八月の盆に母親と共に祖母が住む岩手県へと帰郷していた
「京、せっかくお婆ちゃんの家に来たっていうのに、ゲームばかりして。馬鹿になるよ?」
当時の俺は常にゲームをしていたのを覚えている。
チリンチリンと鳴り響く風鈴の音を疎ましく思う中、畳に横になりながらSw○tchで遊んでいると、共に帰郷していた母から説教された
「いいじゃん、別に。それにゲームをしないと、クラスメイトと話が合わないんだから仕方がないじゃん」
小学校ではモンスター・ハ○ターが流行っており、休み時間になるとゲームの話で盛り上がっていた。
だが、ゲームを持ってない生徒、モ○ハンに興味がない生徒はやはりというか仲間はずれに合う。
俺はそんなことにならないよう、母に頼み込んでゲームを買ってもらい、仲間はずれに合わないよう、子供ながら頑張っているのだが、母からしたらそんな事情はどうでも良かったのだろう
「またそんなくだらないことを言って、あんたの思い違いでしょ?」
「そんな事ないって、何回も言ってるじゃん!」
「まったく。お母さんからも何か言ってやってよ」
言うことを聞かない我が息子に呆れる母は自身の母、つまり俺の祖母に助けを求める
「そうだねぇ。京、お婆ちゃんはあんたが間違ったことをしているとは思わん。でも、あんたの母ちゃんが言っていることも理解できる。だから、ゲームをするなとは言わん。お婆ちゃんの家にいる間だけで良いから、ゲームを止められんか?」
お婆ちゃんっ子だった俺だが、お婆ちゃんから言われてしまってはゲームを止めざるを得なかった
「うぅ、でも、ゲームをしないとなると、何をすれば良いの?」
帰郷は五日間。
一日目は祖母の家に夕方に到着し、何もなく一日を終えた。
残り四日間、当時の俺はゲームしかやることはなく、退屈な田舎で何をして過ごせば良いのかわかっていなかった
「なら、近くの川にでも遊びに行ってみるのはどうだい?」
「川?ばあちゃん、この近くに川があるの?」
「あるよ。足は着くぐらいの深さだから溺れることもなかろう」
「そうね、あそこなら安全かしら。京、行ってみたら?」
「でも、水着がない・・・」
「持ってきてるわよ。スーツケースの中に入っているから」
母のスーツケースを漁り、俺の水着セットが入っているのを喜んだ記憶がある
「そういえば、あそこの川って河童が出るって言われてたっけ?お母さんは見たことある?」
この時、この場所で、初めて『河童』の名前を聞いたんだ
「私は無いよ。ただ、出るって言う噂だけは昔からあるね」
「河童?母さん、河童ってなに?」
当時は妖怪のことなんてまったく知らずに育っていた。
勿論、河童なんてものが何なのか知るはずもなく
「あらまあ、今時の子供は河童すら知らないのかい?」
「仕方がないわよ。東京には河童の伝説なんて無いんだし」
「あんたはこの子に教えなかったのかい?」
「聞かれたこともないし、妖怪なんて興味もなかったから教えてないわ」
「そうだった。あんたは昔っから現実的だったわね」
「それでばあちゃん、河童ってなに?」
「河童って言うのはね、川に住んでいる妖怪で、相撲が強くて、きゅうりが大好物なんだよ。それでいて、頭にはお皿があって、それが乾くと元気が無くなるって言われているね」
「頭にお皿?変なの」
「河童を甘くみちゃ駄目だよ?河童は川で遊んでいる子供の尻から尻子玉を抜き取って、子供を殺すんだ」
「あれ?尻子玉って抜かれたら死ぬんだっけ?力が出なくなるんじゃなかった?」
「河童の伝説は至る所であるから、どれが間違いかなんてわからないよ」
「それもそうね」
ピンポ〜ン
祖母と母から河童についての説明を聞いていた時にチャイムが鳴り響き、彼と出会ったんだ
「はぁい!!あら、お隣の拓くん。回覧板?ありがとうねぇ」
祖母は声が大きく、玄関で話す内容はいつもダダ漏れだった
「そうだ。拓くんって、中学一年生だったわよね?相談なんだけど、今、孫の京が来ているの。それでね、今日は猛暑でしょ?川に案内してほしいのよ。あら、本当?ありがたいわ。今、京を呼ぶからちょっと待っててね?」
当時の俺は祖母の話の内容をすべて聞いており、母のスーツケースから水着セットを取り出し、川へ行くのを楽しみにしていた。
この後、その川で何があるかも知らずに呑気に
「あら、準備万端ね」
お婆ちゃんに連れられ玄関へ向かった先、そこに当時の俺よりも背の高い、ザ・優等生のような少年が立っていたのを思い出す
「京、彼はお隣の岩田拓くん。あんたの二つ年上の中学生よ」
「こんにちは。僕は岩田拓と言います。よろしくね」
この時に拓兄ちゃんと出会った。
出会ってしまった
「こ、こんにちは。ぼ、僕は武坂京と言います」
当時の俺はまだ自身のことを『僕』と呼んであり、かなりの人見知りだった
「今からカッパ淵に行くんだよね?僕もちょうど行こうと思っていた所だから、案内するよ」
あの時、拓兄ちゃんと行こうとしていた川の名前がカッパ淵。
俺の人生を変えることとなった川の名前でもある
「夕飯までには帰ってくるのよ?」
俺は祖母に見送られる形で、拓兄ちゃんについて行った。
川へ向かう俺は隣に並んで歩く拓兄ちゃんと色んな話をしていたのだが、どんなことを話したのか全く覚えていない
「京くん、ここがカッパ淵だよ」
到着した川、通称"カッパ淵"は流れもなく、川底も見えるほどの深さで、木漏れ日で水面がキラキラと光っていたのを嫌でも覚えている。
木の影で水着へと着替えた当時の俺と拓兄ちゃんは川へ勢いよく飛び込み、拓兄ちゃんと泳ぎで競争したりもした。
そんな時、川岸に建てられていた"アレ"を当時の俺は誤って壊してしまった。
そう、俺が壊した。
それなのに・・・
「京くん!怪我はない?」
"アレ"を壊した当時の俺を拓兄ちゃんは凄く心配してくれた。
本当に本当に優しいお兄ちゃんだった。
「どこも怪我してないよ。そんな事より、もう一回泳ごう!次は負けないぞ!!」
自分が何を壊したのか、何を壊してしまったのか、当時の俺にはどうでもよく、拓兄ちゃんの手を引いて、再び川へと入った。
それが過ちだった。
再び川へと入った瞬間、ずっと五月蝿いぐらいに鳴り響いていた虫の鳴き声や鳥の鳴き声、ゆっくりと流れる川の水音、葉が擦れ合う音がまるで夢だったかのように消え、無音と化した。
だが、俺はそんな事を気にしないで泳いでいた。
その時に、周りの異常に気がついていれば、あんな事になる事もなかったのに
「うわっ!!」
「京くん!!!」
俺の足首を何かが引っ張った。
そのせいで、溺れかけたのだか、隣で一緒に泳いでいた拓兄ちゃんのおかげで溺れることはなかった
「いたっ!」
「た、拓兄ちゃん?」
「何かお尻に・・・」
川から急いで上がった拓兄ちゃんは水着の上からお尻を摩っていた
「さっきの何だったんだろう?何か足を掴まれた様な。ひっ!!」
当時の俺は左足へ視線を向けると、足首に人の手の様な痣が残っていた。
その痣は30歳となった俺の足首に、消える事なく鮮明に残っている
「な、なにこれ?拓兄ちゃん!拓兄ちゃん?」
俺は自身の足首についている痣を拓兄ちゃんへ見せようと、拓兄ちゃんの方へ向いたことで拓兄ちゃんの異変に気がついた
「・・・・・た」
今でも覚えている、あの時の拓兄ちゃんの顔。
顔色は生気を失い、目は虚、そして、ずっとブツブツと何かを言い続けていた。
当時の俺は、拓兄ちゃんが何を言っているのか聞き取れず、口に耳を近づけた
「・・・・れた」
「・・・かれた」
「・・てかれた」
「・ってかれた」
「もってかれた」
『もってかれた』と拓兄ちゃんは言い続けていた
「た、拓兄ちゃん?」
「もってかれた」
「た、拓兄ちゃん!」
「もってかれたもってかれたもってかれたもってかれたもってかれたもってかれたもってかれたもってかれたもってかれたもってかれたもってかれたもってかれた」
拓兄ちゃんは狂ったかのように同じ言葉を言い続け、それを聞いた俺は拓兄ちゃんが恐ろしくなり一歩、二歩と後ずさった。
その途端、無音と化していたこの空間に一際大きな水音が鳴り響き、辺り一面にまるでカエルの死体のような生臭い臭いが漂っていた。
俺は恐る恐る音源を探るように拓兄ちゃんから川へと視線を移すと、それが水面からこちらを見ていた。
水中に潜んでいるそいつは口から上の部分のみが水から出ており、当時の俺と同じかそれより幼い男の子の顔に見えていた。
だが、普通の子供じゃないのは当時の俺でさえ気がついていた。
顔色は青白く、子供にしてはシワが多い。
さらに髪の毛は所々抜け落ちて皮膚が見えていたことで、それがこの世のモノではないことに気がつくことができた。
そんな明らかにこの世のモノではない何かが、じぃーとこちらの様子を伺っていた
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」
俺は喉から血が出るんじゃないかと思うほどの叫び声を上げながら一心不乱にあの場から逃げた。
同じ言葉を言い続けている拓兄ちゃんに意識を向ける程の余裕もなく、拓兄ちゃんをあの場に置き去りにして俺は逃げた。
祖母の家へ一心不乱に走る途中、麦わら帽子をかぶっていたお爺さんたちに助けを求めた記憶はあるが、パニックになっており、そこら辺の記憶は定かではない。
だが、事情を説明した瞬間、お爺さんたちの顔は険しくなり、数名が川へ走っていき、残った数名が当時の俺を祖母の家まで送り届けてくれたのは覚えている。
祖母の家に着くと、送り届けてくれたお爺さんたちが怯えてきっている俺の代わりに事情を祖母と母に説明してくれた。
翌日、俺は逃げるように東京へと帰ったが、当時の俺以上にお隣の拓兄ちゃんの家の方が慌ただしかった。
拓兄ちゃんが亡くなったからだ。
これは俺が高校生になってから祖母に聞いた話なのだが、拓兄ちゃんはあの川から戻った後も狂ったように『もってかれた』と言い続けていたらしい。
そして、次の朝、様子を見に行った拓兄ちゃんの母が遺体を発見したとのことだった。
どうやら拓兄ちゃんは自身の部屋で溺死していたらしい。
身体は青白く、皮膚は洗濯後の服のようにシワが目立ち、髪の毛は抜け落ち皮膚が見えていたらしいが、何故かベッドはまったく濡れておらず、部屋中には生臭さが残っていたとのこと。
俺は祖母からその話を聞いた瞬間、本当に心臓が止まるかと思った。
話を聞いた限り、拓兄ちゃんの亡骸の状態はあの時、あの川で水面から覗く子供の顔と同じ状態と一緒だったからだ。
そして、あの川で見た青白い顔をした子供が拓兄ちゃんの元へ現れたのだ。
何故断言できるのかというと、これも祖母から聞いたことなのだが、亡くなった拓兄ちゃんの部屋に拓兄ちゃんのではない子供の濡れた足跡が残されていたそうだ。
それも家の外から続いている訳ではなく、家の浴室から続いていたのだと祖母は言っていた。
つまり、俺があの川でみた子供が浴室から現れ、拓兄ちゃんを何らかの方法で溺死させたのだ。
あれは拓兄ちゃんの未来の姿だったのか、それとも別のナニカだったのか、高校生となった俺でもそれはわからず、それを知ったのは俺が大学で民俗学を学んでいる時のことだった。
民俗学の話で河童の話題が出たのを機に詳しく調べた所、あの川は昔、五体満足でなく生まれた子供を食い扶持を減らすために神の元へ返すという風習があった。
そして、時代が変わるにつれ、その川へ子供を流すことは無くなりはしたが、その代わり、その川で遊んだ子供が死ぬようになったそうだ。
そこで川の近くに住んでいた住民たちがお寺の住職に頼み、供養塔を建てた所、その川で遊んだ子供は死ななくなった。
どの資料を探しても死因は記述されていなかったが、恐らく拓兄ちゃんのように尻子玉を『もってかれた』子供が川で間引かれた子供の霊に殺されたのだろうと俺は考えている。
何故なら、資料には『その川で亡くなった』とは書かれてはいなく、『その川で遊んだ子供が死んだ』と記述されているからだ。
そして、その供養塔を小学生だった俺が壊したことで、拓兄ちゃんが死んでしまった。
俺が拓兄ちゃんを殺したのだ
これが、多くの人の死を見てきた、この俺、武坂京が小説家を経て妖怪や怪異専門の大学の教授となった経緯である
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