第97話 (邪神様の使徒として恥ずかしくない男にならなきゃ!)
一夜を明かし、冒険は続く。
先頭はリーフとポーター、中衛をキュティ、しんがりをキッポンが務めている。まあ、触手を伸ばせば最前線まで軽々届くので、しんがりも何もないのだが。
どうしてこの並びになったのかと言えば、
「あ、あたしもたまには剣を振ってみたいなあって」
「しょ、小生も魔術でしっかりサポートしますよ」
と、リーフとキュティが主張したからである。
キッポンは、「二人とも冒険に前向きになってくれて嬉しいなあ」と素直に喜んでいる。もちろん、実態は違う。猛スピードで壊れていくポーターを放置するにはしのびなく、そのまま前線を任せるわけにはいかないと思ったからだ。
「えいっ! とうっ!」
「そうそう、もっと腰を入れて。腕だけで振らないようにね」
「はいっ!」
今日はポーターの目の色も人間性をとどめている。
その手に握るのは例の魔剣だが、隣で山刀を振るうリーフがちょくちょく口を挟んでいるのが奏功しているのだろう、狂戦士のそれではなく、人間の戦士としての技量をわずかずつだが身につけていた。
「リーフって、弓だけじゃなく剣も使えるんだ」
「村の者はいざってときにはみんな戦士になるからね。剣も槍も一通りは習ったよ。弓ほど得意じゃないけど」
人面をにゅるっと伸ばして尋ねるキッポンに、リーフはこともなげに応える。もはやこの程度のことでは動じなくなったのだ。
ポーターはそんな様子を横目で見ながら、
(すごいな、リーフ先輩は。キッポン様のあの凄まじい邪気を受けても、ちっとも動じてない。昨日、僕がおかしくなっちゃったのは、未熟だったせいだろう……。邪神様の使徒として恥ずかしくない男にならなきゃ!)
すっかり明後日の方向に覚悟を決めている。
リーフについても邪神に仕える先輩だと思い込み、勝手に尊敬の念を抱いていた。
「ポーターさん、決して無理はしないでくださいね。その剣は危険ですから……」
「危険?」
「い、いえ……鋭すぎるので自分を傷つけないようにと」
「ええ、もちろん気をつけますよ」
キュティの声に振り返ったポーターの目には明らかに険があった。
リーフに比べ、キュティには邪神への警戒心が感じられる。邪神に付き従っているふりをして、何か企んでいるのではないかと疑っているのだ。間違っていないだけに厄介な誤解である。
そんな微妙に不穏な空気を漂わせるパーティであったが、
(みんなの会話も増えてきて、パーティって感じが出てきたね! リーフが前衛もいけるおかげでバランスが整ったなあ。RPGだったらポーター君、リーフ、キュティ、俺って並びが理想かな? ポーター君はタフだし、タンク役にも向いてそうだ)
そんな空気にまるで気付かないキッポンは、相変わらずゲーム脳全開な妄想をしていた。
なお、このメンツならタンク役にもっとも向いているのはどう考えてもキッポンなのだが、
(後衛から仲間をサポートするっていうのも渋くていいよね! 考えてみると、俺って前に出て戦ってばっかりだったからなあ。実は後衛の方が適正があったのかも? 陰の実力者的なポジションね!)
1トン超の巨体がぷるぷるしているだけで陰も何もあったものではないのだが、こんな具合に初めての後衛ポジションをすっかり満喫していた。




