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絶対に進化できないスライム転生  作者: 瘴気領域


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第99話 「キッポン様の血肉となれるのなら、光栄の極みでありますっ!」

 三層、四層、五層……九層、十層。

 緑の濁流がものすごい勢いで通路を走り抜けていく。

 階層をつなぐ階段は強力な魔物が守っているのだが、そんなものは関係ない。100トン、200トン、300トン……と際限なく成長していく大質量の不定形に猛スピードで突撃されて、抵抗できる生物などそうはいないのだ。


 物理系の魔物は不運である。

 切っても殴っても効かないのだから。

 魔法系の魔物は不憫である。

 詠唱する間もなく絡め取られて声も身振りも封じられるのだから。

 無生物系の魔物は不遇である。

 体内の機構に侵入されて瞬く間にがらくたに変えられるのだから。


「さて、十層に着いたけど、ケンジーヤの話じゃこの階層になんとかの杖があるんだっけ?」


 とりあえずの目的地に到着し、キッポンはリーフ、ボリング、ポーターを順番にぺっと吐き出した。

 三人は青い顔をしてふらふらと立ち上がる。


「く、食われたかと思った……」

「消化されるかと思いました……」

「キッポン様の血肉となれるのなら、光栄の極みでありますっ!」


 キッポンは体内に小部屋を作って三人を収納していた。

 制震性には自身があったのだが、慣性ばかりはどうしようもない。超高速で縦横無尽で走り回るキッポンの体内はさながらジェットコースター状態だったのだ。クッション性が豊富なおかげで怪我こそしなかったが、三半規管はめちゃくちゃなダメージを受けている。


(うーん、慣性制御はさすがにできないしなあ。新しい高速移動モードを発明したと思ったんだけど、こりゃさすがに封印だなあ)


 グロッキー状態の三人に少しは反省するキッポンだが、


(でも、SFチックな超技術がどこかにあるかもしれないし、重力魔法をおぼえたらそれも解決するよね!)


 即座に都合のよい妄想を展開する。

 キッポンの辞書に反省の二文字はある。

 あるが、極小フォントで記載されているのだ。


「し、しかし、四日目で十層にたどり着くなんて前代未聞ですよ……」

「これぞキッポン様の御業! 嗚呼、偉大なるかな! 偉大なるかな!」

「へえー、十層に来るのってそんな大変なんだ」

「はい、叡智の塔の十層というのは――」


 ガンギマっているポーターを無視したリーフの質問に、キュティが答える。


 十層。それは真偽不明の伝説を除けば、現在人類が達している叡智の塔の最高到達地点である。超一流のベテラン冒険者パーティが複数で組み、数ヶ月をかけて達成する偉業だ。それだけの準備をしても、成功率は高くない。


 そして、十層からは難易度が跳ね上がる。

 数々の試練を乗り越えてきた冒険者が、十層到達の直後に半壊し、命からがら逃げ出してくる……という話も珍しくないのだ。まあ、そんな場合は帰り道に全滅するケースの方が多いのだが。


 死地。魔境。絶体絶命の階層。

 それが叡智の塔の十層という人跡の果て。

 空漠たる未知の広がる新雪の野である。

 そこに足を踏み入れたキッポン一行は――


「さてと、これがなんとかの杖ってやつかなあ? お、ここに説明書きがあるな。確かに間違いないっぽい」


 あっさりと踏破していた。

 そりゃそうである。

 1000トンまで成長したキッポンを害することのできる魔物も罠も存在しない。おまけにレーダー索敵で構造も丸見えだ。

 人跡未踏の新雪の野は、いまや巨大スライムの這い回った跡ですっかり荒らし尽くされていた。

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