第6話 エルフ少女、邪神に慄く
「ふわ~あ、よく寝た~」
リーフは村の中にある自分の小屋で目覚めた。
隣では、まだ幼い妹がすやすやと寝息を立てている。
その頭をそっと撫でて、起こさないよう気をつけながら草で編んだベッドを抜け出す。ベランダに出て、新鮮な森の空気を胸いっぱいに吸いながら、華奢な手足をうーんと伸ばした。
「昨日は疲れたなあ」
妹に肉を食べさせたくて狩りに出て、ゴブリンに襲われ、そして不思議なスライム(?)に助けられた。
そのスライムは門番に事情を説明しているうちに、また大蛇(?)に変身して姿を消した。
「一体何だったんだろうなあ」
リーフの認識では、スライムは大きくても人の頭ほどの大きさだ。弾性はあるものの大きく変形することはなく、ぷるぷると震えながらゆっくり動く、動物なんだか植物なんだかよくわからない生き物である。
あの謎スライムのように、変形したり、言葉を発したり、あまつさえゴブリンの首をへし折れるような生き物では決してない。
「ひょっとして、森の守り神様だったとか?」
そんな空想が脳裏をよぎるが、大人に話したらきっと笑われるだけだろう。あんなわけのわからない存在が神様のはずがない。
「うわああああああ!?」
「ぎゃああああああ!?」
「なっ、なんだこりゃあ!?」
ぼんやりしていたら、村の人たちの悲鳴が聞こえてきた。
「えっ、な、何事!?」
リーフも慌ててベランダから飛び降りる。
リーフの小屋は樹上にあり、只人の家で言えば二階ほどの高さにあるが、彼女の身の軽さなら問題にならない。
そして悲鳴がした方向――村の入口まであっという間に駆けつけた。
そこに広がっていた光景は……
「ひっ」
思わず、悲鳴が洩れていた。
数十体のゴブリンの死体が白い糸のようなものでぐるぐる巻きにされ、村の入口付近の木々に逆さ吊りにされている。
そしてその下では、半透明の巨大な物体が全身で人面を形作り、満面の笑みを浮かべていた。
「じゃ、邪神……」
およそこの世のものとは思えない光景。
膝から力が抜け、へなへなと尻餅をつく。
「おお、リーフ! いいところに来た! いま呼びに行くところだった」
エルフの男がひとり、リーフの下へ駆けてくる。
昨日、リーフを探しに来た狩人のひとりだった。
「あの半透明の……気持ち悪いやつ。リーフが連れてきたやつだよな?」
「う、うん……」
連れてきたんじゃなく勝手についてきたんだ、と言いたいが、あまりの出来事に言葉が出てこない。
「お前には危害を加えなかったんだろう? 一体何があったのか、昨日のことを改めて詳しく教えてくれないか?」
「うん……」
リーフは半ば呆然としながらも、聞かれるがままに昨日の一部始終を話した。




