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絶対に進化できないスライム転生  作者: 瘴気領域


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第65話 キュティ、キッポン対策を考える

 酒場で夕食にして、それからボリングの紹介で宿を取った。泊まるのはリーフとキッポンだけだ。キュティは「旧交を温めるため」という口実で、ボリングの家に泊まっていた。


「キッポンは使役されてる魔物じゃない、だと?」


 キュティが切り出した言葉に、ボリングが片眉を吊り上げる。


「人に飼われてるわけでもねえのに、人の言葉をしゃべって、人の言うことを聞くのか?」

「言葉は勝手におぼえたそうです。一晩で……」

「待て待て、一晩で言葉をおぼえたって?」

「はい、裏も取れてます……。それから、人の言うことは聞いているように見えて、実際のところはわかりません。我々の目的がたまたま彼と合致していただけ……と言った方が正しいかもしれません。そもそもこの旅からして彼のわがままから始まっていますし……」


 キッポンがフォレストサイドに滞在していた数ヶ月。王国もただ静観していたわけではない。エルフ村に人員を派遣するなどして調査を進めていたのだ。

 キュティはその調査でわかったことを含め、キッポンについての情報をボリングに手短かに伝えた。


「ええっと、あのキッポンってのはコロッセの王女様の命の恩人で、外騎士爵様で、魔神王とかいう伝説の化け物をぶっ殺した亜神(ディン)だって……?」

「それも全力ではありません。何倍も強力な、本体とおぼしき存在が控えています」

「こっちに来てるのは分体か何かって話だろ? わかってるよ。ちゃんと聞いてたって。聞いてたが、頭に入らねえだけだ」


 ボリングはキッポンの脅威を直接目にしていない。

 しかし、その耳で聞いた情報から脅威度を計るクセはついている。ボリングは若い女だが、この国を統べる工匠会の議員でもあるのだ。有力な工房の跡継ぎであり、彼女自身も魔導武具の職人として名高い。キッポン一行の取り調べに現れたのも、マナイーター事件の責任者のひとりだったからである。


「それで、そのキッポン=ディンが取り込まれるかもしれねえってほどやべえのが、今回湧いたマナイーターってわけかよ……。予想以上に厄介な話になってきたぜ」

「キッポンや魔神王と同様に、異界の存在と見るのが妥当でしょう。背後に人間が関わっているのなら、召喚術を操る者の可能性が高いと思われます」


 赤い短髪をがりがりと掻きむしるボリングに、キュティは自分の見立てを語る。召喚術とは異界の存在から力を借りる魔術の系統だ。使い手は極めて稀で、実在を疑う者もいる。


「ともあれ、この件にキッポンを関わらせるのは危険すぎます。キッポンがマナイーターに近づくことがないよう、協力をお願いしたいんです」

「わかったよ。うちの国の安全に関わることだからな。こっちからお願いしたいぐらいだ。……つっても、オレには何をしたらいいかわかんねえぞ?」

「そこは小生に腹案があります。聞いていただけますか」


 時に激論を交わし、時に励まし合い、キッポンとマナイーターの接触を避けるための作戦を練り上げながら、二人の夜は更けていった。




 しかし、その苦労は報われない。

 時を同じくして、キッポンが二人の心配と苦労をさっそく台無しにする行動に出ていたからである。

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