第57話 スライム、決意を新たにする
説明しよう!
キッポンズとは、フォレストサイドの再建のために生み出されたキッポンの分裂体の総称である!
もともとは単なるコピーに過ぎなかったキッポンズだが、分裂状態で時を過ごすうちにそれぞれに個性が出てきた。
例えば大工仕事をメインに手伝っているキッポンの場合、
「大工の修行は手取り足取り教えてもらうもんやない。盗みとるんや。その人の技量をね。教えられても、よう覚えんもんや」
とか言い出しているし、
炊き出しを手伝っているキッポンは、
「このサンドイッチを作ったのは誰だあっ! 限られた食材にも関わらず、なんとも滋味に溢れ、奥深い味わい。そう、丁寧な下ごしらえから始まり調理工程の隅々にまで気を配ってこそ、この味が生み出せるのだな。ふふ、人の心を感動させることが出来るのは、人の心だけなのだ」
などとのたまっているし、
施療院を手伝っているキッポンは、
「医者はひとのからだは治せても、歪んだ心までは治せない。人間が生き物の生き死にを自由にしようなんて、おこがましいとは思わんかね? ……医者は何のためにあるんだ!」
と顔に傷跡がある医者の人面を形作っている。
「そっか、みんな生きがいを見つけたんだね……」
「そういうことや。わいは大工の道を極めるで」
「私は至高の料理を追い求めよう」
「それでも私は人を治すんだっ! 自分が生きるためにっ!」
それぞれに夢を語るキッポンズを、キッポンは半ば温かく、半ば羨望のこもった目で見つめていた。果たして自分には、こんな熱く語れる夢があっただろうか。
「「「キッポン、お前にも、立派な夢があるだろう」」」
キッポンズの触手が、キッポンの肩にぽんと置かれた。肩はないが。
「キッポンズ……!」
そうか、そうだった。
俺には見果てぬ夢があるのだった。
例えその道がどれだけ苦しくとも、あるいはその先に終着点がなかったとしても、俺には挑まなければならないことがあるのだ。
「……進化! もしくはレベルアップ!!」
「「「その意気やよしッ!!」」」
キッポンズもまた、キッポンの夢の共有者である。
別々の道を歩むことを決めたと言っても、その根っこは一緒なのだ。
というか、キッポンズはキッポンズでそれぞれの道を究める途上で進化とかレベルアップとかできるんじゃないかと考えているだけなのである。目先が変わっただけで、実は何も変わっていないのであった。
という話を、キッポンは語った。
ネイディは言っていることがわからなかったので、「う、うむ」とだけ答えた。
「だから俺は、魔術修行の旅に行こうと思うんだ」
「そ、そうか」
今の今まで言っていたことと微妙に食い違っている。
しかし、そもそもキッポンが何をしたいのかよくわからないのだからツッコミようもない。
いかに剛毅なネイディと言えど、曖昧に頷くことしかできなかったのだった。




