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絶対に進化できないスライム転生  作者: 瘴気領域


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第87話 「リーフと化け物X……ごほん、キッポン様じゃないですか」

 叡智の塔へと続く街道は石畳で舗装され、よく整備されていた。

 旅人や馬車の通行も多く、キッポンとすれ違うたびにぎょっとされるが、「えっ、スライム!? で、でか……。ま、まあ新種の魔法生物だろう」という風に三度見くらいでスルーされている。学者や魔導士が集まる土地柄のおかげで、新奇なものへの耐性が強いのだ。


 塔の外縁に拡がる街は雑然としており、木造、煉瓦造、土壁など様式も様々だ。街門もなく、ぽつぽつとまばらだった家の密度が徐々に高くなり、いつの間にか街に入っていたという印象だ。


「学問の街っていうからきちっとしてると思ったんだけど、結構ごちゃごちゃしてるんだね」

「もともと各地から人々が集まってできた街ですから。外縁部は比較的新しく流れてきた商人が多いですね。とはいえ、塔の内部はもう少し統一感がありますが」


 リーフの何気ない疑問に、キュティが答える。

 言われてみれば先程から物売りが多い。

 キッポンもさっそく買い食いをしており、「頭が良くなるよ!」という名目で売り込まれた小魚の干物をばりばりとかじっていた。この世界にもDHAの概念があるのだろうか。


「この門の先が叡智の塔の内部です」


 街の突き当りには巨大な壁がそそり立っている。叡智の塔の外壁なのだが、巨大すぎて曲がっているようにはとても見えない。天まで続く壁が唐突に大地を遮っているかのよう。表面は黒一色でつるりとしており、点在する窓がなければ一枚板のようだ。

 壁にはかまぼこ型の、やはり巨大な穴が開いている。幅も高さも百メートル以上あり、巨人の出入り口として作られたと言われても納得してしまう。

 それ自体には門はなく、高さ十メートルほどの石壁がかまぼこ板のように底辺を塞いでいて、そこに落とし格子の門が設けられている。

 リーフはそれを見上げて、


「ここだけ材質が違わない? ぼろいとは言わないけど、塔の壁より普通な感じ」

「はい、この門と壁はあとから作られたんですよ。塔の建材は未だに組成が不明で、それ自体も研究テーマとして人気ですね」

「へえー」


 城門の左右にはハルバードを持った門番が立っているが、いちいち検問はしていないようで、徒歩の人々は自由に出入りをしている。馬車や荷車は城門脇の小屋に立ち寄り、荷物のチェックを受けて税の支払いをしていた。


「なんだか不用心だなあ。ドワーフの国とは大違いだ」

「ホントだね。変な人が入ってきたらどうすんだろ」

「学問に国籍なしということで、オープンな気風なんですよ。見るからに怪しい人は呼び止めますけどね」

「へえー。自由な感じでいいねえ」


 キッポンのイメージでは、こういう都市への出入りにはいちいち身分証の提示や通行料の支払いが必要なものだと思っていた。しかし、叡智の塔は徒歩の入場に制限や税を設けていない。キュティの言うとおり気風も関係しているが、人流が活発な方が経済が成長し、結局財政が潤うという目論見も背景にある。

 だが、


「な、なんだその怪しいスライムは! しゃべるスライムなど見たことがないぞ!」

「「「あっ」」」


 キッポン一行は、その「見るからに怪しい」の条件に当てはまっていることを忘れていた。慣れとは恐ろしいものである。


「ええっと、小生たちは怪しい者では……」


 と、キュティが身分証を取り出そうとしたときだった。


「おや。リーフと化け物X……ごほん、キッポン様じゃないですか。こんなところでどうされたのですか?」

「えっ、ケンジーヤこそなんでここにいるのよ!?」


 通りがかりに声をかけてきたのは、エルフ村の賢者ケンジーヤだった。

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