第8話 エルフ少女、長老会議に出席する
エルフ村の中心。
樹齢1万年を超える大樹のうろで、エルフの長老たちが集まって会議をしていた。
「な、なんであたしがこんな会議に……」
「仕方がなかろう。あの魔獣と接触したのはお主が最初なのじゃからな」
「それはそうなんですけど……」
村の重鎮たちに囲まれる中、リーフは草を編んだ茣蓙にへたり込むように座っている。
「50匹あまりのゴブリンを一晩で殺し、それを見せつけるように我々の目の前で喰らった。リーフよ、やつは何をしたいのだと思う?」
「わかりませんよ、あたしにそんなこと聞かれても……」
「どうしてお主は喰われなかったのだ? 最初は餌もやらなかったのだろう?」
「わかりませんって……」
「子供にも触手を伸ばしたが、襲うわけではなかった。あの行動は何だったのじゃ?」
「だから、わかりませんって!!」
質問攻めにされるが、まともな回答などひとつもできない。
実際、何も知らないのだから当然である。
「まあまあ、みなさん。落ち着いて」
ひとりの男が声を上げ、ざわめきを鎮める。
男の名をケンジーヤという。
数百年にわたって村の外を旅した経験のある、村でも一目置かれる知恵者のエルフだった。
「まずはわかっていることをまとめていきましょう」
ケンジーヤは蝋石を手に取り、黒板に何事か書きつけ始めた。
木板に特殊な塗料を塗って作ったこの黒板も、ケンジーヤが外の世界から持ち込んだ知恵のひとつである。
1.化け物Xはエルフに危害を加えていない
2.化け物Xはゴブリンを大量に喰らう
3.化け物Xは干し果実も喰らうが、比較的少量
4.化け物Xは身体を自在に変形でき、人面を模して言語らしき鳴き声を発する
「ひとまずこんなところでしょうか」
「おおー!」
居並ぶエルフたちから歓声が上がる。
別に何をしたわけでもないのだが、箇条書きにしてまとめられるとなんだか色々わかったような気になれるものだ。
「何が『おおー』よ。別に何か新しくわかったわけじゃないじゃない」
リーフが口をとがらせる。
どれもリーフが繰り返し説明していたことだったからだ。
しかし、ケンジーヤは嫌な顔一つせず言葉を続ける。
「そのとおり。しかし、リーフの証言のおかげでとても重要な推論が導き出せました」
ケンジーヤが握る蝋石が黒板を躍り、新たな文字を書きつける。
■化け物Xの好物
・ゴブリン>果物>>>>>>エルフ
「つまり、こういうことなのです」
「おおー!」
「だから、どういうことなのよ! わかる人は手をあげて!」
「…………」
「誰もわかっとらんのかいっ!!」
条件反射で歓声を上げてみただけの長老たちは、リーフのツッコミに気まずそうに目をそらしていた。




