第9話 エルフ少女、スライム係になる
「だから、どういうことなのよっ!」
「わかりませんか。もう少し噛み砕いて説明しましょう」
リーフのツッコミに、ケンジーヤはおほんと咳払いをひとつ。
「化け物Xは、ゴブリンが大好物なのです。もっと好きなものもあるかもしれませんが……暫定1位ですね。次に干し果物。よくよく観察していると、手近な草や虫も食べていました。しかし、エルフは誰一人食べられていません。つまり、あの化け物はエルフが大嫌いなのです」
「大嫌いって。じゃあなんでついてきたのよ」
エルフを嫌いと言われ、リーフが頬を膨らませる。
それじゃエルフがゴブリンや果物以下みたいじゃないか。
ケンジーヤは苦笑いして首を横に振り、
「あくまでも、食料としては、という意味ですよ」
「それでもおかしいじゃない。嫌いな食べ物なんか近寄りたくもないでしょ」
「嫌いでも、それが好物を引き寄せるとしたらどうですか? リーフ君はピーマンが苦手ですが、ピーマンが猪の大好物で、畑に猪が集まるとしたらどうしますか?」
「べっ、別にピーマンが苦手とかないし! ……と、ともかく、それならピーマン畑で猪を狩るわね。猪肉はおいしいもの」
「それと同じなんですよ」
そこで言葉を切って、ケンジーヤは一同を見回した。
「(4)からわかるように、化け物Xには多少の知恵があるようです。我々エルフが、ゴブリンを引き寄せるピーマン畑に見えているのかもしれません。……いえ、その可能性が高いでしょう」
「おおー!」
今度ばかりはリーフも感心した。
そういうことなら、これまでのことに説明がつくと思ったのだ。
「そこで、私から提案があります」
「ほう、なんじゃ、言うてみよ」
「化け物Xを、村の番犬として飼ってみるのはどうでしょうか?」
「なっ、何!?」
ケンジーヤの唐突な提案に、長老が狼狽した。
「何が何でも飼い慣らそうというわけではありませんよ。しかし、無理やり追い払おうとすれば危険を伴うのも事実……」
長老の脳裏を、無数のゴブリンが逆さ吊りにされた悪夢のような光景がよぎる。あんな所業は村人総出でかかってもできるものではない。化け物Xは、ゴブリンの群れよりも遥かに危険な存在なのだ。
「しかし、今こそ儂らエルフを襲わないが、飢えたらどうなるかわからんぞ?」
「幸いなことに、化け物Xのもうひとつの好物がわかっています。飢えない程度に果実を与えておけば、その危険性も低いでしょう」
「じゃが誰が世話のするのじゃ? あんな化け物に近寄りたがる者などおらんぞ」
「それはもちろん――」
ケンジーヤの視線が、ひとりの少女に向かう。
「化け物Xと一晩過ごしても指一本喰われなかったリーフ君が適任でしょう」
「げえっ、あ、あたし!?」
若干一名の頑強な抵抗があったが、この案はおおむね全会一致で無事承認された。




