第77話 「でさでさ、勝負って一体何なの?」
「でさでさ、勝負って一体何なの?」
未だ口喧嘩を続けるパイロンとクーロンを尻目に、キッポンがイムギに尋ねた。
イムギは「なんでボクに聞くのさ」という顔でパイロンに視線を向けるが、口喧嘩に夢中でこちらの世話はしてくれそうにない。はあ、とため息をついて説明を始める。
「ボクたち光の竜族と、あいつら闇の竜族との誇りを賭けた勝負だよ。ボクが生まれる前から、星辰が揃うたびにずっとやってるんだ」
竜族は光と闇の系統に分かれており、それはかつての神々の大戦でどちらの陣営についたかで決まっているそうだ。神が滅んで大戦が終わった後も遺恨は続いているが、どちらも神の復活を待っている身なので本格的な戦争をするわけにはいかない。そこでとある亜神が仲立ちし、代理戦争として始まったのが竜族同士の対決――「黒白大戦」なのだという。
(ここでも亜神……。神に迫る力を持つと言われるドラゴンさえも従わせるとは、いにしえの亜神はどれだけの力を持っていたというの?)
さりげなく出てきた亜神の名に、キュティは思わずキッポンを見てしまう。
いまこの瞬間も、ドラゴン族だという少女を前にまるで物怖じしていない。まあ、それで言うとキュティやリーフも大概なのだが、もう色々麻痺しちゃっているので仕方がない。
「っていうかさ、あたしたちもそれに参加する流れになっちゃってるわけ? 危ないのとか嫌なんだけど」
あぐらをかいたリーフが、指先で草をいじりながらぼやく。
最初こそ浮遊大陸や竜界の景色に圧倒されたものの、狩りの出来そうな鳥も獣がどこにもいないのですっかり関心が薄まっていた。
「参加することになっちゃったのはボクも悪いと思うけど……。っていうか、じいちゃん何言ってんのって感じだけど……。まあ、命の取り合いじゃないからそこは安心して。殺し合いにならないように作られた仕組みだし」
「ふーん。でも別に参加するメリットもないわけじゃん」
ちぎった草をふうと吹くリーフに、イムギは「ドラゴンの前でなんて態度だ、このエルフ……」とこめかみをひくつかせる。
そこに、口論に区切りがついたパイロンがやってきた。
「巻き込んですまんのう。クーロンのやつがあまり舐めた口をきくものでな、つい。報酬についてはそうじゃのう、儂の鱗でどうじゃ? 別に勝てとは言わん。出場してくれるだけでよいぞ」
「ド、ドラゴンの鱗をいただけるのですかっ!?」
食いついたのはキュティだった。
ドラゴンの鱗は高度な魔術の触媒や、魔道具の素材になる超希少品だ。神代から生きるエルダードラゴンの鱗ともなれば、山ほどの黄金を積んでも手に入るものではない。そんな魔導師垂涎の品を報酬に示されて、明らかに目の色が変わっていた。
「あたしは鱗なんてもらってもうれしくないけど、キュティが欲しいんならいっかあ」
「うん、俺もキュティのためにがんばるぞ!」
「キッポンはもともと乗り気じゃん……」
こんな具合で、一行は黒白大戦への参戦を決定したのだった。




