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絶対に進化できないスライム転生  作者: 瘴気領域


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第78話 「あっ、ビールください。焼きそばも」

 黒白大戦は五回戦で競われる。

 個々の試合の内容は対戦者同士が合意すれば何でも構わないが、基本的には正面からの力比べになることが多い、とのことだった。


「というわけで、儂が考えたオーダー表がこれじゃ」


 パイロンが巨大な石板を持ち出した。

 それには爪で刻みつけたのであろうリストが記載されている。


・先鋒:キューティリオン

・次鋒:リーフ

・中堅:キッポン

・副将:イムギ

・大将:パイロン


「過半数が助っ人だけど、いいのこれ?」

「ふぉふぉふぉ、かまわんぞ。お主らが負けても所詮はハンデ枠。やつらが勝ちを誇ったら、『ハンデ戦で勝って喜んでやがんの』と笑ってやるわい」

「えぇ……」


 リーフが呆れた声を漏らした。

 続けて、イムギも疑問を口にする。


「じいちゃん、なんでボクが副将になってるの? もともと『未熟者は留守番しとれ』って言ってたじゃん」

「うむ、助っ人と同じじゃな。おぬしは修行のために出すのじゃ。若輩に勝ったことを誇っても、やはり笑いものにできるという完璧な策よ」

「えぇ……」


 あまりにもせこい発想に、「こいつマジかよ」という顔をする一行。

 なんかもうマジメにやらなくていいんじゃないかと思い始めていたが、キッポンだけは違っていた。


(光のドラゴンと闇のドラゴンの因縁の対決! しかも賞品はドラゴンの鱗! これで勝ったら今度こそフラグが立つはずだ! 待ってろよ、ドラゴンスライムの俺!!)


 もちろんそんなことなどありえないのだが、ドラゴンに進化した自分を想像してバチクソに燃えている。そして、全身の細胞を思考に回して勝利のための作戦を考え始めた。




【では第一回戦、光チーム先鋒、キューティリオン選手入場!】


 アナウンスが響き渡るのは、浮遊島のひとつに設けられた巨大な円形闘技場。

 中央の武舞台を階段状の客席が囲い、半分が黒竜、半分が白竜で埋め尽くされている。


「おいおい、人間じゃねえかよ」

「ひゃははは! 光の連中は勝負を投げやがったな」

「殺しが禁止じゃなきゃ頭から食ってやるのによう。柔らかそうな女だぜぇ」


 キュティが入場すると、黒竜たちの野次が飛ぶ。

 一方、白竜たちの方は、


「長老、本気かよ……」

「あっ、売り子さん、ビールください。焼きそばも」

「こっちはチューハイとタコスね。あ、唐揚げも」


 と、すっかり負けがこんだ野球チームの観戦に来ているおっさんのような様相を呈している。なお、焼きそばだのチューハイだのは読者に伝わりやすいよう翻訳したものだとご承知おきいただきたい。観客もおっさんではなく勇壮なドラゴンだ。なお売り子は若くてセクシーな雌ドラゴンである。


【闇チーム先鋒、アインドレイク選手入場!】

「うおおおおおーーーーー!!」


 闇側の入場口から双頭の黒竜が姿を現すと、会場がどよめいた。


「お前がオレの対戦相手か。まったく、くだらん茶番だな。おい、怪我をしないうちに降参した方がいいぞ」

「はあ、そうしたいのは山々なんですが……」


 キュティがちらりと客席に視線をやると、


「うおおおおーーーー! がんばれキュティ!! 絶対勝てるぞーーーー!!」


 キッポンがいくつもの拳を形成し、それを突き上げて応援しているのだ。

 なんならウェーブまでする始末。


(やる気も見せずに棄権なんかしたら、キッポン殿の怒りに触れてしまうかもしれません……。いや、絶対マズイですよね……)


 こんなわけで、簡単に降参するわけにもいかない。

 魔杖を握りしめる手のひらがじっとり湿っていくのを感じながら、深いため息をつくキュティだった。

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