第5話 スライム、ゴブリンを狩る
村は丸太を削り出した塀で囲まれていた。
門の左右には天然の立木を利用した櫓。それぞれに弓を構えたエルフ男がひとりずつ立っていて、なかなか物々しい雰囲気だ。
戻ってきたエルフ少女たちを見て嬉しそうな声を上げたが、すぐに背後からついてくる巨大スライムに気がついて警戒心をあらわにする。
(むう、やっぱりいきなり大歓迎というわけにはいかないよなあ)
何しろ魔物転生である。
理解者を得るまでの試練が最初のテンプレと言っていい。
少女がこちらをちらちら振り返りながら何か説明をしてくれているようだが、なかなか警戒心が緩む様子もない。
(無理に押し入って、嫌われたら元も子もないもんなあ)
ゴブリンから助けたことで少女の信頼は得られている。
けれども、現場を見ていない他の村人たちに納得させるのはむずかしい。
どうしたものかと考えながら、辺りの様子を探っていたらあることに気がついた。
(ゴブリンの匂いがぷんぷんしてるなあ。あっ、そうか。だからこの村はこんなに厳戒態勢になってるんだな)
外敵が迫っているなら警戒を強めるのも当然だろう。
ならばどうするか。少女にやったのと、同じことを村に対してもやってやればいいのだ。
男は身体を蛇状に変化させ、ゴブリンの匂いを辿って進んだ。
うしろから「ひっ」とエルフたちが息を呑む声がしたが、どうやら驚かせてしまったようだ。ひょっとして、こんな風に変化するスライムは珍しいのだろうか。
(なかなか進化もレベルアップもしないと思ってたけど、ひょっとして最初から上位種に転生してたとか?)
それなら成長に時間がかかるのも当然だ。
もっとがんばらなければと決意を新たにしつつ、さっそく茂みに潜んでいたゴブリンを発見する。
「ぶグっ!?」
奇襲でサイレントキルする気は満々だが、万が一にも騒がれては面倒だ。
顔面に粘液を吐きかけて声を封じ、それから速やかに首を折る。
この粘液もまた、男が修業によって編み出したものだ。
洞窟で食べたとある両生類の粘液や、やけに足のひょろ長い蜘蛛の吐く粘着糸を参考にタンパク質を合成し、強力な粘着性をもたせてある。空気と反応して素早く硬化する性質もあり、いわば瞬間接着剤のようなものだった。
(さて、さくさく狩りますか)
匂いと振動から察するに、ゴブリンはまだまだ隠れている。
これをすべて狩り出してあげれば、きっと感謝してくれて、信用も得られるだろう。
男は、今度は靭性を重視した粘液を配合して糸状に吐き出した。そして、糸でぐるぐる巻きにしたゴブリンの死体をずるずる引きずりながら森を進んだ。




